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中級ライディング。~スポーツ走行編・リカバリー(1)~

2011-03-09 13:52:21 | 中級ライディング

コケないためのテクニックを練習してたって、失敗する事は絶対にあるので、リカバリー法を書いておこうかなあと。

予定としては、
(1)ストレートエンドでのブレーキング失敗
(2)ターンインからコーナリング中の失敗
(3)立ち上がりでの失敗
(4)ストレートに入ってからの失敗
(5)マシントラブル
って感じで。今回のお題は、まずは(1)ストレートエンドでのブレーキング失敗のハナシからということで。

あ、その前に。すべてのリカバリーに共通しているのですが、「緊張している時ほど力を抜く」のがとっても大事です。力んじゃうと、いつも以上のパフォーマンスを要求される場面なのに、いつも以下の操作しか出来なくなりますんで。「ヤベ!」と思った時ほど脱力する、というイメトレを普段からしておくと良いと思います。

さて。

転倒に繋がるブレーキングの失敗のほとんどに「減速不足」が先行しているかと思います。続いて、「うわ、スピード落ちてない、曲がれねえ!」と思ってブレーキレバーを引き過ぎて握りゴケするか、あるいは「速すぎ、いつもより寝かさなきゃ!」ってことでスリップダウンするかのどちらかになる可能性が高くなります。予想に反してスンナリ曲がれちゃったら、それまでの突っ込みがヌルかったという話なので、「失敗は成功の母」体験としておおいに活用しましょう。たった今「出来てしまった」感触を忘れないうちに即座に繰り返して、自分のモノにしてしまうのが上達のコツですからね(以前にも触れた「ヘタだから上手くなる」理論)。

さて、そういうハッピーな結末になる確率は、残念ながらわりと低め設定になっています(苦笑)。大体は淋しい結果になるのですが、現場での努力次第で淋しさ加減は多少変えられます。

もちろん、スポーツ走行中ですから、自分なりのフルブレーキングでも減速不十分だったわけで、そこから魔法のように急減速できる方法はありません。じゃあ、どうしましょ?

ブレーキ失敗から握りゴケ・スリップダウンする場合、サーキット初心者の多くは「何とかして曲がらなきゃ!曲がれるように減速しなきゃ!」という発想で、無理な操作をしてコケるわけですが(いつもの地点で曲げ始められるように頑張ろうとするはず)、ここで発想の転換をしてみましょう。

その速度で曲がれないなら、無理に曲がるのをよしましょう。

走り慣れた方には説明不要なのですが、サーキットでは「曲がれないなら、ゆっくりコースアウトさせればOK」です。コース上で「ドガシャーン!」と派手にコケるくらいなら、いっそコースの外に出てしまいましょう。意外と高確率で生還できます。ここが「コースアウト即ガードレール」の公道と決定的に違うところです。自分の記憶をザッと辿ると、トミン、筑波、富士、もてぎで合計9回コースアウトしていますが(結構多いな...苦笑)、そのうち最終的に転倒したのは2回です。78%の復帰率なら、まずまずかと。

この場合、曲がることはいったんキレイに諦めて腹をくくり、バイクをしっかりと直立させ、自分のテクニックなりの最大のブレーキングを行います。あくまで、「自分のテクニックなり」です。普段やってないことを、極限の場面で初めてやっても出来っこないですから、確実に実行できることをやりましょう。普段やっている範囲の最大のブレーキングで、コーナーの奥のグラベルを目指して、バイクを立てて真っ直ぐ突っ込みます。

すると、意外にもコースアウトする直前に、曲がりきれる速度に落ちていたりします。また、曲がりきれなくても、かなり速度は落ちているので、握りゴケで路面に高速ダイブして叩き付けられるより大分マシな結果になる事が多いです。転ばないで済むかもしれないし、コケてもコース上で握りゴケするよりダメージは軽くなっているはずです。

グラベルに出る際には、バイクは可能な限り直立させます。バイクが傾いていると、あっさりコケます。また、グラベルに出る瞬間に、フロントブレーキはリリースします。フロントブレーキを握ったままだと、グラベルに出た途端に握りゴケしますので。

