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Brugge Style
仮装
就寝前、寝床で本を読まなければDVDを見る習慣がある。
未鑑賞のDVDがたくさんあるにもかかわらず、いつも「フレイジャー」か「フォルティー・タワーズ」あたりだ。
もちろん同じエピソードを繰り返し見て、同じところで爆笑するわけです。
ある夜の「フレイジャー」は、ハロウィンパーティーで文学のキャラクターに仮装して...というところから始まるエピソードだった。
マーティンはシャーロック・ホームズ、ナイルズはシラノ、という感じ(ちなみにフレイジャーは「カンタベリー物語」中のキャラ)。
夫に「こういう機会があったら誰に扮するか」という質問をしたら、「そりゃエルキュール・ポワロですよ」と言った。ベルギーが生んだ世界的有名スター!
それはいいチョイスだ。なぜなら、誰でも一目で分かるキャラクター作りがこういう時の洒落っ気の見せどころだから。ハイブラウすぎたり、服装が普通過ぎたりして「ところであんた誰?」と聞かれるようではいけない。ポワローならおそらく誰でも知っているし、あの語り口を真似するのはおもしろい。で、やたら人に絡んだりして(笑)。
わたしは憧れ全開で黄色のドレスを着た「エンマ・ボヴァリー」と妄想したが、おそらく「最も誰か分かりません大賞」に輝くだろう...
日本人としてはやっぱり紫の上とか(六条御息所の方が好みだ)。外国人受けをひたすら狙って「さゆり」(<しかしあれを文学と認めるのにはかなりの抵抗がある)。分かりやすいがキャラクターに魅力を感じない...ほら、俳優だって演じるキャラに魅了されないと演じられないとか言うじゃあないですか(笑)。
アンナ・カレーニナ
ナスターシャ・フィリポヴナ
早月葉子
キャディ・コンプソン
わたしって頭のおかしい(おかしくなるほど追いつめられた、と言うべきか)美女に共感するのだな、ということがよく分かった。共感するばかりでなく扮してみたいとまで思っているのだから、真面目に自分の内面を見つめ直してみた方がいいのかも...いや、危ない美女に堂々と憧れるということは、かえってわたしの精神は健全なのかもしれない。
この夜は大変よく眠れました。
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ボディ・ガード
ブラッセルに宿泊した翌朝、EUエリアの新しいカフェで、夫と朝食をとっていた。
秋晴れの光がガラス張りの店内を満たしており、パンやコーヒーの香りが漂い、店内は静かで、なんと良い朝。
と、表に特徴のない白バンが停車し、バラバラと人が出てきた。
一番最初に降車した男がタダモノではないことは瞭然だった。
細身の長身でスキンヘッド。辺りを見回す鋭い目つき。尖った鼻。地味なスーツの下の鍛えられた身体が容易に想像できる。
ボディーガードの重要な仕事の一つは「見るからに敏捷そうで屈強そう」さを絵に描いたようにアピールする豪奢な鎧兜的ルックスにあるのだな、と思った。彼にはスパイの仕事は無理である。目立ち過ぎ。
クライアントのグループ4人を一番奥の席に座らせ、ボディーガード2人は店内入り口近くに座ってコーヒーを注文した。
うん、ゴージャスホイットニー・ヒューストンがしょぼくれたケビン・コスナーに惚れた気持ちが分かるぞ。
しばらくして、ボディーガード氏の隣の席に座っていた2人組ののっそりした中年男(こういう輩が一番危険なのである)が席を立ち、店を出た。ショルダーバッグをイスの背もたれにかけたまま...
次の瞬間、ボディーガードの動線は映画で見た通りだった!
と、言いたいところだが、彼らは携帯電話をピコピコいじっており、全くそのことに気がついていなかった(あるいは気にしていなかった)のである。
一方、わたしはすばやく反応していた。あれは爆弾だ!早く処理班を!いや、店内の人々を安全に非難させるのだ!
あっ、今このタイミングで、焼きたてのバゲットを奥から運んできた男あのは、バゲットの間に隠した自動小銃をここぞと撃ち始めるのか?そうしたらわたしはテーブルを足で蹴り倒してその影で身を守るしかないのか?このテーブル、農家のテーブルみたいに一枚板で分厚いから案外使えるかもしれない。夫は?彼は兵役へ行っているから(ベルギーでは彼の世代まで徴兵制があったのです)...いや、彼の従軍成果は夜店の射撃でぬいぐるみを獲るのが上手いことくらいやんか!役立たず!
