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そんなに鳴くなよ




早朝、庭のさくらの木の下に、アメリカンショートヘア種のような仔猫ちゃんがいて、キッチンのわれわれと目が合うと、こちらへすっ飛んで来た。

入れてくれ~入れてくれ~入れてくれ~

と、キツネのような立派なしっぽを振りながらガラス扉に身体をすりつけ、高い声でなおなおなおと鳴く。


うわ~かっかわいいい~


他の犬に吠えられてもガン無視(おそらく自分が吠えの対象になっているとは気がついていない)、絶対に吠えないのウチの飼い犬は、身体を固くして低いうなり声を絞り出しながら猫ちゃんを睨みつけている。

反対に人間のわれわれはめろめろにされてしまった。



抱っこすると猫の身体独特の、一昨々日の風船のような感触が伝わってくる。
完全左右対称の顔、シルバーグレーと黒の長めのふわっふわの毛、むくむくの手足、真っ黒な瞳!
神様、猫族はあなたの最高傑作ですな。百獣の王。


猫ちゃん、喉を鳴らす。腕の中で眠る。夫のガウンの上でおっぱいを探してちうちう吸う。
人間には慣れているようだが、毛は汚い。首輪もない。ブルージュには大人の事情で野良猫や野良犬がいないのであるが、いったいどういう子なのだろう。





飼い犬の我慢が限界に達したようで、彼女が「ぶふ!」と喉で小さく吠えたら、猫ちゃんは細く開けたドアからフォークの間を垂れるクリームのようにすりぬけて隣家の方へ姿が見えなくなった。


それから
飼い犬はすまないことをしたと思っているかのようにずっと鼻を鳴らし続けている。
娘はずっと窓枠に腰掛けて、猫ちゃんが戻ってこないかどうか見ている。



夜は嵐で、どこかで猫ちゃんが鳴いているような気がした。

シャワーを使っていても、お菓子の袋をがさがさ開けていても、寝返りを打っていても動作を止めてしまう。


そんなに鳴くなよ。猫ちゃん。



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