たいていのサーキットでは、コースアウトするとグラベルベッド(砂場、サンドトラップとも)があり、ここに向かって真っ直ぐ突っ込むと、どんどん速度が落ちます。モテギのグラベルベッドなどは相当深く、突入したらすぐにどんどんシフトダウンして1速まで落とさないと、途中で立ち往生することになります。バイクが直立したまま砂に埋まってしまったら、後続車両のためにバイクを倒してからライダーだけコースの外に出るのがスポーツ走行のルールですから、そうならないように頑張ってバイクが動いているうちに脱出しましょう。倒したバイクはレッカー車で砂の上から引きずり出して回収しますから、折角コケなかったのにバイクは哀れガリガリの傷だらけになります。まあ、握りゴケやハイサイドで「人間もバイクも木っ端みじん」より随分マシですけどね...。

「そんなにメンドクサイなら、握りゴケ覚悟でいつもより強力Maxブレーキングじゃ!」と頑張ってみたいならそれでもいいんですが、握りゴケした場合、バイクはほとんど減速しないでコース外へ滑って行きます。減速しないでコースサイドまで滑って行ったバイクは、路面との衝突に続き、縁石との2回目の衝突というイベントが待ってます。振り落とされてコース内に取り残されたライダーが、滑って行った先の縁石で宙を舞う我がバイクを遠い目で見つめていたという実話をを身近に聞いていますんで、握りゴケはまあ避けた方が宜しいかと。また、どう考えてもブレーキをかけているタイヤの方が、カウルやスライダーよりもしっかり減速してくれるのは間違いないですから、Maxブレーキチャレンジで握りゴケするよりは、いつも通りのブレーキングを確実に行う方が、コース上に残れる可能性が高いですね。

そうそう、握りゴケだとコース内にライダーが残るのも危険ですね。コケたバイクはエライ勢いで滑って行きますが、革ツナギのライダーは急減速しますので、バイクはコース外に、ライダーはコース内にという有り難くない逆転現象が起きやすいです。Moto2の事故でもご存知のように、転倒後のライダーがコースに残るのは極めて危険なので、握りゴケは極力避けましょう。

まあ、「ゆっくりコースアウトすればOK」といっても、トミンのようにグラベルベッドが「ない」、あるいは筑波のように明らかにグラベルが狭いといったコースでは、無事では済まない可能性も勿論あります。特に、筑波最終は減速不十分で高速のままコースアウトすると死亡事故につながりかねない、非常に危険なコーナーです。いつでもどこでもコースアウトさせれば無傷で済む、という意味ではなくて、コース内での転倒の可能性が極めて高いと思ったら、あえてコースアウトさせて被害を最小限にするという選択肢も持っておくと良い、ということですね。

追記。
ブレーキングに自信が持てない間は、前車のイン側に突っ込むのはよしましょう。ブレーキング失敗の結果、確実に自車がミサイルになります。コーナリング開始後に、後方から200kg近い金属塊が突っ込んで来たら、間違いなくひどいことになりますので(なりました...)。レースならまだしも、サンデーライダーのスポーツ走行くらいで、自信がないのに前車のインを窺うことは避けるべきです。自信があってもミスすることはあるので、それはお互い様で仕方がないのですが、インベタでの追い抜きを試みるなら、それ以前にそのコーナーをインベタで回る練習をしてからにしましょうね。

追記その2。
握りゴケ防止の練習法として、若い頃に自分がやっていた乱暴な方法。危ないので、誰にでも勧められるもんじゃないのですが、一応。
滑りやすい、砂の浮いたアスファルトやフラットダートで行いますが、バイクをしっかり直立させた状態でフロントブレーキをかけ、「一瞬だけロックさせてすぐ離す」って練習です。失敗してその場でひっくり返っても責任持てませんので、お試しの方は周囲の安全をしっかり確認した上でトライしてください。練習路面として、濡れたアスファルトは向いてないと思います。
自分には有効な練習だったとは思いますが、なにぶんリスクが高いので、決してオススメはしません。慣れると、フロントロックしてもすぐリリースすればそんなに簡単には転ばないと自信がつくようにはなりますが、実際の現場では練習の成果でフロントロックを解除できても、代わりにそのまま衝突するだけって状況も十分あると思うので、練習リスクの割にはご利益が少ないかもしれませんし。

