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Brugge Style
パリから寄り道 cassel
パリからの帰りに寄り道をするためには、
交通手段が車
時間と体力に余裕がある
の二つの条件が揃っていなければならない。
...すごいミッションを果たさんとするかのようですね(笑)。
パリから寄り道シリーズ3回目(番外編を入れたら4回目!)。
ファッション展示会で賑わうパリからの帰り道、ひさしぶりに寄り道をした。
北フランスに広がるフランダース平野にある街、カセル。北フランス最大の街リールから30分弱。
この小さな街に「フランダース美術館」が完成したと知るまでは、カセルのその名を聞いたこともなかった。
「フランスに残るフランダースの街」...次の寄り道はここやなと、ニュースを見て以来決めていたのだ。
フランスにあるフランダース平野地方は、その名前が表すように元々はフランダースに属していたが、17世紀のネーデルランド継承戦争でフランス軍に征服され、その後ずっとフランスにある。
カセルもその時に「フランス」になって以来350年近くが経つ。
この間の大戦の後にフランスになったのではなく、350年前の戦争によって...にもかかわらず、この街には、周辺の街に比較しても「フランダース」アイデンティティが未だに根付いているというのである。なるほど、小高い丘の上に造成された街だからして、地理的に隔離されているという偶然も手伝ったのだろう。
街を歩くとフランダースの旗(黄色地に黒の獅子。かっこいい旗だ)や看板が目につく。
レストランやカフェ、果てはドライクリーニング店など、「フランダースの獅子」と名乗る屋号がやたらとある。カフェには「フランダース風フィルターコーヒー」という見たこともないメニューがあり、デリではフランダース風パテや煮こごりなどの総菜が販売されている。
聞けばフラミッシュのラジオ局まであると言うではないか。
カフェの若オヤジはフラミッシュを話せたし。

人間のアイデンティティは「自分は何であるか」ということよりも「何でないか」ということを核に形成されると言う。「自分はフランス人ではない」「母国語はフランス語ではない」「自分の食べている料理はフランスの料理ではない」等々。つまり、ある日フランスという他者が玄関先に現れたとき、人はいままで考えなくても良かったこと:「自分はフランス人ではない。では何人なのか」という自分のアイデンティティを考え始めたのだ。
わたしとしては、フランス文化というのはメインストリームでマジョリティで、そのために破壊力も強いのではないかと根拠もなく思っていた。だから余計に、フランスというネイションに住みつつも「私らはずっとフランダース人さ」という人々の態度が、ええなあ...というのはおかしいかもしれないが、「外国」に住んで12年、年期入りの「異邦人」であるわたしにとっては非常に親近感が湧くストーリー、だったのだ。
ほら、もし元寇が攻めて来た時に日本の一部が完全にモンゴル化されていたとして、800年後の現在、その地方の小さな街でまだ日本語が話され、和食が食卓に上っているとしたら...なんか嬉し懐かし感じがしないだろうか。
美術館も期待はずれだったし、街にもこれと言って見るべき物はなく、二度と訪れることもないだろうが、よい訪問であった。
人生は「二度と○○することのない○○」であふれている...大切にしないといけませんね。
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