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前回まで、シャンプーの違いによる、カラーの色落ちの違いを観察してきました。
◇その結果、「高級アルコール系」と、その同類のシャンプーがカラー毛にとって好ましくないことは、
ご理解いただけたのではないかと思います。 ※1
しかし、
そもそも「高級アルコール系」って何?
そんなご感想をいただいています。
・・・・当然だと思います。
◇シャンプーなどの商品の成分の表記欄に、
「ラウリル硫酸ナトリウム」、
「ラウレス硫酸ナトリウム」、
「アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム」
などと記載されている洗浄力の強い界面活性剤の一分類を指して使われる用語です。
そもそも
◇「高級アルコール系界面活性剤」とはいう言葉は、化学の分野での専門用語です。
ですから、本来、私たち化学の専門家ではない人間が、気安く説明できるものではありません。
でも、ちょっとしてみます。
この場合の「高級」という意味は、この化学物質の炭素原子数が、多いか少ないかを指す言葉として使用されています。
つまり、炭素原子数が多いアルコールを「高級アルコール」とよび、それからつくられた界面活性剤を、
「高級アルコール系界面活性剤」と、呼びます。
化学的な説明では、さらに、ちんぷんかんぷんな感じが強まってしまいますね。
◇美容業界や、化粧品の業界では、
「体や髪を洗うために使用する洗浄剤として、」
明治時代に輸入され、使用され始めた「石鹸」の次の、第2世代の「洗浄剤」として、
「昭和の中期頃から使用されてきた界面活性剤」
という理解の仕方でよいのではないでしょうか。
◆現・公益社団法人「日本毛髪科学協会」の元理事で、その発展に多大な功績をのこされた 八木原陽一先生の著書◆
化学、薬学の知識とその歴史を美容の現場へわかりやすく落とし込まれています。
◆むずかしい理論のみなず、美容業界の歴史や、俗っぽい出来事までの記録が織り交ぜられていて、ユニークです。
忘れさられがちな、ちょっと昔の重要なできごとの記録が収められていることも、現在の問題解決のための、たいへん有効な資料となります。◆
・・・・高級アルコール系界面活性剤にまつわる過去に起こった社会問題についても、当時の世相を交えて、リアルに描写されています。
◇ さて、この高級アルコール系界面活性剤、
「高級」と名前が付けられていることが、たいへん皮肉なのですが、
とにかく価格が安い。
しかし、その効果効能(汚れを落とす力が強い)が、抜群に優れていることから、
産業界では、経済効率が抜群に高い界面活性剤。という評価になっています。
◇日本では、昭和の中期、高度経済成長の時代、その産業発展の中で、登場し。
工業用の洗浄剤から、家庭用洗剤、食器洗剤、人体用の洗浄剤として、幅広く普及した歴史があり。
人々の生活の衛生管理の向上という側面では、文化文明の発展に大きく貢献してきたことは間違いありません。
シャンプー用の界面活性剤としても、昭和の中期に、
「石鹸」に代わって、主役の座についています。
しかし、効果効能(汚れを落とす力)に優れていて、洗濯洗剤や工業用洗浄剤として抜群の成果をだしていることの裏返しで、
人体用の洗浄成分としては、その副作用が当初から指摘されていました。 ※2
そのもっとも象徴的なものが、皮膚障害(手荒れや、皮膚炎、発疹など)です。
◆この書籍に早く出逢っていれば、当店の「手荒れの問題は、もっと早く解決していたに違いありません。◆
◇高級アルコール系界面活性剤のその後の歴史は、
皮膚障害への対策として、改良の繰り返しの歴史と言っても過言ではありません。
(代表例として、「ラウリル硫酸ナトリウム」⇒「ララウレス硫酸ナトリウム」)
成分名「オレフィン C14-16」のオレフィン系の界面活性剤も、この流れの中で生まれた
高級アルコール系界面活性剤の派生分類と理解すればよいのでしょう。
このような経緯を経ても、なお、
◇約半世紀前に生まれた高級アルコール系界面活性剤は、
現在でも「市販のシャンプーの世界」では、
その洗浄成分の主役の座を占めています。
つづく。
※1 カラーにとって、好ましくないシャンプーの種類
パーマの場合も、これに近いテスト結果が出ています。
※2 人体への副作用の過去の歴史
食器などについた油汚れが、きれいに落ち去る場面を頭に浮かべてみれば、
皮膚の油分まで、根こそぎ取り去れるイメージを連想することは、非科学的なことでしょうか?
美容室で起こる手荒れへの教科書的な対処法としては、
①ヘアカラーによるアレルギー ②パーマ液によるアレルギー ③各種添加物によるアレルギー
の順番で、その因果関係を疑います。
ひとつづつ順番に検査をして、原因を特定し、対処する方法が一般的です。
当店でも、まずは、このセオリー通り、問題解決に当たりました。
しかし・・・・・でした。
はじめから「高級アルコール系の界面活性剤の洗浄剤による皮膚障害の発症」の歴史の知識があれば、
ここまで問題解決で遠回りをすることはありませんでした。
のちに、美容師の手荒れの問題を多く扱う皮膚科の先生からいただいたこの問題への対処法も、
「まず最初に疑うべきは、シャンプー」というものでした。
※3 遠回り
遠回りしたおかげで、得られた経験、知識もありました。