やんちゃ隊のみんな
班長の手引きの第4章だよ
日本のBS活動の中にはないね(^^)/
たいていの隊集会で,隊長は,状況に応じて10 分, 15 分, 20 分間の「班コーナー」を命令する。私は,これまでに,数えきれないくらいたくさんの隊を見学したが,どこの隊でも必ず「班コーナー」という声を聞かないことはなかった。白状するが,時々,私には,この言葉はプログラムの穴を埋めるために,隊長が使うのではないかとか,隊長は疲れたので休息したくなったから,あるいは,次に何をしたらよいのかわからないからではないかと考えまるをえないことがある。命令がだされると,班長は班を自分のコーナーに連れていき,着席をさせる。時には, ほんとに価値のあることが班コーナーで行われることもあるが,それは非常にまれなことで,全般的には,どうみても「初級」よくて,せいぜい「2 級」程度である。
私が見学した班のほとんどが,次の4つのうちの1つをやっていた―すなわち,なわむすび、教急、信号、何もしない! まあ,はじめの3 つは,それ自体に悪いところはないが,との3つだけから作業を選ぶとしたら,これ以外の何千という価値のある作業は見捨てられることになる。班長として,諸君は,隊集会で班コーナーの命令が下ったら,何をやらすべきか,あらかじめ考えておく必要がある。何か特別なもの,何か差しあたって訓練する必要があるとこであれば.何でもよい。たとえば, 班コーナーの前に行われた隊活動のリレーゲームで―なわむすびリレー,身体を使うリレー, ウッドクラフト応用のリレーなどのゲームが考えられよう―諸君の班はビリになったと仮定しよう。どんなに優秀な班であろうと,負けることはあるし,過ちを教訓に生かすことができれば,敗北は無駄にはならない。リレーゲームに、敗れた原因には3つのことがあげられる。第1は,班員の調子が悪いこと,第2は,班員の知識が不十分であったこと,第3は,班のチームワークが悪かったことである。そこで,リレーゲームの成績が最下位であり,今,班コーナーになったと仮定しよう。諸君は,すみやかに,「班会議」を開くことになろう。諸君は成績が惑かった理由をはっきりさせなければいけない。どこが悪かったのか? どうして3 番スカウトはもやい結びを忘れてしまったのか?自分の順番が回ってくるための用意をしておくべきなのに,どうして5番スカウトは窓の外を見たり,もし室外のゲームであれば,家の中をのぞきこんだりしていたのか?大事な時に,どうして次長の靴が脱げて,次長はころびそうになったのか? 靴紐の結び方が悪かったのかもしれない。合図がされたとき,どうして班長の出発は一番おくれたのか? 彼は,学校のことか,映画のことでも考えてぼんやりしていたのか? たぶん,だいたいこんなことが敗因であろう。これが敗れた原因であるのなら,班長は恥ずかしいと思わなければいけない。最善は尽したけれども,相手の技量が一枚上であったために負けたのは不名誉でない。しかし,自分が負けた―すなわち,準備の不足,知識不十分,細心の注意に欠けたこと―のは. 大きな恥である。
以上は,もちろん,仮定の話であるが,いつでも,まず第l に班コーナーで行うべきことは,すみやかに,班会議を持ち,それまでの方法を反省し,次に何をするか,隊長はどんな奥の手を使ってくるかなどを話し合うことである。たとえば,隊長が入ってきたときに,誰に話しかけたか気づいたか? たぶん,あの人はスタンツの一役をつとめていて,あとで隊長はその人がどんな格好をしていたか質問するだろうから,今晩は彼に注意しておく必要があるとか,事故の実演をやって,我々の包帯の仕方を試験されるのではないか?地区コミッショナーが隊を巡回するという噂があるが,我々はもう少しスマートにしなければいけない。地区コミッショナーは,きっと,いつ次のキャンプに行くのかと質問するであろう。だから, 今から班コーナーの時に,その準備をやっていこう。
諸君は気づいたと思うが,以上のことは,すべて,班コーナーの作業をそれだけ気のきいたものにする。作業のための作業とか,知識のための作業ではいけない。諸君の班をよくするため,諸君のスカウティングを高めるため,諸君自身の向上のため,この目的のための作業,学習でなければならない。
