現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

大橋眞由美「欲望する主体の構築」

2018-02-22 17:23:19 | 参考情報
 日本児童文学学会の第51回研究大会で、発表された研究発表です。
 戦時中の有名な標語である「欲しがりません勝つまでは」は、1942年に公募されたものだったそうです。
 大橋は、「欲しがりません」という以上は、それ以前に<欲望する主体>が構築されていたはずだと推測しました。
 そして、幼児メディアの中に、そのことを象徴するポーズを発見したと主張します。
 ここで幼年メディアとは、絵雑誌と絵本を指します。
 大橋は、「お伽絵解 こども」の中にそれを見出し、特に3巻6号(1906年)の「貞ちゃん」の<頂戴のポーズ>をしている幼児像に着目します。     
 これらの絵は、すべてベースの物語は「桃太郎」を使っています。
 その中に、<頂戴のポーズ>をしている物が七点あります。
 「貞ちゃん」は、物が渡されているのが少年から女児であること、渡している物が兵士人形であること、男女の大きさの違いがデフォルメされていること、そのポーズ自体などにおいて、<頂戴のポーズ>の典型としています。
 このわずかの資料から、社会構成主義の理論を使って、ジェンダー(男性と女性の差異的関係性)やナショナリズムの形成との関係にまで探求していった、大橋の論理展開や推測力には驚かされました。
 また、「お伽絵解 こども」は全ページ多色刷りなので、プロジェクターをうまく使ってそれぞれの絵をカラーで見せたのも、プレゼンテーションに迫真性を持たせていて効果的でした。
 さらに、三十年以上後の1938年3月の「一目でわかる最近五十年間日本躍進絵本」にも、<頂戴のポーズ>をする大人の男女の絵があり、その関連性が興味深く感じられました。
 ただし、発見された<頂戴のポーズ>は今回紹介された二例のみで、その間をつなぐものを探しているそうです。
 会場からは、「近代以前にも女性が<頂戴のポーズ>をしたものがある」との指摘があり、今後の研究が広がる可能性が感じられました。

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