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natalia osipova, pure dance




現在ロイヤル・バレエのプリンシパルを務める、当代一のダンサーのひとり(という言い方もおかしいけど)、Natalia Osipovaのソロ公演へ。


内容は、Osipova自身が選んだ7つの10分前後の短編を集めた構成。
公演そのものは、ちょうど一年前にプレミア後、世界中でツアーをしたそうだ。

彼女のロイヤルバレエでの公演に比べたら、どちらかというとあっけなく終わってしまった!


たった今、当代一のひとりと上にも書いたし、この拙いブログ上ではロイヤルバレエで発揮される彼女の類まれな才能を繰り返し賞賛している。
が、まず、全方向的に才能溢れるダンサー自身が自分をプロデュースするのは大変難しいことで、また別の才能が必要なのだなと思った。

例えば元ロイヤル・バレエのダンサーであるSergei Poluninしかり(Svetlana Zakharovaでさえも)...
例外をあげるとすれば、例えば引退してしまったSylvie Guillemか。

世界クラスの才能のあるダンサーが、「踊らされる」ばかりでは飽き足らず、自分自身が踊りたいものをプロデュースし、限界に挑戦し、まだ誰もやっていないことや最先端を表現したい、という気持ちになるのは凡才すら持たないわたしにも想像はできる。

ましてや、役柄を消化して多層的に表現するのが得意な(Osipova自身もインタビュー内で自分の強みは解釈だと言っている)彼女が、バレエ以外のダンス媒体でも表現したいというのは想像できる。アーティストとして健全な衝動だと思う。
だから心から応援したい。


一昨日はWorld Ballet Dayだった。
Natalia Osipovaへのインタビューもあり、彼女はポワントにリボンを縫い付ける作業が嫌いで(微笑)、とてもシャイで、自分自身を言語で表現するのが苦手だなどと語っていた。

彼女が持っている最強の言語は、誰でも同意してくれると思うが、バレエという「言語」であると思う。

「バレエ」とは、社会的にルール化された「言語運用」のひとつである。
バレエでものごとを表現するには、母国語で話す時と同じで、バレエの言語運用ルール(基本技術、身体の使い方、マイム、衣装など)に従いつつ、バレエに相応しい「言葉」の使い方をしなければならない。

つまり、われわれが母国語で自由に話していると思っている時と同様、実は母国語もバレエも、その語法はわれわれが各自主体的に選択したものではない。
人間は自由に語っているつもりで、意味やニュアンスがすでにみんなに知られている言葉を組み合わせることでしか話せないのだ。
「それはないわ。私は自由だよ」という方は、われわれは心の中で何かを考えている時でさえも、他人にも通じる言葉を使っていることを思い出してみて下さい。


しかし、未知のもの、理解を超えているものを、自分がすでに身につけている語彙の中に落とし込めない、というケースは日常的に起こる。

特に彼女のような優れたバレエダンサー、パフォーマー、アーティストには特に頻繁にあるのだと思う(わたしの想像だけど)。


自分が知っている語彙の中にはもう回答がない。ならば未知なものの中から探すしかない。そのためには自分がバージョンアップするしかない。
私が何を知らないかすら知らないもの、想像を超えているもの、それらを理解するためには自分が変化し、表現するしかない。間違えてはならないのは、彼ら彼女らは、すでに知っていることを表現するためではなく、未だ知らないことを理解するために表現するのだ。

そういう直感が、優れたアーティストにはあるのではないか。


今回の公演のないようが「あっけなかった」とわたしが感じたのは、彼女がロイヤルバレエで圧倒的な語りをするのに比べてのことだ。

彼女はバージョンアップすると思う。もちろん今後に期待している。


Pure Dance
The Leaves are Fading by Antony Tudor: duet with Natalia Osipova and David Hallberg
Left Behind by Jason Kittelberger: duet with Natalia Osipova and Jason Kittelberger
Flutter by Ivan Perez: duet with Natalia Osipova and Jonathan Goddard
In Absentia by Kim Brandstrup: solo with David Hallberg
Six Years Later by Roy Assa:f duet with Natalia Osipova and Jason Kittelberger
Ave Maria by Yuka Oishi: solo with Natalia Osipova
Valse Triste by Alexsander Ratmansky: duet with Natalia Osipova and David Hallberg
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