班コーナーの時聞は活発な活動の時間でなければならない。隊長が諸君のなすべきことを与えてくれることもあろうが,たいていは諸君の考えにまかせている。だから,諸君は,班長として,まず第1 に、隊集会が始終意義あるようにするためにも,班コーナーを活用できる能力を持つこと,第2 に:時聞が余って,私がすでに述べたようなこと以外のことをしなければならない時には,いつでもアイディアを引きだせるようなアイディアの宝庫を持たなければいけなし、とればなまやさしいことではない。班長の難かしさの一つはここにある。諸君はアイディアを渇らすようであってはならない。前に言ったことがあるが,諸君は,いつでも,班からアイディアを求めるようにすることである。決して,諸君のアイディアを押しつけようとしないことである。しかし,諸君は班を率いる立場にあるのであるから,諸君自身が自分のアイディアを持たなければいけない。班員はみな諸君のアイディアに期待をかけている。もし,諸君にアイディアがなければ, 諸君は班の気力を下げ,諸君の信用を班員から失うことになる。
まったく,別の方向―すなわち,いわゆる物理的な観点―から,班コーナーを見てみよう。諸君の隊は隊本部を持っており,そこには固定の班コーナーの場所があることを,私は希望する。こういう状況にある隊は,一番扱いやすいから,まずこのような隊について述べよう。諸君は,隊長の許可をうけた上で,好きなように班コーナーを飾りなさい。班コーナーには.トーテム,すなわち,班を象徴する鳥とか動物の像がほしい。はくせい,模型,木彫,写真,なんでもよい。それは最高位に安置する。次に全班員の進歩状況と目標を一目瞭然に示す進歩一覧表を掲示するのがよい。班の伝統に関係のあるもの,たとえば,今ではシニアー隊員, ローバー隊員,あるいは,社会入になっているスカウト隊の出身者の写真を展示するのもよい。また,掲示板を置いて,各種の地方的,国家的,国際的なスカウトニュースを伝達するようにすれば,隊に世界兄弟愛の気風を生むこともできるし,スカウティングの動きをつかむことができる。その他に,救急用具―簡単な・救急箱でよい―とか,スカウティング・フォア・ボーイズをはじめ,班に必要な本を収める本棚を備える。杖を置く棚,キャンプ用具などを格納するロッカー,こまごまとした用品,たとえば白墨,テニスボールなどを入れる携帯品の班の箱,腰かけなども必要であろう。〈隊本部の建築構造によるところが大きいが〉班コーナーに班のデンを作るためには,ついたてのような仕切りも必要であろう。装飾の仕方は班の自由にまかされているが,隊本部全体がスマートに見えるためには,班同志が協力しあう必要がある。隊が個性的な班コーナーを作るのはよいが,隊本部を訪ずれる人たちに目ざわりになるような飾りつけには気をつけるべきである。
私の隊のある班が班コーナーの壁をコールタールで塗ったことがあった。暑い時期になると, コールタールがとけて,ぼたぼたたれてきた。とれは班員が全員賛成でやったことだったが,思いもよらない,まったく,不愉快な自にあった。アイディアがいけなかったのではあるが,それを許可した責任は私にあった。諸君の隊に隊本部があれば, もちろん,少し頭を使った工夫をすることにより,なかなか立派な班コーナーを持つことができる。しかし,学校とか教会とかの建物を借りるのであれば, 事はあまり簡単ではない。しかし,不可能ではない。よくばったことはできないが,なんとかがまんできる程度のことはできる。長い間,私の隊は学校の教室を借りて集会をしていた。とても気持のよい,大きな部屋であったが,スカウト的な装飾はなかった。しかし,スカウトたちはその部屋を魅力的につくりかえることができた。家庭で,班のデンで班員は持ち運びのできる班コーナーを作った。簡単迅速に,床に置いたり,壁にたてかけたりできるものを作ってきた。こうして,学校の教室はまたたくまに,本もののスカウト・ルームへと衣がえすることができた。班コーナーが行われている時,たとえl 人もスカウトがその場にいなくとも,この部屋に入ってきた者は,ひとしく,スカウ卜の集会が進行中であることを知ることができた。それは,ごてごて装飾はしてなかったが,個性的で,独創的で,何よりも,スカウト自身の作であることがはっきりわかった。班生活の楽しみの1 つは,班作業と班が協力して何かを作りだすことにある。班が努力して飾りつけた2 枚の大きなベニア板には,ほんとに,大きな価値が秘められていたのであった。こういうふうにすれば,隊本部を持たない隊でも班コーナーを持つことができる。いうなれば班長である諸君しだいである。諸君の班員を指導する力と,アイディアと班員の協力を生みださせることである。
