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存在の耐えられない薄さ




英国へ転居すると報告したとき、ベルギーの友だちが一番心配してくれたのが「ごはん」のことだった。


昔からまことしやかに言われるのが「英国は食べ物がいまひとつである」。
曰く英国風パブ、英国風ティールームというのはあっても、英国料理店は見かけないのがその証拠である、と。

美食を誇るベルギーで慣れた食の感覚は、英国では満足させることができないだろう、大丈夫か?というみなさんの母心だった。

でもわたしはあまり気にしていなかった。
ベルギー在住中もロンドンへはよく出かけていて、夫の仕事の関係で超高級店へ行っても、娘とすてきな和食屋へ行っても、手軽なガストロパブやモダンブリティッシュの店でも、英国でうまいと有名な中華やインディアンでも、屋台のフィシュアンドチップスでも、決してがっかりしたことがなく、「英国の食事は...」というコメントに対しては「それが最近はめっちゃおいしいのよ!情報社会の中の世界的大都市で、富裕層と移民が多いから当然じゃない?」などと言っていたものだ...


最近、わたしは間違っていたかも、と思う(笑)。

ロンドンのレストランを知って英国全体の食を語るなかれ。


「英国は食べ物がいまひとつである」と言われる最大の理由は塩気があらかじめ加えられていない(自分で好きなだけ振りかけるのだ)ことに由来すると考えられる。だからスーパーの出来合いやレストランの料理に魔法のクリスタル(塩のことだが)をふりかけたらあら驚きぐっとおいしくなるではないか、というのはある。

それでも全体的評価としては、滋味旨味がない、もしくは少ないと言っても過言ではなかろう。

例えば先日、好奇心から高級スーパーブランドのブリーチーズを買ってみた。弾力などは普通のモーのものなどと同じだ。
が、これが驚いたことに単なる「濃厚なクリームの塊」だったのである。
ブリーの香り、臭み、ぴりっとした辛み、舌にまとわりつくクセなどを全部排除して、子ども向けあるいはチーズが苦手な人向けに作ったらこうなるだろうな...という感じ。
滋味旨味のあるものを食べて太るのは仕方がないが、ないものを食べて太るのはかなわないのでほとんど全部残した。

このブリーは、怒られるのを覚悟で言うおう、一般的な英国人の味覚を表現するのに最適な味をしていたと思う。
マヨネーズ、ケチャップ、出来合いのスープもサラダも、ハムやカクテル用海老などにしても、病院食に似て「味がない」という印象を受けるのだ...
専門店のケーキ、クッキー、ペイストリーやチョコレートは甘いだけ。激甘。
香りも、酸味も、こくも、苦みも...ない。味の交差や階層がない。単色の味。

ファストフードを食べすぎたあげくに味覚障害になったら何を食べてもこのように砂を噛むような感じになるのだろうか。

先日、ベルギーチョコレートが切れたので、英国チョコでカップケーキを焼いたら同じレシピとは思えない別ものが出来上がったことは書き残しておこう。


フォローしておくと、素材は本当にいいものがたくさんあるので(特に肉類の豊富さには目を見張るばかりである)、手作りに励むことになりそうだ。
そしてチョコレートは当然、マヨネーズなどはマヨラーの国ベルギーからまめに持ってくるとか。
フランスのチーズは百貨店の専門店で買う。あるいはスティルトンなどもともと英国のチーズを食べればよい。
ケーキは自家製で。あるいはロンドンでラデュレやメゾンドショコラ。



結局のところ、われわれ日本人には醤油という最強の身方があるから世界中どこでも結構平気なのである。
脇を固めるのはみりん、味噌、出汁...
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