現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

最上一平「ブルちゃんは二十五ばんめの友だち」

2017-11-12 11:13:55 | 作品論
 小学校一年生のりりちゃんを主人公にした連作の二作目ですが、今回は同じクラスのたけしが主役です。
 雨の日にたけしが拾ってきたがまがえるを、クラスのみんなで話し合って教室で飼うことになり、クラスが二十四人だったので「二十五ばんめの友だち」になります。
 ぶよぶよした大きな体をしたひきがえるに、初めはおっかなびっくりだったクラスのみんなは、だんだんに慣れてさわると自分の背中がブルブルするので、ブルちゃんと名付けられます。
 がまがえるは生きたエサしか食べないので飼うのは大変だったのですが、みんなで協力して世話をしたので、ブルちゃんはだんだんクラスになじんできます。
 りりちゃんは、ブルちゃんがカメムシを食べるところをじっと観察しながら、「いのち」のことや「生きるために他者を食べること」などを考えます。
 しかし、夏休みを迎えて、その間のブルちゃんの世話をするのを話し合った時に、「ブルちゃんのしあわせ」はなんだろうということを考えて、自然に返すことになります。
 ただ、ブルちゃんを拾ってきたたけしだけが反対し続けます。
 たけしは、最近両親が離婚して離れ離れになったおとうさんの思い出がひきがえるにあるので、ブルちゃんと別れたくなかったのです。
 クラスのみんなは、なんとかたけしを説得しようとします。
 けっきょく、校庭のひょうたん池に逃がす(そうすればまた会えるかもしれない)ことになって、たけしも賛成し、みんなでブルちゃんとお別れします。
 幼年向けの短い紙数の中で、「新しい体験」、「生きていくこと」、「いのち」、「おとうさんとの別れ」、「意見の対立」など、現代の幼い子どもたちが直面するであろうさまざまな問題について考える(あるいは疑似体験する)機会を含んだ作品です。
 少数意見も尊重する子どもたち、それを余計な口出しをせずに必要なサポートをする担任の先生。
 ここに描かれているのは、あるいは学級のユートピアなのかもしれません。
 現実には、いろいろな事情があって、こうした理想的な学級はあまり存在しないかもしれません。
 しかし、子どもたちにとってのあるべき姿を描き出すのも、児童文学の重要な役割だと思います。

りりちゃんのふしぎな虫めがね
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