『ドイツ「書簡文化」と女性ーーゾフィー・フォン・ラロシュからベッティーナへーー』 渡邉洋子 同学社 3000円+税
18世紀半ばから19世紀半ばは、ドイツの精神文化の最盛期であった。この時代を生きた、作家ゾフィー・フォン・ラロシュ、その娘マクシミリアーネ、そのまた娘ベッティーナの母娘三代を通して、時代の変遷を映し出す本。
18世紀後半、啓蒙主義により市民層が力を持ち、女性にも「教養」を求めるようになってきた。そして、出版サイドでも女性読者たちは無視できないようになる。「自然らしさ」が賞賛される時代の傾向の中で、女性の感性豊かな手紙というものがもてはやされて、多くの女性たちが手紙を書くことに熱中し、そこに自己表現を求めた。そしてラロシュは、書簡体小説で一躍流行作家となったが、まもなく、若いゲーテの『若きウェルテルの悩み』の大ヒットに押されて、ラロシュの影は薄くなってしまう。今日では、ただの通俗作家としてしかほとんどその名の挙がらないラロシュであるが、そこには、単に作品レベルの違いに留まらず、求められる女性像ーー恋するヒロインから、恋され崇拝されるヒロインへーーの変化もまた反映されていたのだった。
時代に妥協しながらでも表現をやめようとしなかったラロシュ、『ウェルテル』のロッテのモデルとなり、その面影を文学史上に少なからず残しながらも一主婦に留まったマクシミリアーネ、ロマン派の一人として積極的に文壇その他で活動したベッティーナ・ブレンターノ。大河ドラマにもなりそうな題材である。
女性史好きの方にもお勧めの本。
18世紀半ばから19世紀半ばは、ドイツの精神文化の最盛期であった。この時代を生きた、作家ゾフィー・フォン・ラロシュ、その娘マクシミリアーネ、そのまた娘ベッティーナの母娘三代を通して、時代の変遷を映し出す本。
18世紀後半、啓蒙主義により市民層が力を持ち、女性にも「教養」を求めるようになってきた。そして、出版サイドでも女性読者たちは無視できないようになる。「自然らしさ」が賞賛される時代の傾向の中で、女性の感性豊かな手紙というものがもてはやされて、多くの女性たちが手紙を書くことに熱中し、そこに自己表現を求めた。そしてラロシュは、書簡体小説で一躍流行作家となったが、まもなく、若いゲーテの『若きウェルテルの悩み』の大ヒットに押されて、ラロシュの影は薄くなってしまう。今日では、ただの通俗作家としてしかほとんどその名の挙がらないラロシュであるが、そこには、単に作品レベルの違いに留まらず、求められる女性像ーー恋するヒロインから、恋され崇拝されるヒロインへーーの変化もまた反映されていたのだった。
時代に妥協しながらでも表現をやめようとしなかったラロシュ、『ウェルテル』のロッテのモデルとなり、その面影を文学史上に少なからず残しながらも一主婦に留まったマクシミリアーネ、ロマン派の一人として積極的に文壇その他で活動したベッティーナ・ブレンターノ。大河ドラマにもなりそうな題材である。
女性史好きの方にもお勧めの本。