現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

安藤美紀夫「かいことり」でんでんむしの競馬所収

2018-07-18 09:27:07 | 作品論
 小学校低学年のハゲとチョコが、まだ見ぬカイコを求めて、京都中を彷徨います。
 彼らの目的は、とんぼつりに最適なしけ糸(一番悪い絹糸のくずで、糸屋にコネのある子しか手に入りません)をはき出すというかいこを手に入れて、もめん糸で作った道具では絶対に捕まえられないオニヤンマやギンヤンマをゲットすることです。
 しかし、かいこという虫がどんなものかさえ知らない彼らは、あちこちでトラブルを起こした末に迷子として警察に保護されてしまいます。
 他の記事にも書きましたが、この連作短編集は作者の生まれ故郷である戦前の京都の路地裏を舞台にしています。
 いろいろな児童文学にも書かれてきましたが、とんぼつりはかつての子どもたちにとってはかなり重要な遊びだったようです。
 私は1960年代に子ども時代を過ごしましたが、自分自身ではとんぼつりの経験も目撃体験もありません。
 育ったのが東京の下町だったので、あるいはもっと自然に恵まれた地域に育った同年輩の人たちなら経験があるかもしれません。
 それでも、シオカラトンボや赤とんぼはたくさん見かけましたし、時にはオニヤンマやギンヤンマを見かけることもありました。
 現在はもっと山の近い自然の豊かなところで暮らしているのですが、シオカラトンボや赤とんぼはときどき見かけますが、オニヤンマやギンヤンマは一度も見たことがありません。
 今の子どもたちは、こうしたトンボを見るためには、かなり遠くまで出かけなければならないでしょう。
 現代では、様々な人工的が玩具(その中には非常に優れた知育玩具もあります)があふれていますが、この作品の子どもたちとどちらが豊かな遊戯体験をしたかは意見の分かれるところでしょう。

でんでんむしの競馬 (少年少女創作文学)
クリエーター情報なし
偕成社

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