Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

9/22(土)シャルパンティエのオペラ『ルイーズ』/珍しい作品の上演は素晴らしい試みだが、作品自体があまり面白くなく・・・

2018年09月22日 23時00分00秒 | 劇場でオペラ鑑賞
東京オペラ・プロデュース 第102回定期公演
オペラ『ルイーズ』全4幕(フランス語上演/日本語字幕付き)


2018年9月22日(土)15:00〜 新国立劇場・中劇場 SS席 1階 10列 55番(最前列)15,000円
指 揮:飯坂 純
管弦楽:東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団
演 出:馬場紀雄
【出演】
ルイーズ:菊地美奈 (ソプラノ)
ジュリアン:高田正人 (テノール)
父:米谷毅彦(バリトン)
母:河野めぐみ(メゾ・ソプラノ)
イルマ:工藤志州(ソプラノ)
カミーユ:辰巳真理恵(ソプラノ)
見習い:八木下 薫(ソプラノ)
エリーズ:坂野由美子(ソプラノ)
スザンヌ:山村晴子(ソプラノ)(ソプラノ)
マドレーヌ:渡邉絵美子(ソプラノ)
ブランシュ/石炭拾い:櫻庭照子(ソプラノ)
マルグリード/掃除屋:丸山奈津美(コントラルト)
ジェルトリュード/監督:勝倉小百合(メゾ・ソプラノ)
朝帰りの男/法王:青地英幸(テノール)
屑 屋:森田 学(バス)
若い屑屋:金井理香(ソプラノ)
新聞売り:森下奈美(ソプラノ)
牛乳屋:川名綾子(ソプラノ)
古着屋:島田道生(テノール)
警 官 1:白井和之(バリトン)
警 官 2:鷲尾裕樹(バス)
歌 手:石塚幹信(テノール)
哲学者 1:望月一平(バリトン)
哲学者 2:笹倉直也 (バリトン)
画 家:奥山晋也 (テノール)
彫刻家:勝俣祐哉 (バリトン)
学 生:斉藤一平 (バリトン)

 東京オペラ・プロデュースの定期公演で、シャルパンティエのオペラ『ルイーズ』の舞台上演。同団体では2007年に原語での日本初演を行っていて、今回は再演となる。
 シャルパンティエ(1860〜1956)はフランスの作曲家で、『ルイーズ』は1896年に完成し、1900年に初演されて以来、フランスでは大成功を収めて人気作品となった。どういう訳か、日本ではほとんど知られてない存在である。音楽的にはロマン派の作品であり、聴きやすい旋律で構成されているが、作品の分野としては、いわゆるヴェリズモ・オペラであり、作曲された当時のパリを舞台に、庶民層のリアルな生活感覚が描かれている。物語は、ヒロインのお針子ルイーズが青年詩人との恋愛を通じて自立し、旧弊な両親の過干渉から逃げ出すというもので、すべてが丸く収まるハッピーエンドにはならない。たくさん出てくる登場人物の多くは労働者階級の働く人々や芸術家を志す若者たちなどで、そこに描かれる人間模様はリアリズムを基調としているものだ。
 フランスでは人気作品だというが、日本においてはそこに描かれているパリの生活感が、どうみても憧れの街パリに映らなかったのだろうか。実際のところ、ストーリーも面白いわけではないし、ダラダラと長い(3時間半〜上演は15時に始まり、2階の休憩〈20分、15分〉を挟んで18時30分くらいに終演となった)。珍しい作品という観点からは楽しめたが、オペラ作品として完成度が高い訳ではなく、面白くない作品だと言えそうだ。
 そもそも、フランスのオペラはグランド・オペラ形式の伝統があって、上演時間が長い。人気があるイタリアのヴェリズモ・オペラの傑作は、マスカーニの『カヴァレリア・スルティカーナ』やレオンカヴァッロの『道化師』、プッチーニの三部作『外套』『修道女アンジェリカ』『ジャンニ・スキッキ』など、いずれも1時間くらいの1幕もので、ヒット曲を伴うものが人気作として歴史を超えて残ることになった。その意味でも『ルイーズ』は、少なくとも、日本ではあまり見るべき点はなさそうな作品だと思われる。一方で、東京オペラ・プロデュースの上演自体は、なかなか高品質であったと思う。

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9/21(金)戸澤采紀ヴァイオリン・リサイタル/強いタッチと常にアグレッシブな姿勢が強い印象を残す