どんなくふうをこらして飾りつけた班コーナーであろうとも,いつも新鮮で生き生きした装いを保たせる努力が必要である。いつも班コーナーを点検して,改善すべき点を見つけることである。ノッポのロフティーが頭をぶつけたあの本棚は低すぎるのではないか?上から三番目の杖は,どうして,よく杖かけからころげ落ちるのであろうか? トーテムの虫ぼしをする時期になったのではないか? 新しい旗はどうであろうか? ちびのショウティは, いつになったら, 2 級課科目を完修できるのだろうか? もう戴冠式の掲示はとりはずしてもよいのではないのか? 6 月はl 年中で馬鹿げた月だ,フットボール選手の名前がずっと掲示されっぱなしである。だいたい,このようなことがよく気のつくことであろうが,物事は,見なれてしまうと,気がつかなくなり,存在さえもきだかでなくなるようである。こうなったら,終わりである。我々は, 持ち物を役にたつように,利用できるように, いつもそれに対する関心を持つように,それを使う作業を行うように,心がけなければならない。新鮮な班コーナーにいつも心がけたいものである。新しい掲示,新しい写真,新しい装飾。
班コーナーに活気があふれ,生命が宿り,諸君の一部となり,班の品性を表現することである。舞台の背景幕のように,変化のないものであってはいけない、班コーナーを持ちなさい。隊ルームとデンが班コーナーのためのありきたりの場所であるが,すでに諸君にわかってもらったように,班はギャングでいつも行動を共にして協力しあうものであることからいえるように,班は場所がどこであろうと,ほんの2 ・3 分の休み場所であろうと,1つのホームを持つ必要がある。ハイク先で, 倒木の聞に諸君が班員とともに入れる場所を見つけ,火を起こし,料理を作りなさい。それは班コーナーの1つの形である。ワイドゲームなら,諸君の班員がけが知っている。他の班のスカウトには見つげにくい場所を根拠地にしなさい。論より証拠,どこへいっても,班コーナーを作るのはよいことである。諸君の隊が何かのスポーツ大会か,スカウト行事民参加しているときには,班がバラバラになっても一箇所は集まれるような待合わせの場所が班コーナーになる。これが,班コーナーである。憩の場所であり,集会場であり,出発点であり,帰着点であり,緊急の援助に出向いた先である。この問題について最後に一言注意したい,それは,私が隊長を務めたある隊にあった話である。班長は, そっそり,移動式の班コーナーをせっせと作り上げた。できあがるまで,班長は誰にも相談せず,人目にもつかないようにした。なかなかの芸術品で,できあがりはたいそう立派だった。しかし,困ったことに班員はちっとも嬉しそうな顔をしなかった。班長は, もちろん,大いに失望したが班員の罪ではなかった。班長は班員の意気をそいだのだった。班長はギャングを台なしにしたのだ。班長は班員を無視し,協力を求めなかった。つまり,班長は利己的で,自分だけの力ですべてを片づけてしまった。これでは,誰も,喜びはしない。ともかく,班長にとってはよい経験であった。諸君も,この教訓を忘れないようにしてほしい。どんなに完璧であろうとも,我々が独りでやったものより全員の協力によって行った下手くそなものの方が,班員にとっては好ましいのである。
『班長の手引』を読んで、
中村知
班コーナーについては,説明がいるようである。なぜなら,日本の少年隊では,ほとんど, やっていないらしいからである。パトロール・コーナーとは何か?Rex Hazlewood という人の書いた“The Seo-utmaster’s Guide from A to Z’という本に説明が出ている。それを大約すると,
〇班コーナーというものは班制度運用上の重要手段であって,隊集会場〈隊のクラブルーム〉に設ける。
