やんちゃ隊のみんな
今回は、登山についての注意事項と計画につていだよ
登山計画のたて方
〈計画のたて方と準備〉
1、山とコースの選び方
山を選ぶ条件としては、魅力ある山、混雑しない静かな山、体力、技術的に自分に無理のない山、登山道の整備されている山、ガイドブックや登山資料の多い山、コースに危険のない山、山小屋などの施設があり、緊急時の連絡もとれる山などが列記されるが、この条件の中では特に、自分に無理のない山を選ぶことが重要である。いくら魅力ある、静かな山を望んでも、山のもっている困難さと、自分の経験や技術が合致しなければ楽しい安全な登山はできない。スカウトの登山では、ボーイ、ベンチャー、ローバースカウトとそれぞれの年代で、また個々のスカウトの体力、気力、力量、経験等が異なることを念頭に入れて山を選ばなくてはならない。従って最初は低いしかも登山道の整備されている日帰り登山から始め、回を重ねるに従って低い山の縦走登山、高い山の縦走登山と進めていかなくてはならない。
また山の困難さ、危険さは季節や、天候によって左右されることを十分考慮しなくてはならない。天気の変わりやすい春山では、ふもとは春でも山は冬といわれている。夏は雷と台風に注意すれば登山しやすい季節である。秋は台風シーズンを除けば登りやすい時期であるが、次第に日が短くなることを念頭におかなくてはならない。要は、リーダー自身、自分の山への正しい知識と技術、実力、経験をもつことが大切なことである。
2、リーダーとメンバーの決定
登山は通常2人以上のパーティーを組んで行うので、パーティーを組むからには必ずリーダーを決める必要がある。リーダーは責任感のある人間的にも技術的にも信頼できる人を選ぶことが原則である。登山行動中の意思決定者であって、その決定者がいない場合はまとまった行動ができず危険である。リーダーは山に対する知識、判断能力と、人々をまとめる力量が常に要求される。このことはスカウトの指導者も同じで基本的には問題ないが、登山に関する知識と技術、経験を積んでもらえば立派な登山リーダーの役割を果たすことができる。スカウトたちだけで登山する場合も必ずその中に登山経験者を入れ、リーダーを決めて、そのリーダーに対しては十分登山の基本を教育しておかなくてはならない。リーダーのいないパーティーは、暗やみの中をライトもつけずに歩くようなものだといわれている。
3、コース及び山の状況を調べる
山やコースの状況については、登山に関する本はたくさんある。ガイドブック、登山コース地図、国土地理院の2万5千分の1、5万分の1の地形図、登山技術入門書等の文献や資料をよく読んで、目的とする山の特徴や、コース内の危険な箇所、山小屋の状況、万一の場合の避難コース、コースタイム、露営地の有無、交通機関、緊急医療機関等の調査研究をすることが大切である。また、山は年々変化している。この変化は文献や資料で分かりにくいこともあるので、必ず事前に地元や経験者に問い合わせてコース内の危険箇所のチェックや、難易度などを確認する必要がある。特に最近、自然保護の立場からテントを好き勝手に張ることや、枯れ木などで火をたくことを禁じている場所も多いので、必ず事前に確かめなくてはならない。水場などのチェックも計画段階でよく調査しておこう。
4、予算の作成
往復の交通費、山小屋の宿泊費、装備費、食料費、燃料費、医療費などの登山に必要な経費は、あらかじめ予算をたてておかなくてはならない。そのために会計係を決め、全予算を掌握させ、登山中は支出の管理をさせることが必要である。また、山では時には不測の事態があるので予備費は必ず計上しておかなくてはならない。
5、任務の分担
準備の段階から装備、食料、記録、医療、気象、庶務等の分担をはっきり決めておくことが必要である。登山が終わるまではそれぞれの分担は責任をもって遂行することが義務づけられる。リーダーは各担当と十分連絡をとりながら、常に報告を受け、準備がまちがいなく進められていることを確認しなくてはならない。
6、行動予定表の作成
目的の山、コース、リーダー、予算、役割分担が決まったら行動予定表を作成する。これは、行動予定のみならず、装備、食料リストなどなるべく詳しく記載して、必ず出発前にプリントして参加者全員に配布することが必要である。コース、宿泊場所、行動予定時間、予定変更の場合のコースと時間、緊急避難コースなども詳しく記載し、できればコースの概念図などを図示しておくとよい。1日の行動時間は8時間以内を目安として、山の難易度や、参加者の体力、力量、経験なども考慮して、なるべく余裕のある行動時間を とるべきである。日暮前には宿泊地、または下山地に到着できるように心掛けねばならない。強行スケジュールは絶対さけねばならない。また行動予定表には荒天候の場合、けが人が出た場合の対策は必ず記載されてなくてはならない。いかなる場合も緊急に対応できるようにしておくことが安全登山の基本である。
7、装備、食料リストの作成
装備リストについては個人、共同を分けて作成する。それぞれ品名、数量、企画、重量などを記載する。食料については献立表を必ず作成しておくことが大切である。装備、食料は、日帰り登山、2日以上の登山、テント泊、小屋泊、参加人数等によって異なるので、行動予定表に基づいて詳細に算出されなくてはならない。食料は軽く、容積の小さいもの、しかも高カロリーで消化のよいもの、腐敗や変質の恐れのない、調理の手間や時間が少なくてすむものが要求されるので、この点を考慮する。また、必ず乾パン、氷砂糖などの非常食を持参すること。
