現代児童文学

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J.D.サリンジャー「ある歩兵にかんする個人的な覚え書き」若者たち所収

2018-09-09 09:21:19 | 作品論
 「こつはちゃんと」(その記事を参照してください)と同様の軍隊物の掌編です。
 運動不足で腹が出始めている中年男性(四十半ばのようです)が、陸軍に志願してくる話です。
 彼には二人の息子がいて、兄は陸軍、弟は海軍(真珠湾で片腕を失っています)にいるのですが、自分も志願することにしたのです。
 妻や直接彼の志願を受けた軍関係者(後で誰かは分かります)の反対を押し切って入隊し、厳しい訓練にも耐えて軍隊に順応して、体も見違えるほどに引き締まります。
 軍隊はなるべく彼を戦地におくらないように配慮するのですが、軍曹にまで昇進してとうとう外地へ出発します。
 出発する時には、二人の息子(弟は海軍少尉(戦傷により特進したのかもしれません)で、兄もはっきりとは書いてありませんがさらに上級の士官のようです)に見送られます。
 そう、最初に彼の志願を受け付けたのは、彼の上の息子だったのです。
 これも、「こつはちゃんと」と同様に、はっきりとしたオチのある非常に技巧的な作品です。
 ここでも、サリンジャーは、軍隊や戦争に対して賛美はしていませんが、批判的でもありません。
 この作品が雑誌に発表されたのが真珠湾攻撃後の1942年であることを考えると、当時のアメリカの若者たち(サリンジャーはこの時23歳で自身もこの年に徴兵されています)の軍隊に対する平均的な気持ちを反映しているのかもしれません。

サリンジャー選集(2) 若者たち〈短編集1〉
クリエーター情報なし
荒地出版社
 
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