〇隊集会のプログラムの進行中,隊長は「パトロールコーナー」という号令をかける。こ号令に従がって各班は,班のコーナーに駆けて行く。
〇そして指定された時間( 5 分~30 分間〉,班訓練をする。その内容は班で作戦してきた課自の班訓練で隊長が問題を出す。〈つまり班制度という組織体を班長が動かして,活力をよび起こさせ,自信をつけさせ,自分の指導力を及ぼす時間である〉
〇どんな問題が隊長から出きれるか,そのときにならないとわからない。
〇時間が終わると隊長は笛を吹いて再び隊訓練にもどして当日のプログラムを進行する。
〈換言すれば隊訓練の中に班訓練を織り込む。これをl 回またはl 回以上やる。こうすると,隊訓練が活気を呈する。隊長1 本槍の隊訓練となるならば単調かつワンマンに陥るからそれを防ぐことにもなる〉以上のような隊集会のやり方―これが日本でどの程度行われているか? 講習会でも,実修所でも、この集散移行の形は実習することになっているが,自分の隊に帰ってやってみ
ようという段になると実行困難におちいる。その困難な事由はというと,それはスカウト専用のクラブムールをもっていない―という点。たいていの隊は借り室(学校とか寺社の建物など借用〉でやっているため,作りつけの班コーナーがない。英国も同じようなケースがあるとみえ,訓練自にだけ設定できる携行用の班コーナーセットについてこのA to Z に書かれている。訓練が終わると折りたたんで持ち帰るか,預けて滞る。しからば,班コーナーの構造はどうか?ここに32 人のスカウトの1 隊があるとする。室内ゲーム程度の活動ができる程度の広さの,通風のよい部屋があるとする。その一面の壁に国旗マストを立て〈上でひらく掲揚法〉, その部屋の中央部を隊訓練の場とする。その部屋のコーナー〈隅〉に,班コーナーを設ける。3 班なら三隅,4 班なら四隅に。その各隅〈コーナー〉は,各班それぞれが「出城」みたいに考える。班動物の絵や写真を飾り,班の伝統をあらわすようなもの,班トーテムとか,優勝カップとかを飾る。工作品〈橋の模型など〉結索板なども飾る。そして班員の氏名表,出欠表,進歩状況一覧表など,月間プログラムその他をはりつけるツイタテ式のものを設置,班の人数分の腰かけをおく。とにかくそういう設備をしたものが班コーナーである。そしてその中心に班旗をおく。以上のような設備を隊本部また隊クラブルームにするのである。そうしたクラブルームをなんとか〈借りたり〉して確保できる能力をもつことが,英国では隊長の資格〈適格〉にあげられている。日本の実修所では,そこまでの施設はやれないが,ぜひ,実現されたい。英国ギルウェルコースで,との,パトロールコーナーの活用を経験された人たちは,これが隊集会に,いかに重要かを、報告している。なお,この班コーナーと,班のデンとは別物だということを申しそえておく〈班のデンは, たいてい班長の自宅とか,ある個人の内邸とかにおかれ,そとはその班だけの「域」または「巣」である。他の斑には公開きれない秘密〈?〉の巣である。その秘密の巣で班会合,班訓練した結果の成果が隊集会にみられるのである。それゆえ,班コーナーというものは班のセリアイ(Patrol Competi-tion)の場として,どうしても必要なわけである。
この班コーナーのことを,強調する一面,大きな誤解の生ずることに注意せねばならない。それは―スカウティングの3/4 はアウティング(戸外活動〉であるはずなのに,なぜ,室内の隊訓練や班訓練を強調するのか? という,一矢である。ジョン・サーマンも,この班コーナーは,野外を隊訓練の場とする場合にも,ありうる,と説明している。ただし,室内に設定したようなセッティング〈道具だて〉は無理であろうが,野外の自然を利用して,ある種の設定は可能である。すなわち, 原理としては,班コーナーでの活動を,織り込まない隊訓練はあり得ない―ということになる。さきに,ツョン・サーマンが指摘したように「隊集会はよくやるが,班集会はあまりやらない」〈第1 の項参照〉といったのに,これは関連がありそうである。班長は班を動かし,隊長はその「動かす班長」を動かすべきである。隊訓練, 隊集会のやり方について大いに反省してみたい