2018年09月21日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
戸澤采紀 ヴァイオリン・リサイタル 2018

2018年9月21日(金)19:00〜 浜離宮朝日ホール 指定席 1階 1列 10番 3,500円
ヴァイオリン:戸澤采紀
ピアノ:丸山晟民
【曲目】
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第18番 ト長調 K.301
ミルシテイン:パガニーニアーナ
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ト長調 作品27-5
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第8番 ト長調 作品30-3
プーランク:ヴァイオリン・ソナタ FP 119
《アンコール》
 シベリウス:ノクターン
 クライスラー:中国の太鼓

 戸澤采紀さんは現在、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校の3年生。2年前の2016年、「第85回 日本音楽コンクール」のバイオリン部門に最年少で優勝した。以来、まだ高校生ということもあって聴く機会がなかった。今回のリサイタルは事実上の本格的なデビューということだろう。思い切った、といいうか、中々挑戦的なプログラムを用意したところをみると、スタンダードな名曲を集めて一般受けを狙っていないことも分かるし、高度な技巧性と幅広い表現力を目指しているように思える。いずれにしても、将来有望な若手の逸材であることは間違いなく、近い将来、ちょっと読みにくい漢字のこの名前が活躍する時代が来るものと思われる。

 演奏は、高校3年生とは思えないくらい、個性的でアクが強いものを目指しているようだ。鋭い立ち上がりを見せる硬質な音色や、豊かな鳴り響く音量と広いダイナミックレンジ。超絶技巧を惜しげもなく披露し、それに裏付けられた音楽を強烈に押し出して来る。音高生の中で一番上手い子、というようなタイプでもレベルでもなく、常にアグレッシブな演奏スタイルは極めて個性的である。ただし、それが先生方に教わった演奏スタイルなのか、個人の才能が生み出したものなのかは、現時点では分からない。彼女の大いなる才能は聴く者の心を揺さぶるチカラを持っているのは確かだが、ややそれが一方通行になっているような印象を得た。あとは好みの問題で、彼女のような演奏を好きになれるかどうかである。私としては、100%好みのタイプというわけでもないのだが、それはそれとして今後も機会があれば聴いて行きたいヴァイオリニストのリストに入れて、注視していきたいと考えている。

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9/17(月・祝)華麗なるコンチェルト/長谷川陽子/鮮やかな音色と華やかな表現で聴衆を魅了/ドヴォコン+協奏曲形式の珍しい曲も

2018年09月17日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
華麗なるコンチェルト・シリーズ 第8回
長谷川陽子《超絶のチェロ、郷愁のチェロ》


2018年9月17日(月・祝)14:00〜 横浜みなとみらいホール S席 1階 C1列 9番 4,875円(セット割引)
チェロ:長谷川陽子
指 揮:永峰大輔
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
【曲目】
モーツァルト:歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲(管弦楽のみ)
パガニーニ:モーゼ幻想曲
ブルッフ:コル・ニドライ 作品47
ポッパー/シュレーゲル編:ハンガリー狂詩曲 作品68
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
《アンコール》
 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番ト長調 BWV 1007より「プレリュード」

 神奈川芸術協会が主催する「華麗なるコンチェルト・シリーズ」の第8回はチェロの長谷川陽子さん。プログラムは、1曲目のモーツァルトの「歌劇『皇帝ティートの慈悲』序曲」のみが管弦楽のみの演奏で、ほかの曲はすべてが、独奏チェロと管弦楽のための曲である。
 パガニーニの「モーゼ幻想曲」は本来はヴァイオリンと管弦楽のための曲だが、チェロ版の人気が高い。歌謡的な旋律の美しさはいかにもイタリア的である。ブルッフの「コル・ニドライ 作品47」は、ドイツ的なロマンティシズムに溢れた曲。ポッパー/シュレーゲル編の「ハンガリー狂詩曲 作品68」は、名チェリストだったポッパーらしく、超絶技巧をふんだんに盛り込んだアクロバティックな曲である。これらの3曲はそれぞれ性格がまったく異なるが、チェロの多様性や柔軟性を存分に発揮田演奏をもたらしてくれた。ドヴォルザークの「チェロ協奏曲 ロ短調 作品104」については説明の必要はないだろう。
 長谷川さんの演奏は、お名前の通り、基本的に陽性で明瞭闊達である。音をストレートに前に向けて出してくるようなイメージで、非常に分かりやすい。音色は、現在使われてい楽器のせいもあろうが、やや鋭角的で硬質な感じがする。立ち上がりが鋭く、エッジも際立っていて、メリハリがハッキリしている印象だ。それでも音楽的に硬く感じさせないのはも陽性な表現力による。リズム感良く、しなやかによく歌う。だから聴いていると気分が高揚してくる。実に素敵なチェリストである。

