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swan lake 2020 opening night




わたしの一番好きなバレエ作品、『白鳥の湖』がロイヤル・バレエで今季開幕となった。

オデット・オディールはMarianela Nunez、ジーグフリード王子はVadium Muntagirov、当代きってのゴールデン・コンビ。


初っ端からすごいものを見てしまった...

まず、2018年にLaim Scarlettによって改訂された『白鳥の湖』は、PetipaとIvanovの傑作を踏襲しつつ、今まで制作されてきたさまざまなバージョンのハイブリッドとも言える最新作で、かといって目新しい解釈が含まれているわけではない(のは残念でもある)。

2018年初演当時にはひっかかりが否めなかった部分が全体になじむように練り直されており、より完成度が高くなったと思う。


プロットに対してわたしの意見を述べるとすれば...
わたしはロットバルトが冥界の王であり、成人を迎えたジーグフリード王子の通過儀礼を司っていると考えている。そして王子はそれに失敗している...と、以前の記事にも書いたことがある。

そしてロットバルトが基本この話のキモだと思っている。
彼は女王に影響力のあるものとしてすでに王宮に入り込んでいるか、宴にオディールを伴って現れる外国の王侯として描かれるが、実際は人間界に災いを及ぼす「悪」の権現であり、この「悪」がいったい何を欲しているのかは当然明かされることなく(わたしたちの現実界で明かされていないように)、登場人物が「悪」の周りで描く関係性は恋愛であったり、権力であったり、政治であったりし、それがおもしろいわけだ。

だからロットバルトにもっと表現の場(端的にダンス)を与えるバージョンがあってもいいと思うのだが、意外に少ない。



Marianela Nunezは今宵(昨夜)も完璧だった。オデットはまるで月影の中でゆっくと花びらを広げる絶望の花のよう、オディールは優雅で凶暴な捕食者のようだった。
ごまかしのひとつもない、角のない動き! 

Vadium Muntagirovは空中で停止している! 彼の辞書には失敗の文字が登録されていないのかしら...あのバランスの取り方の見事さは、観客に、物事が一か所にぴたりとはまる気持ちの良さを感じさせる。
彼の跳躍力に匹敵させるために王子の友人役にMarcelino Sambé。

また、Vadium Muntagirovはオデットとオディールに完全に魅了されて判断力を失っているという表現を確実に演じていた。
カーテンコールでいつものようにマリアネラから薔薇の花を一輪受け取っていたが、これほど白薔薇の似合う男もなかなかいまい。

ジーグフリードの二人の妹役が金子扶生さんとMayara Magri、もう豪華豪華。きらびやかで贅沢で華やかで、王女の祝祭の踊りにぴったり。このパ・ド・トロワを見るだけでも価値があると感じた。


カーテンコールは文字どうり会場が総立ちで、すごかったです。
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