新聞やネットで銃撃戦記事を報道する文字が踊っているのが目に浮かんだ。
のっそりした中年男は間もなく店内に戻ってきて、ばつの悪い人がする笑みを浮かべながらバッグを取り戻した。
週末のカフェの平和が破られることはなかった。
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滅ぶ
「ユニクロ栄えて国滅ぶ」という論文が波紋を広げているらしい。
と、こういう社会ネタが好きな友人が同好のわたしにも教えてくれた。
タイトルを見たとき、わたしが一瞬にして想像した内容はこうだ。
我田引水、「ユニクロなどのグローバル企業が栄えると、社会が一色に塗りつぶされたようになって、つまらなくなる」(実際の論文の内容とは無関係です)。
ユニクロはロンドンにも店舗があるので、田舎住まいのわたしでも何度か見たことがある。最近はイケアとかザラとか、薄利多売のグローバル企業はベルギーでも急成長している。品質とデザインとアイデアが良くて安いもの。結構なことだ。ただわたしは買わない。なぜかと言うと「使い捨て」になる可能性の高いモノが好きではないからだ。
買わないもう一つの理由は、前にも書いたが「 人類の常食は、いつも砂糖大根の料理ばかり」な世界がどうしても愉快だとは思えないからである。
どこの街に行っても同じ店で同じものを同じような店員さんが売っていて、少なからぬ割合で同じものを着ている他人に出くわす世界はおもしろみがなさそう...
だからそういうビジネスの仕方をしている企業はあまり応援したくない。
もちろんこれはわたし個人の趣味嗜好だから、どなたにも押し付けるつもりはない。そうだ、社会が一色に塗りつぶされたようになっては亡国だというのがわたしの意見だから。
同じ服を着て、同じバッグを提げている人がうようよ歩いている、判でついたような町並み。飲食店はチェーン店。家にはおそらく同じ家具。きっと彼らは同じテレビ番組を見ているのだろう。
こんなシュールな街、ジェフ・クーンズのアートとしてとか、デビッド・リンチの映画の背景としてだったら楽しめるかもしれないけれど、実際住むには楽しそうではないと思う。偏見ですか、そうですか。
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ある朝、ラプンツェル

ラプンツェルってこういう塔に閉じ込められていたのだろうか。
あの高さから下まで届く髪...絢爛でありながらグロテスク。
いや、わが平安時代でも髪の長さが即美女だったわけだし...
お話の種としては、昔、美しい髪をした乙女がおり、箱入りにもかかわらず妊娠してしまって母親大ショック、そういうゴシップだったのだろう。
現代、そういう話は掃いて捨てるほどある。
「美しいお姫様がいました。悪い王子様と結婚し、禁じられた魔法の秘薬を飲んでしまいました。お姫様は王様の兵隊たちに追いかけられ、ヤマナシケンの魔女の元に逃げましたが、結局ゲイノウカイを追放され...」とか。うん、わたしには昔の人にはあった天衣無縫な想像力が足りません。
と、つくづく上を眺めていたら、秋の空の青さが目にしみた。
わたしが年頃になった時分、部屋には誰も登ってきてはくれなかったから、自ら2階ベランダから降り、裏の塀を越えて外出していたことをここに告白いたします。ラプンツェル的な悪さは何もしなかったけど。禁じられているから楽しいわけです。
今など正面玄関から堂々と、いつ何時でも外出できるが、ベランダから裸足で芝生に着地した時の、あの羽が生えて飛んで来たかのような感覚はない(当たり前や)。
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虚しきラブレター
ポストに切手なし宛名なしの手紙が入っていた。
それはたしかに
「日本人女性に」宛てたラブレターであった。
ブルージュに住んで10年経、こういう類いの手紙をもらうのはこれでたぶん5回目だ(ちゃんと数えている)。2年に一回か。しなびた中年女にしてはなかなかの成績である。
わたしの語学の先生もおっしゃっていたが、ベルギー人はなかなかシャイで、面と向かって気持ちを伝えるのが大変苦手なのだそうだ。そこで手紙か。
へええ~。
...などと喜ぶほどわたしはお人好しではない。
夫に見せびらかして注意喚起(欲望とは他人の欲望であるからして)の打ち上げ花火に利用することは忘れないが、アホ臭いことこの上ないと思っている。
なぜなら、話したこともない相手にラブレターを送るなぞ、全身妄想でできあがった中学生ならともかく、まともな中年がまともにすることではないからだ。たとえ恋が盲目であり、雷に打たれるように突然やってくるとしてもだ。つまり、このラブレターはわたし個人宛ではないのが確実。どこの誰が万人に宛てたラブレターをもらって喜ぶだろうか。
たぶん、日本人女性最高!と、マンガや映画などの情報で妄想を無菌培養した人間が、通りでたまたま見かけた日本人女性(わたし)に適当に手紙を書いたと。そういうことだろう。こういう人物は日本人女性を見かけるたびに、見境なく手紙を書くに違いない。大したマメさである。
第一わたしは「日本人と付き合いたい!」「結婚するなら日本人がいい!」と、最初から対象を絞っているような男はご免だ。わたし個人を見る前に、どこの国の人かと見る視線は、決してわたし個人にまで届かない。
わたし個人に宛てられていないメッセージは虚しい。
今度同じような手紙をもらったら
「財産持ってる?」
という下劣な返事を書いてやろうと思う。
わたしに向けられていないメッセージに対しては相手自身にも向けられていないメッセージで報復。
と言うか、相手にするなって(笑)。
それで「財産?持ってます。」という返事が来て、事実だったら、それはそのとき考えよう、という楽しみは取っておこう(笑)。
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