レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『杖と翼』番外編その他

2009-06-26 05:42:40 | マンガ
 コミックス新刊(?)の話題いくつか。

津寺理可子『星少女』
 「ロマxプリ」連載で、4回のうち3回目まで1巻に収録。
 舞台は大正時代。母の死後、父を探して上京した七生は、大河内伯爵家のメイドに雇われる。仕事で英国にいるはずの当主、贅沢な奥方、軍人の長男、遊び人の次男。イジワルされながらもけなげな美少女、実はその出生は!?なんて、もうお約束の王道なんだけど、絵の美しいことに圧倒されてしまう。それに七生の性格も、イジメにあっても言うべきことはしっかり言う気丈さや、よその屋敷に売られても周囲の人々の善意に目を向ける前向きさがたいへんよろしい。
 これはぜひ続いてもらいたい。


『エロイカ~』35巻
 番外編2本と、いま進行中の第1回目(この続きが最新号)掲載。
 『聖夜の善き訪問者たち』はこれで初めて読んだ。
 父上の訪問から逃げて、ミスターLの留守宅に避難した少佐が、よその家でもキレイ好きを発揮したり、メタボ犬を運動させたりしているのはいかにもの行動で楽しい。
 それにしても、メリンダちゃんは「レディ・ダイアナは健康美人」「チャールズはうまくやった」のときに7歳だったのだ、なぜいま8つなのだろう・・・。やはり「サザエさん」状態はつらい。それに父上いつまで健在なんだ。


木原敏江『悲歌(エレジー)』

 『杖と翼』は、本編が終わってから番外編がぼつぼつと出ている。フランス革命の時代の「逃がし屋」コンビの活躍の物語で、本編のキャラもいくらか登場している。一般論として、本編が終わってもずるずるひきずるのは悪い結果になることがしばしばあるけど、これはまだ悪い目には出ていないと思う。
 本編と同じ「フラワーズ」に1作載って、そのあとなぜか掲載誌が「プリンセスGOLD」になった。ま、歴史ものコスプレもの大好きな私には歓迎だけど。
 それでコミックスはプリンセスCとして出た。
 本誌で読んでいなかった『薔薇に影さす』、

   ネタバレするのでイヤな人はこの先読まないで下さい

 
 リュウ&ファーブルのコンビは、女伯爵ローズ・アフロディトを逃亡させることを依頼され、領地にやってくる。しかしローズはその依頼人の名に心当たりがないと言う。その名のとおり美貌のローズにはよく似た庶出の兄レーヴェがいて、女中と恋仲らしい。身分制度が崩壊しているいまでも結婚できない深い事情が彼にはあった。
 --彼らの秘密とは、ローズ=レーヴェは両性具有の体で、一人二役していることだった。「男装のときは男らしく、女装のときは女らしく、声も性格も変わるのだ 面白かったぞ」
 『リボンの騎士』以来の少女マンガ不滅のテーマ「性別越境」、そのひとつの極みがここにあると言えるかもしれない。
 ローズと恋に落ちた旅の青年は、彼女の秘密を知って衝撃で去っていったが、やはり想いは変わらず、彼女のために香水をつくり、無理がたたって死に、その父親が息子の恋人のために「逃がし屋」に依頼していたのだった。
 一方、レーヴェを慕う女中は、秘密を知って脅すならず者に誤って撃たれる。
 ローズ=レーヴェは、我が身と共に城を爆破させる。
 二人(?)とも、それぞれ、体の秘密を知ったうえで、男として、女として、受け入れてくれる相手がいたということで、なんと幸せなことか。変則的ではありながら、「少女マンガ」の花道をいく傑作である。

 ところでこの話、ドイツ・ロマン派のアイヒェンドルフの『デュランデ城』にけっこう重なる。フランス革命が背景、共に果てるけなげな娘と貴公子、爆破炎上する城。(アイヒェンドルフをマンガ化するなら、華やかでリリカルでノスタルジックということで木原さんがモロにハマるのだ、そもそも。)
コメント (2)
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