オマケ動画。自分の失敗&リカバリー例(笑)。しにちなかおさん、動画ありがとうございます。


YouTube: KTM Duke追走 101011 トミンモーターランド
3:00くらいから帝王コーナーにアプローチしているのですが、ブレーキングを失敗してリヤをスライドさせてしまい、倒し込めなくなりました...。そこで、倒し込むのを諦めてブレーキングに専念、コース内に留まることが出来ました。カッコ悪い動画ですけど、それはそれで役に立つかなと(苦笑)。ほんとはここで進入スライドを決められたらカッコいいんですけどねえ。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
僕は先日の筑波では知り合いを抜いた勢いまではよ... (mffactory02)
2011-03-09 15:45:34
僕は先日の筑波では知り合いを抜いた勢いまではよかったんですが、1コーナーでギアが抜けて直進しました(笑)・・幸いゼッ不調だったので、140km/h程度しか出てなく(笑)おっしゃるとおり、寝かすことを諦めて直進してコース上に留まり、復帰しました・・GPレーサーとかはグラベルからすんなり復帰、とか上手いですよね・・去年はとくに青山選手とか。

筑波はグラベル狭いですか・・鎌田学選手が死亡した、なんてたまたまどこかで聞いたので今回の筑波はほんとビビリ度高かったです・・。

某ライダースクラブ誌のネモケンさんは「もうだめだ、と思ってももうひと寝かせ出来るから・・」と言ってましたが・・そのもうひと寝かせが出来たらレースに出てるよ・・とか思います(笑)。

考えてみると、コースアウトとかオーバーランって意外としてません・・那須、桶川、トミンなんて一度も無いや・・「攻め」が足りん(笑)。
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おお、あの走行会の間にそんなことが(苦笑)。スピ... (Broccobird)
2011-03-09 17:03:13
おお、あの走行会の間にそんなことが(苦笑)。スピードが出ていなくても、ギヤ抜けって恐ろしいですからねえ。よくぞご無事で。

今回のネタは、mffactory02さんのように、ある程度走り慣れた方ならご存知かとは思うのですが、サーキットを走り始めたばかりの方だと意外と「意識的にコースアウトさせる」という発想はなかなか思いつかないようですので、たった1行「曲がれないなら外に出よう」を膨らませて記事にしました(笑)。筑波最終に関する話など、少し記事をいじってますので、お暇がある時にでもご覧下さい。

自分が初めて走ったMFJ公認サーキットはツインリンクもてぎでした。もてぎが自分中の安全基準になった後で、初めて筑波を走ったら、「これで全日本やるの!?」とビックリした記憶があります。500のレース出場のために来日したシュワンツが「危険すぎる」とボイコットして帰ったこともありましたが、そらそうだと納得しましたね。

鎌田さんが亡くなったのは確かS字という記憶ですが、事故の詳細は知らないので、どうすれば死亡事故にならなくて済んだかという検証結果も知らないんです。何があったんでしょうね。

ネモケンさんの言っていることはたぶん、ブレーキング中の話ではなくてコーナリング中に曲がりきれないと思った場合のことでしょうね。あながち間違っちゃいないんですが、それが出来る人は既にやってるという気もします(笑)。

自分がフロントやリヤをさんざん滑らせても生き伸びていることが多いのは、まだリカバリーに使える余裕があるってことです。自分の技術でほんとに限界ギリギリで走ってれば、何かあったらその場でひっくり返ってるでしょう。そのマージンを、曲がり切れそうにない時に吐き出すってことですね。どうせ曲がりきれなくて突っ込むのなら、一か八かもうひと寝かしする価値はあるってことでしょう。
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茂木の130Rでギヤ抜けして飛び出し、筑波の最終で... (ぎん)
2011-03-09 20:36:10
茂木の130Rでギヤ抜けして飛び出し、筑波の最終で飛び出して前転した僕がきましたよw

ネモケンさんにヤバイとおもっても寝かせろとは、僕もいわれたことあります。
”グラベルにでるともんどり打って倒れることがあるから危ない。今のバイクはビックリするくらい曲がるから、バイクを信じて曲げようとしてみましょう”といわれました。
リアステアに続く、ネモケン理論ですね。
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ぎんさん> (Broccobird)
2011-03-09 21:57:52
ぎんさん>

待ってました(笑)。ぎんさん、そしてHOLYさんの体験談がなければ、この記事は書けませんでした。ネタ提供に感謝(苦笑)。

ぎんさんの「モテギ130R・4速全開コースアウト&無事帰還伝説」を聞いてから、モテギのダウンヒルを思い切って開けて行けるようになりました。「なーんだ、曲がれないなら真っ直ぐ行きゃいいのか」と思ったら、急に気楽になりまして(笑)。
「筑波最終200km/h前転事件」も、但し書きに活用させていただきました(苦笑)。筑波最終は、ぎんさんの事例以外にも非常に気の毒な死亡事故の話も聞いていますので、なおさら注意喚起をしておこうと思いました。

