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夢の園遊会




12歳のころ大好きだった男の子のことを思い出した。

わたしは夜ごとオールカラーで鮮やかな夢を何本も見るが、その中に彼が登場したのだ。
彼のことを思い出すのは、5年に1回とかそんなタイムスパンになってしまったが、今頃どこでどうしているのだろうか。



彼の登場は街中の女の心を奪った。街中の女ですよ、少女だけじゃないんですよ。
見た目は少々ワイルドで麗しく、勉強はそこそこだが溌剌としていて、自信たっぷり、運動神経が目を剥くほど抜群によかった。
同い年くらいの少年たちは非常に不愉快だったのに違いない。

女性に対しては、女の子にも中年女にも、美人にも不美人にも、人気がある子にも疎外されている子にも、知り合いにも通りすがりにも、分け隔てなく愛想がよく、それが全く不自然なほど自然であった。

つまり彼と話すと、女はみんな自分が世界で一番特別な存在のように感じたのである(<ここ重要)。

うむ、魔法使いか催眠術師か詐欺師みたいだった。あるいはカサノバとかジャッキー・ケネディ男版とか言おうか。

わたしは12歳にして、彼こそが世紀の女たらしであると気づいて感動した。
女たらしとは、女をたらしこもうと努めているわけではないのである。自然にそうなるのだ。罪だ。

それまで同年代の男の子に全然興味がなく、大江健三郎の「われらの時代」の主人公のような男はいないものかと日々退屈に生きていたおませなわたくし(今ではあんな男はイヤだ)も、彼の術にまんまとはまってしまった。



その後、おしゃれなカフェ・バー(死語)でバイトしていると聞き、しかしそこへ行く気にはならなかったし、アメリカに留学したとか、社長になっているとか、風の噂に聞いた。


彼が結婚しているとしたら、彼の妻になるような女性ってどんな人?
どこに住んでるのか?

おそらく「女性」にこだわりがないだろう彼はごく普通のパートナーを選んでいるような気がする。
接待ゴルフなどは滅茶苦茶上手いに違いない。
新地のホステスさんにももてまくりだろう。


 ....



そしてやっとタイトルの夢の園遊会。

これまでわたしが自分の人生で出会って別れた人たちを、天皇陛下の園遊会のように一か所に招待し、わたしが彼らに一言づつ声をかける、という傲慢で破廉恥な趣向なのである(笑)。
この会を開くのがわたしのファンタジーである。

そんなくだらない空想は、12歳のころでもしていなかったはずだ。
わたしはあの頃が一番まともだった。
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