8、参加者名簿作成と留守登山本部の設置
参加者名簿にはリーダー以下全員の氏名、年齢、勤務先または学校名、現住所、血液型、保険加入状況、留守宅住所と家族氏名と続柄、電話番号並びに留守登山本部(緊急連絡先)の住所と電話番号、その責任者名、現地連絡先などの明記された名簿を作成することが必要である。特に、登山は無事下山することが第一条件であるが、自然の中で行動する以上、予期せぬ事態の発生もあるので、万一の場合すぐ行動ができるような留守登山本部を設置しておくことがよい。ただし登山の場合の留守登山本部には山に精通した経験者がいることが必要である。
9、保険の加入
万一の事故の場合、多くの人々に迷惑をかけることになるので、保険には必ず加入しておいた方がよい。たとえ日帰り程度の登山でもけがや時には大きな事故がないとはいえないので加入しておこう。ボーイスカウト傷害保険では、尾根歩き登山はその保険の範囲であるが、捜索、救助費は対象外である。また、ピッケル、アイゼン、ザイル等を使用する登山はスカウト傷害保険の対象外である。
10、登山計画書(登山届)の作成と提出
計画と準備が整ったら、登山計画書(登山届)を作成し、登山地の最寄の県警本部外勤課、または警察署、職場、学校、山岳団体、家族などに提出することが必要である。ボーイスカウトでは登山地の最寄の警察署はもとより、団、所属する地区、県連盟、登山地の県連盟に提出することを守ってほしい。この登山計画書(登山届)は登山者の義務として励行してほしい。登山届用紙や登山帳を備えつけてある山もある。この場合は用紙に正しく記入してほしい。この届出内容が登山者の生命を左右することがあることも忘れてはならない。
11、最終準備会での確認
準備が整い、出発が近づいた時に、最終の準備会を必ず開催しなくてはならない。この会ではリーダーを始め全員が参加することが大切である。ここでは、各担当より準備状況の報告を受け、同時に参加者の健康状態を十分確かめなくてはならない。もし準備の遅れや、計画に疑問が生じたり、悪天候が確実に予想されたり、リーダーの不参加というような場合は、延期するか、中止することが安全登山の鉄則である。
12、下山報告と反省会
下山時には、無事下山の届出を、登山地の入山届のポストまたは登山帳に記入する。また、団や留守登山本部に無事下山、一報することも忘れてはならない。そして下山後なるべく早い時期に、反省会を行い、計画と準備が十分生かされていたか、ミスはなかったか、具体的に検討し、反省することが必要である。必ず次の登山に役立つことになる。
以上、安全に配慮した登山計画のたて方と準備については、山口英一氏の「登山と安全」がよく整理された内容ですので引用しました。
参考:山口英一「登山と安全」スカウティング’89年5月号 ボーイスカウト日本連盟
登山計画の留意点
1、登山について文部省体育局長から次のような留意点が示されています。これは各都道府県教育委員会教育長及び知事あてのものですが参考になります。
① 必ず登山の経験に富む者を同行する。
② 登山計画の立案にあたっては、参加者の性別、技術、体力等を十分考慮して目的地を定し、できるだけ現地の事前調査を行う。
③ 常に最悪の状態を予想して、食糧装備等の万全を期すること。
④ 事前に健康診断を行い、医師の指示に従って参加させること。
⑤ 気象庁の長期予報を参考とし、また気象注意報、気象警報の発されているときは登山をみあわせ、もし、行動中に暴風雨等に遭遇した場合は計画を中止するか、または変更して体力の消耗をさけ、天候の回復をまつこと。
⑥ 事前に登山計画をもよりの駅、警察署、山小屋等に提出し、登山口における登山者名簿には必ず記入する。
⑦ 行動中、とくに統制をとり、指導者またはリーダーは参加者の健康状態を観察し、疲労している者があるときは日程を強行しない。
⑧ 下山後は、地元の警察署その他に必ず連絡すること。
登山届の内容と提出先
ポイント* 登山計画書を地元警察署に出します。
1、登山をする場合には登山届を出します。
提出先は登山コースを管轄する警察署です。登山届は万一-遭難した場合、捜索の地域を決める重要な手がかりとなるものです。安全のため必ず提出しましょう。
2、登山届の内容は、登山計画書をそのまま提出すればよいのです。特に定められた様式はありません。
次の事項を書いておくことが必要です。
団体名
団体所在地 電話番号
緊急連絡先 電話番号
登山目的
入山地域
入山期間 年 月 日~ 年 月 日
実働 日間、予備 日間
日程およびコースと略地図
登山形式および登山概要
登山者名簿
氏名・年齢・住所・留守宅の連絡先電話番号・リーダー名
装備リスト
食糧計画および食糧リスト
医療品リスト
3、登山口に登山届用紙や登山帳を備えつけている山もあります。
4、下山したときは、無事下山の届を登山口の入山届のポストに入れます。登山帳を置いる場合は、登山帳に記入します。それがない場合は、登山届を提出した地元警察署に電話で下山の通知をしておきます。
参考:スカウティング ’89年5月号26頁 ボーイスカウト日本連盟