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9/16(日)森 麻季/ソプラノ・リサイタル/20周年記念のCDリリースに合わせて世界の歌曲の名品を集めて変わらぬ透明感の美声

2018年09月16日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
~愛と平和への祈りをこめて Vol.8~
森 麻季 ソプラノ・リサイタル


2018年9月16日(日)14:00〜 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 1列 15番 5,400円(会員割引)
ソプラノ:森 麻季
ピアノ:山岸茂人
【曲目】
カッチーニ:麗しのアマリッリ
チェスティ:憧れの人の周りに
ヴィヴァルディ:おいで、私の喜びよ
グルック/ズガンバーティ編:メロディ(ビアノ・ソロ)
ロッシ:愛の神よ、私をどこに追いやるのですか
チェスティ:さようなら、コリンド
チャイコフスキー:『四季』作品37bisより 10月「秋の歌」(ビアノ・ソロ)
ドナウディ:おお、愛の美しい住処よ
ドナウディ:ああ、私の愛する人の
ラフマニノフ:ヴォカリーズ
メンデルスゾーン:歌の翼に
シューベルト:夜と夢
シューマン:献呈
ブラームス:『6つの小品』作品118より 第2曲「間奏曲」(ピアノ・ソロ)
アーン:クロリスに
アーン:至福のとき
フォーレ:夢のあとに
プーランク:即興曲 第15番「エディット・ピアフをたたえて」(ピアノ・ソロ)
サティ:ジュ・トゥ・ヴ(あなたが欲しい)
モリコーネ:ネッラ・ファンタジア
伝承曲:アメイジング・グレイス
《アンコール》
 ドニゼッティ:歌劇『シャモニーのリンダ』より「私の心の光」

 今年デビュー20周年を迎えるソプラノ歌手、森 麻季さんのリサイタルを聴く。
 20周年を記念して2枚組のCDアルバム「森 麻季  至福の時〜歌の翼に」がリリースされたばかりで、今回のリサイタルはそのCD発売ともリンクしている。両者に共通なのは、今回はオペラではなく、すべてが欧米(イタリア、ロシア、ドイツ、フランス、他)の歌曲の小品を集めたプログラムになっている。CDには33曲も収められている。得意にしていた日本の歌曲は含まれていない。

 さて、リサイタルは最近の麻季さんの進め方で、曲の紹介(主に歌詞の内容)をしながら1曲ずつ歌っていくという形式だ。トークの声がつぶやくようでマイクを使っているにもかかわらず中々聞き取りにくいのもいつもの通り。これは歌唱のために喉を大切にしているからだろう。歌唱は相変わらず美しい声。幾つになっても(失礼)天使のように清らかな声質は、他の追随を許さないと思う。透明感があり清らかで優しい。繊細な表現力、つまり歌唱力は幅広く豊かだし、もちろん技巧的にも素晴らしい。声量があまり大きい方ではないことを理由に、声楽家あるいはオペラ歌手としての麻季さんをあまりよく評価しない音楽通の人がいるが、それは明らかに間違いだ。声量という数値化できる値でしか音楽芸術を評価できないのはナンセンス。今日のような歌曲を集めたリサイタルを聴けば分かることでもある。オペラであってもすべての役柄で大きな声量を求められるわけではないし、声質はもとより歌唱力、技巧、演技力、容姿などの総合力により評価されるべき。麻季さんはどの方向から見ても素晴らしい声楽家であり、オペラ歌手であることは間違いない。

 なお、非常に珍しいことに、本日は終演後に麻季さんのサイン会があった。新譜CD発売記念ということだが、デビュー20周年のうち、15年くらいは麻季さんのリサイタルやオペラを聴いて来たが、サイン会は初めてだ。というわけで、ものすごい長蛇の列ができるのも必至であった。私ももちろんCDを購入して列に並び、ジャケットにサインをしていただいた。・・・・次はいつになるか分からないから、貴重なサインということで、大切に保管しておこう。

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【お勧めCDのご紹介】
 もちろん、森麻季さんにニューアルバムをご紹介します。2枚組で、本日の曲目のすべて(アンコールを除く)を含んだ33曲が収録されています。ビアノ伴奏は山岸茂人さん。2018年9月12日のリリース。
至福の時~歌の翼に(SACD-Hybrid 2枚組)
avex CLASSICS
avex CLASSICS



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9/15(土)読響土曜マチネー/イオニーツァの「ロココ風〜」は切れ味の鋭い若々しさ/カンブルランのチャイコ4番は極彩色でフランス風?

