現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

浅野弘毅「希望の消滅」うつ病論 双極Ⅱ型障害とその周辺所収

2018-12-18 13:42:34 | 参考文献
 かつては手首自傷症候群として重大視されていたリストカットが、現代では「リスカ」として、気晴らし食いやセックスやダイエットやピアスとおなじくらい、普通の若者(特に女性)の普通の振る舞いになってしまっているとしています。
 「リスカ」には軽い「解離」が起こっている場合が多く、血を見て初めてハッとして、生の実感を持つようです。
 それだけ、現代の若い女性たちにとっては、生きる希望が見いだせない状況なのでしょう。
 彼女たちは、リストカットは死にたいからするのではなく、生きたいからするのです。
 現実が生きづらくて解離した状態から、リストカットで血を見てまた現実に復帰する事を繰り返しているのです。
 従来から、結婚して主婦になるということは、男性への<従属>に向けて彼女たちの<主体化>を要求されることでした。
 その場合に、女性たちには、子どもを産み育てる<再生産する身体>と、夫専属の娼婦のような<性的身体>の二重の役割が求められていました。
 そして、そこから離脱するためには、<生産する身体>としての労働者になるしかありませんでした。
 しかし、職場においても、女性としての役割しか求められていませんでした。
 現代においても、夫のドメスティック・バイオレンスや職場などでのセクシャル・ハラスメントの問題は解決していません。
 特に、1990年代のバブル崩壊以降は、格差社会化が進行し、特に若い女性たちは、非正規労働、貧困、風俗などによる性的搾取、非婚化などによって、ますます生きづらくなっています。
 そして、本来は社会のひずみのせいであるのに、あたかも自己責任であるかのように問われて、彼女たちは益々内部で引き裂かれています。
 そんな状況では、血を見ることによって自分の「生」を確認する「リスカ」は、ますます増加することでしょう。

 
 
うつ病論―双極2型障害とその周辺 (メンタルヘルス・ライブラリー)
クリエーター情報なし
批評社

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