mffactory02さんの書かれたネモケンネタ、てっきり公道の話かと思ってましたよ。公道だと、コースアウト即ガードレールですから、何としても曲がり切るか、スリップダウンさせるかの選択しかありませんから、「もうひと寝かせ」も間違いとは言えないと思ったんだけれども、「グラベルに出ると転ぶから」が理由!?!?!?「今のバイクは良く曲がる」って!?!?!?
もう講師としては引退すべきですね。レクチャーを聞く人は、今の「良く曲がるバイク」とやらに乗ってても曲げられない場面でどうすればいいのか聞きたいのだし、大体、普段の練習でも曲げられないものが、パニック状態で普段以上に曲げられるワケがないっちゅーの。

RIDERS' CLUBやA出版の記事には、鵜呑みにするとホントに危ないものが高率に含まれているので、注意しなけりゃなりません。

最近のスマッシュヒットは、「カーブの手前でオーバースピードだと思ったらブレーキを離せ」というもの。「!?!?!?」と思って理由を読んだら、「ブレーキをかけるとバイクが倒せなくなるから」だって。その速度では倒せないし曲がれないのがオーバースピードだっていうのに、その後どういう操作をさせるつもりかと思ったら、そこはまったく書いてない。もう、唖然。こんなデタラメがよく通るなと。

もうひとつは、「トラコンつきのバイクは、トラコンを信じて大きくアクセルを開けよう」って主張。こんなの、トラコンが故障したらどうするんじゃと言い続けてたんだけど、ロッシが足を骨折した途端に「これまでトラコンに任せてアクセルを大きく開けようと言って来たけど、それでいいのかと自信がなくなっちゃった」とかRC誌面に書きやがった。もう、アホかと。

リターン直後で、さあこれからサーキット入門という次期に、走行会なら何でもいいやとライディングパーティに申し込みをしたものの仕事でキャンセルしたことがあるのですが、「グラベルは危ない」って有り難いお話を聞くために3万円以上ものお金払わなくてよかったと思ってます。
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自分がコケる時はいつもあっという間です。 気づ... (松千代)
2011-03-10 15:57:49
自分がコケる時はいつもあっという間です。 気づいたら路面滑ってて「アレ!?」って感じで。
たぶん、全てフロントから逝っているからだと思いますがこの場合リカバリーのしようも無いので困りものです。
オーバースピードかなんかで「曲がれない!」って焦ったことは最近はほとんどないですが、昔那須のツバメ返しで後輪がホッピングして突っ切ったのと、トミンの左でブレーキレバーが何故か(たぶん手が疲れてた?)握れなくて、そのまま突っ切ってメインストレートで復活したってのがありました。 あの時芝のごとく雑草が短くかられてたからコケずに済んだんですよね。 確かに「駄目だ!とか、ヤバい!」と直感した瞬間の判断っていうか無意識で反射的な操作ってのは重要かもしれませんね。
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松千代さん> (Broccobird)
2011-03-10 16:34:43
松千代さん>

いらっしゃいませ(...苦笑)。心の傷はまだ癒えないかと思いますが、せめてバイクが早く直りますように。松千代さん企画のツーリングに、松千代さんがレジアスエースで参加では、ちょっと様にならないですからね。

実は、「気がついたら路面を滑っていた」という件については既にネタは出来ているんですが、このタイミングで書くと松千代さんのことを書いてるみたいでなんだかなあ...と思って、時期を待とうと思ってたんですよ。ただ、その前にまだコーナリング編のテクニック記事を書いてないので、そちらが先かな?とも。フロントのスライドそのものは、スライドに早めに気づけば充分対処可能ですから、その辺を書こうと思っています。

ブレーキレバーを握り損なったなんて、恐怖そのものですね(苦笑)。トミンはコースアウトから復帰できる確率が他のコースより低めですから、ご無事で何よりでした。ストレートで合流って、合流された方もビビったでしょうねえ(苦笑)。

「駄目だ!」「ヤバい!」と思った時に、予め対処法を知ってイメトレしているかどうかで、その後の運命が分かれることって大いにあると思うんですよ。北アルプスの雪渓で初めて滑落した時も、対処法をひとつだけながら知っていたので、途中で止まる事が出来ました。リカバリー法シリーズは走り慣れた人には「ジョーシキ」でしかない内容になりそうですが、サーキット初心者だとご存じない話もあるかと思うので、知っている範囲の事を一通り書いておこうと思っています。
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