2018年09月15日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第209回土曜マチネーシリーズ

2018年9月15日(土)14:00〜 東京芸術劇場コンサートホール S席 1階 A列 16番 5,150円(会員割引)
指 揮:シルヴァン・カンブルラン
チェロ:アンドレイ・イオニーツァ*
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:小森谷 巧
【曲目】
チャイコフスキー:幻想序曲「テンペスト」 作品18
チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲 イ長調 作品33*
《アンコール》
 ツィンツァーゼ:チョングリ*
チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

 読売日本交響楽団の「第209回土曜マチネーシリーズ」を聴く。今日のお目当ては、2015年のチャイコフスキー国際コンクールのチェロ部門で優勝したアンドレイ・イオニーツァさんの登場だ。また、長らく読響の常任指揮者を務めてきたシルヴァン・カンブルランは来年2019年3月末で退任することが決まっているので、今後は聴く機会はあまりないかもしれない。

 イオニーツァさんの弾くチャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」は、まず音色が明るくとても明瞭でスッキリしている。明るく艶やかな音色で旋律を大らかに歌わせる。もともとこの曲はオーケストラ側が非常に大人しく書かれていて、音量も抑えられているので、独奏チェロが浮き上がるような造型になっている。その辺りもうまく利用して、全体に大きめの音量で独奏チェロが主張していく。馬力をかけた強奏の際には、多少荒っぽくなってもお構いなしにガリガリ音を押し出して来るし、弱音時も意外に大きな音を出していて、この分なら後方席まで音は通っていくだろう。協奏曲の演奏の方法としては的を射た表現手法で派手なパフォーマンスだけでなく小技も上手い人のようである。

 一方、後半のチャイコフスキーの「交響曲 第4番」は、予想していた通りのとても色彩感の豊かな演奏になった。カンブルランさんが振ると、確かに読響の音がカラフルになる。リズム系が明瞭であるため、旋律が歌うようなイメージは少なく、舞踏系といった感じ。その上に鮮やかな色彩が乗ってくるのである。「交響曲 第4番」は金管が派手に大活躍する。だから全体のイメージはまるでカーニバルのよう。読響の演奏自体は非常にシッカリしているので、カンブルラン節にうまく対応している。残念ながら、チャイコフスキーの持つ哀愁やロマン性、ロシア音楽に共通する土俗的な生命力(失礼)のようなものは感じられず、カーニバルではしゃぎまくっているような印象の演奏であった。

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9/13(木)ロシア国立交響楽団/西本智実/豪放で抒情的ロシアン・サウンドでチャイコフスキーの交響曲第5番・第6番「悲愴」

2018年09月13日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
スヴェトラーノフ記念 ロシア国立交響楽団 来日公演2018
The State Academic Symphony Orchestra of Russia "Evgeny Svetlanov" Japan Tour 2018


2018年9月13日(木)19:00〜 サントリーホール S席 2階 LB2列 8番 12,000円
指 揮:西本智実
管弦楽:ロシア国立交響楽団
【曲目】
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
《アンコール》
 チャイコフスキー:バレエ音楽『白鳥の湖』より「マズルカ」

