ゆれる
2006-12-31 | 映画
男2対女1の関係の映画といえば、先ず『突然炎のごとく』に代表されるフランス映画を想い出す。本作は山梨を舞台にしたローカルな作品だが、出だしからジャズ風な音楽が流れ、やっぱり底に流れる雰囲気には、フランス映画に相通じるものを感じる。
弟(オダギリジョー)が帰省早々にガス欠で立ち寄るガソリンスタンドは、実家が営業する店である。そこの若い女店員(真木ようこ )との窓越しの関係性、法事の席での兄(香川照之)の気の遣いよう等、前半の細やかな丁寧な描写が後々の展開にジンワリと効いて来る。
だから、弟が彼女と性関係を簡単に持ち、余計な説明がなくても違和感無く受け容れられる。また、それに気付いていながら、気付かない風を装う兄が二人を誘うドライブは、観客を否応なしにスリリングな「場」へと引き込んで行く。その「場」が「ゆれる」吊り橋となれば、スリルは更に加速する。
兄と一緒に吊り橋を渡っていた女性が転落死したことから、兄の複雑な内面が噴出し始め、弟の兄に対する思いも揺らぎ始める。
兄弟の関係性は、事故か事件かが争点となる兄の裁判で、「ゆれ」から疑念、妬みの「ねじれ」へと徐々に変化してゆく。
この経緯における、裁判所と接見室での香川照之とオダギリジョーの迫真の演技が見どころである。特に、温和な兄がグロテスクな感情を剥き出しにして、「檻の中で生きてゆくのも、スタンドの中で生きてゆくのも同じ」と、日頃のストレスを暴発させる香川照之と、子供時代の8ミリ映画を観ながら激しく泣くオダギリジョーの場面が圧巻だ。
ほかでは、検察官役に悪人面の木村祐二を起用した意外性が面白い。
小説や漫画からの映画化が主流で、昨年の『運命じゃない人』のような優れたオリジナル脚本にはなかなか出会えないが、「映画は脚本である」ことを示してくれた今年のオリジナル秀作である。
弟(オダギリジョー)が帰省早々にガス欠で立ち寄るガソリンスタンドは、実家が営業する店である。そこの若い女店員(真木ようこ )との窓越しの関係性、法事の席での兄(香川照之)の気の遣いよう等、前半の細やかな丁寧な描写が後々の展開にジンワリと効いて来る。
だから、弟が彼女と性関係を簡単に持ち、余計な説明がなくても違和感無く受け容れられる。また、それに気付いていながら、気付かない風を装う兄が二人を誘うドライブは、観客を否応なしにスリリングな「場」へと引き込んで行く。その「場」が「ゆれる」吊り橋となれば、スリルは更に加速する。
兄と一緒に吊り橋を渡っていた女性が転落死したことから、兄の複雑な内面が噴出し始め、弟の兄に対する思いも揺らぎ始める。
兄弟の関係性は、事故か事件かが争点となる兄の裁判で、「ゆれ」から疑念、妬みの「ねじれ」へと徐々に変化してゆく。
この経緯における、裁判所と接見室での香川照之とオダギリジョーの迫真の演技が見どころである。特に、温和な兄がグロテスクな感情を剥き出しにして、「檻の中で生きてゆくのも、スタンドの中で生きてゆくのも同じ」と、日頃のストレスを暴発させる香川照之と、子供時代の8ミリ映画を観ながら激しく泣くオダギリジョーの場面が圧巻だ。
ほかでは、検察官役に悪人面の木村祐二を起用した意外性が面白い。
小説や漫画からの映画化が主流で、昨年の『運命じゃない人』のような優れたオリジナル脚本にはなかなか出会えないが、「映画は脚本である」ことを示してくれた今年のオリジナル秀作である。
『蛇イチゴ』は未見ですが、次回作では
更なる進化を期待したいですね。
それも、オリジナルのシナリオで是非!
TB&コメントに感謝!
西川美和監督、若い女性なのによく兄弟の心情まで掘り下げられたものだと感心しています。きっとスタッフが素晴らしいのでしょうね。
「蛇イチゴ」も良かったけれど、まだ青っぽい部分がありました。この「ゆれる」でかなり進化しています。これからどうなって行くのか、注視して行きたい監督ですね。
最近、小説や漫画を映画にするのが多い中で、こういうのに出会うと、やっぱりオリジナルの脚本ってすごいーと思います。
TBさせていただきました~
TB&コメントありがとうございます!
去年のトリノ映画祭でグランプリを獲得した、
坪川拓史監督の『美式(うつくしき)天然』の公開が
いつなのか気になっています。
同感です。
前作をそれほど評価していない私ですが、本作は今年の邦画のベストです。
オリジナル性に期待したいですね。
TBに感謝!
原作物からの安易な映画化が多い昨今、
オリジナル脚本で、その上に優れていることは
本当に素晴らしいと思います。
先が読めないミステリアスな面白さにも脱帽です。
今後ともよろしくお願いいたします。
弊ブログへのトラックバック、ありがとうございました。
こちらからもコメントとトラックバックのお返しを失礼致します。
この作品は、西川美和さんが作り出したシリアスなばかりでない多様であり深い感情を提示した映画世界が素晴らしく、主演である香川照之さんとオダギリジョーさんをはじめとした各出演者の皆さんの作品世界での存在の輝きに圧倒された一本でした。
また遊びに来させて頂きます。
ではまた。