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公現祭 ガレット・デ・ロワ 2021



ダイニングルームの照明が暗い...


時計の針が回って昨日6日の話になってしまった。


「王様たちのケーキ」、ガレット・デ・ロワ (仏GaletteDesRois、蘭Koningentaart)を食べ、クリスマスの飾りを片付ける。

それがカトリック圏の、1月6日の行事である。


「王様たちのケーキ」の王様たちとは、イエス・キリストがベツレヘムで誕生した際に訪問してきた「東方の三博士」のこと、公現祭は彼らが訪問してきた日を記念して、となっているが、起源は別のところにある(後で述べる)。

「王様のケーキ」はパイ菓子で、アーモンドクリームのフィリング、その中にはフェーヴ(fève、ソラマメ)と呼ばれる陶製の小さいフィギュアがひとつ隠されてている。
上には紙でできた王冠を飾る。こちら、紙製でなければならない理由があるのです...

切り分けて食べる際、フェーヴが当たった人はその紙の王冠を被り、みなから祝福を受け、一日中好き放題ができる。また一年中幸福に恵まれるという。


王様たちのケーキ、毎年、夫がロンドンのラデュレから大切に持ち帰るのに(別にラデュレでなければとこだわっているわけではなく、カトリックのお祭りなので英国ではフランス菓子店でしか取り扱いがないのです)、昨今は夫がオフィスに行かないどころか、ラデュレも完全ロックダウン下の休業中。だから焼いたの。初めて。

手前味噌はわたしの別名であり、プロの出来には遠く遠く及ばないが、おいしく焼けたできたのはひとえに在ベルギーの日本人パティシエ、Les sens cielさんのおかげである。
参考にさせていただいたガレット・デ・ロワのレシピはYouTubeチャンネルのこちら

ベルギーにお住まいであるところにモエは前々から勝手に親近感を抱いていて、どのレシピ映像も眺めているだけでほんっとに癒される。まるで清浄な風が吹いたかのよう。
色彩や光も美しく、しかも食材や料理道具の立てる「音」のキャプチャーがすばらしい。ベルギー生活が愛おしく、懐かしくなる。
技術が優れているのは言わずもがな、作業のひとつひとつが正確で丁寧で無駄がなく、すばらしくクリーン。プロというのはこういうことかとため息がでる。



フェーヴは2012年のラデュレのものを隠した。その色合いに合わせて、娘が小さい頃に使っていた道具箱の折り紙で王冠を作成。

ただ、8人前くらいあるケーキのため、家族3人では今夜はフェーヴが出なかった!
また明日...


オーブンから出したてほやほや。



......


公現祭は、もともとが「冬至(クリスマス)の後の太陽の復活を祝う古代ローマの習慣」をキリスト教が取り入れたお祭りだ。

クリスマスの前の時期はどんどん暗くなる死の季節だ。
と、冬至(クリスマス)を境に太陽は再生し始める。

古代ローマには農耕神サトゥルヌスの祭があった。
農耕神は死と再生を司る神である。

そのお祭りの間には、若者の中から「偽王」が選ばれる。偽王に選ばれた若者は「サトゥルヌスの王を演じて、一ヶ月の間ありとあらゆる過激な行為をおこなった後は、おごそかに、神の祭壇に生贄として捧げられ」(以下、「」内はすべてレヴィ=ストロース『サンタクロースの秘密』より)るのである。

なぜわざわざ「偽王」を立てて王様のように好き放題させた後、人身御供にするかかというと、「偽王」に迫りくる闇と死の役回りをさせ、やがてそれらを象徴的にいためつけ、生命の季節の勝利の到来を確実にするためである。

「秋の収穫の後に死に、春蘇る植物の死と再生」する自然界のサイクルを模倣(これが穀物神信仰や農耕神信仰につながる)...

このサトゥルヌスの祭で食べたのがこのパイ。

紙の王冠はもちろん「偽王」を表しているのだ。

......


新型コロナを祓い、再生と希望の季節を迎えるために偽王を立て、いい気分にさせ、そして人身御供に...もちろん現代では象徴的に、である。

英国では一昨日と昨日、新型コロナウイルスの一日の感染者が今までで最多の六万人以上を記録し、昨日は一日の死者(過去28日間で新型コロナウイルスに感染していると診断されていた人のみ)も今までで最多になり千人を超えた。
現在感染している人は、五十人に一人の計算になるそうだ。

しかも行動制限ティア5のロックダウンに入り、2月末から3月までは続くという。
長い死の季節は冬至を過ぎた今も続いているのだ。

一方、ワクチンの一回目を摂取した人は昨日で百三十万人を超えた。

知らず知らずのうち、どこかで偽王が死に、希望と再生の季節がすぐそこまで来ているのか。ならいいのだけれど...


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