レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『新アラビア夜話』その他

2009-11-27 06:06:16 | 
 ここ最近の新潮文庫の「おとなの時間」で買ったのは、松本清張『歪んだ複社』、芥川『シュジュの言葉・西方の人』、 『眠狂四郎無頼控(1)』、『シャネルの真実』、ドストエフスキー『虐げられた人々』  だった。
 
 ・ファッションに対して関心は希薄であるけど、シャネルには女性史の点でわりに敬意をはらっている。時代背景も波瀾万丈だし。市川ジュンの絵で似合いそうだと思うのは、「別マ」時代の『白い炎』の例があるからでもある。クルティザーヌ(高級娼婦)を母に持ち、世紀末のパリでデザイナーを目指す娘の物語。
 
 ・かつて新選組同人誌で愛読していた「群情」の山内まりこさんの本に「眠狂四郎」が断片的に描かれていたことがあったので、あのクールでかっこいい絵を頭に浮かべて読んだ。

 ・ドストエフスキーの登場人物は濃い。『虐げ~』の場合、作家の青年とその幼馴染の娘がいて、彼女の父親が上司である横暴な貴族と悶着になり、しかしその坊ちゃんと娘は恋仲になる。そのボンボンが無邪気かつ迷惑な奴で、縁談の相手とも意気投合し、それをあけすけに両方の女に報告しまくり。--読んでいて、やめろよこんな男、と思いながら最後まで読者もひきずられてしまう。主人公がなりゆきで面倒みるはめになった哀れな少女は、解説によるとディケンズ作品の影響だそうだけど、私はゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』のミニョンを連想した。しまいにはささやかなハッピーエンドに向かうことをほのめかしてあるけど、諸悪の根源である能天気ボンボンとその暴君オヤジになんのバツも下っていないことにはなにかすっきりしない。


『新アラビア夜話』スティーヴンソン
 光文社古典新訳文庫の1冊。
 19世紀ロンドン、ボヘミアのフロリゼル王子とお付きのジェラルディン大佐があやしい事件に首をつっこんでまわる洒落た冒険譚。ボヘミアというと、ホームスにも『ボヘミアの醜聞』ってあるなと思ったが、解説によると、このネーミングはシェイクスピア『冬物語』からきていて、ロンドンからほどよく距離のある異国で、物語の貴人の設定には手ごろだったのだろうとして、やはりホームズの例を挙げている。(『冬物語』では、ボヘミア王子と結婚するシシリア王女が嵐にあって「ボヘミアの海岸」に流れ着くというメチャクチャな展開)
 ところでこの話、どこかマイナーな雑誌でマンガのタネにしてなかったか? 秋乃茉莉か伊藤結花里あたりの絵のイメージで頭に残っている。
コメント
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