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埃及。




埃(ほこり)、及(およぶ)。
誰が考えたか漢字表記。あの国はそんな土地...

葡萄牙(ポルトガル)や瑞西(スイス)などの漢字表記もいいけれど、埃及、というセンスの良さにしびれる。


例年はしばしば旅をする生活をしているのだが、2020年は年明けから3月のロックダウンまでに、ベルギー、フランス、日本、そして8月から9月にかけて南仏でバカンスを過ごしただけになった。

カレンダーを見返すと、夫は1月にニューヨーク、3月にLA、ドイツ出張もしており、そうだ、出張について行くかどうか逡巡したのだったと思い出した。行っておけばよかった...

日本一時帰国予定は、2020年9月の予定が10月に延期、11月に延期...今の時点で4月に設定してある。
それまでにワクチンが効果的に摂取できたら行くかと思っている。会いたい人がたくさんいるものの、英国から帰国したと聞けば誰も会ってくれないかも...
利他的に決めたい。

3月は結婚記念日にスペインのマヨルカ島とメノルカ島に行く予定が、予約していた飛行機の便が先日キャンセルされ、延期したばかり。

常ならばどうということもない旅行延期も、今はロックダウン下にあることと、欧州の冬の暗さのせいで倍以上に堪える。
灰色の世界は季節性情動障害を引き起こし、突然涙のダムを崩壊させたりもする。自分が役立たずである、と感じる時の虚しさ悲しさよ。

毎日勉強に雪崩のように襲われている娘も、楽しみの予定もなく、終わりのない雪かきのような勉強を続けるのは精神的に参ると訴えてきた。


そこで太陽の光と青い空を夢見、夏休みの計画を立て始めた。
人間は、光なしでは生きていられないのである。

わたしはヨルダン希望だったが、多数決でプランAはエジプト。
こんな時期なのでプランBもある。Bはイスラエル。
プランCはセイシェルかハワイ。
近場ならギリシャ。


今は暇がいくらでもあるので、いつもはそれぞれ書斎に閉じこもっている二人、ダイニングテーブルでお互いのラップトップを向かい合わせに座り、前から目をつけていたオベロイのクルーズを中心に、訪れたい場所をリストアップ。一挙に2週間が埋まる。

ホテルは迷わずエジプト御三家、カイロのメナ・ハウス、ルクソールのウィンター・パレス、アスワンのカタラック(なぜならばアガサ・クリスティの『ナイル川殺人事件』ごっこをしたいからだ)。
夫は、団体観光も、いちいち値段交渉するのも絶対に嫌だと言うので、個人の観光ガイドと運転手の手配。
クルーズはキャンセルになる可能性を見越して、その間ホテルもおさえた。

目下の楽しみは古代エジプト史の新たな研究結果を読むこと(一昨日はサッカラで木製棺が50も発見されたとニュースになった)。
新型コロナ禍で公開が延期になっているケネス・ブラナーの『ナイル川殺人事件』。
それからどんな帽子をかぶるか、どんな服を着るか、である。馬鹿馬鹿しいと思われる方もおられるかもしれないが、シチュエーションごとにどんな服を着るのかという妄想は、旅行そのものと同じくらい楽しい。まるで映画を編集しているような気分になれるのである。


エジプトには過去3回行ったことがある。
最初は86年開けたばかり、プラザ合意のすぐ後だった。

ギリシャのアテネからオリンピック航空でエジプト入りした時のあの気持ちよ...
夜中に生ぬるい空気のカイロ空港に到着し、ホテルからの迎えの車に乗り、チェックインした後、夜食が出され、薄暗い部屋で妖艶なアラブの曲にのって高校生になったばかりの妹とバカ踊りしたのだった。Mさんならこの踊りを『髪結の亭主』踊り、とおっしゃるだろう。

カイロからルクソールまで10時間以上かけて汚れた電車で往復し、村の食堂でコシャリを食べ比べ、ファルッカでハシシを勧められ、ギザで馬を暴走させ、おきまりの、「結婚してくれるなら結納に家畜をこれだけ用意します」と言う男...

赤い複写紙の航空券、トラベラーズ・チェック、紙の時刻表と地図、ガイドブック、各国のコイン...


2回目は中東に住んでいる時、3回目は最初の夫と旅行。もうあれは25年以上も前のことだ。

何千年もの歴史を誇るエジプトにしたら25年なんか表面の傷にもならない時間単位なのだろうが、それでもいろいろ変わっただろうなと思う。

ラッキーならば2021年に開館が延期された「大エジプト博物館」が見られそう。
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