 1936年に設立されたロシアの名門オーケストラ、「スヴェトラーノフ記念 ロシア国立交響楽団」が来日ツアーを行った。全国で14公演を行う。このオーケストラは、かつてはソヴィエト国立交響楽団と呼ばれていたもので、エフゲニー・スヴェトラーノフが音楽監督を務めていた時期に世界に名だたるオーケストラへと変貌を遂げた。そのため「スヴェトラーノフ交響楽団」などと呼ばれることもある。ロシアのオーケストラの名称は似たようなものがあり、日本語への翻訳のしにくさもあるようで、紛らわしくなっている。昨年2017年11月に来日して私も聴きに行った「ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》」とは別団体である。
 今回の来日ツアーには指揮者は2名同行しているが、本日は2010〜2011年のシーズンに首席客演指揮者を務めたことがある西本智実さんである。ロシアに留学した後、ロシアを中心としたヨーロッパ各国で指揮者として幅広く活躍しているのはご存じの通り。日本でも2012年から日本フィルハーモニー交響楽団のミュージック・パートナーというポストに就き、年に一度は日本フィルを振っている。他にも、彼女のために作られたイルミナートフィルハーモニーオーケストラの芸術監督兼首席指揮者に就任し、定期的に公演を行っている。録音(CD)や映像素材(DVD)も多く、テレビ番組やCMにも出演したりして、活躍の幅は広い。本日のサントリーホールの公演では、得意のチャイコフスキーを振るということだったので、久し振りにロシアのオーケストラと西本さんの組み合わせで聴いてみたくなった。
 西本さんはその経歴を見ると分かるように、ロシアやヨーロッパで15年間以上にわたって数多くのオーケストラに招聘されている事実から見ても、海外での評価は高いようである。一方で日本国内においてはやや変わったポジションに受け入れられているようである。ヨーロッパ各地のオーケストラの来日公演に指揮者として同行するケースが多く、クラシック音楽業界ではかなり良い仕事をし続けているのだが、クラヲタ系の人たちにはあまり評判は良くないようである。私も10年以上前に聴いた時は、とくに感銘も受けなかったのだが、先日(2018年7月14日)、日本フィルの「横浜定期演奏会」で聴いたラフマニノフはけっこう良かった。ヨーロッパの第一線で15年間もキャリアを重ねているのには、やはりそれなりの実力は備わっているはず。だから、今日も期待して来たというわけだ。

 ところで西本さんは、誰もが認めることだと思うが、美人女性指揮者である。しかも日本から世界に飛び出して国際的に活躍しているし、テレビ等のマスコミにも採り上げられることが多いので、一般的な知名度が高く、とても人気がある。やっていることは純然たるクラシック音楽の正統派の指揮なのであるから、男性ファンが多いのかと思えば、それがまったくの逆。日本フィルの時もそうだったが、今回のロシア国立交響楽団のコンサートでも、圧倒的に女性ファンが多く来場している。いつものオーケストラのコンサートとは全然違う男女比なのである。2階席から見るとホールの全体が見渡せるのでよく分かるのだが、1階のセンターブロック前方はほとんど着飾った中高年の女性客が座っている。P席にはオペラグラスを持った女性客の姿も見られる。西本さんの「男装の麗人」風のタカラヅカ的な容姿に惹かれるのは分かるが、どうもいつも見かけられるクラシック音楽ファンとは雰囲気の異なる女性達が多く集まっている。だからといって、マナーを守って聴いているだけなので、何も問題はないのではあるが・・・・。いつものクラシック音楽ファン(還暦過ぎの男性が圧倒的に多い)が少なく、知った顔ぶれの人たちがまったく見かけられないというのも不思議な現象なのである。

 さて肝心の演奏の方について。ロシアのオーケストラといえば、荒々しく野性的で馬力があるという面と、甘美なロマンティシズムが共存としているようなイメージがあるが、このロシア国立交響楽団もご多分にもれず、そんな雰囲気が漂っている。演奏はあまり緻密とはいえず、荒々しいというか、雑なところもあるようだ。弦楽のアンサンブルは強奏の際はガシガシと荒い音を出すが、金管にも負けない馬力はある。木管や金管は縦の線が合わずに、フレーズのアタマがバタバタしたりもする。アンサンブルは今ひとつだが、それぞれのパートはなかなか味わいがある。質感も良いし音量も豊かに堂々と鳴らせる。こういったところは、長い伝統も手伝っているところかもしれない。打楽器はかなり思い切って打ち鳴らしている。ティンパニや太鼓が地響きのように轟くと、いかにもロシアのオーケストラといった風情があって良い。オーケストラの演奏は85点といったところだろう。
 一方、西本さんの指揮はねちっこい。今回のチャイコフスキーの交響曲第5番と第6番「悲愴」は、指揮棒を持たず、両手を巧みに動かして、オーケストラに細やかなニュアンスを伝えている。そこでは、常に旋律を大きく歌わせている。数小節単位のフレージングをレガートを効かせて丸く膨らませる。強弱のコントラストも鮮やかに描き出しているし、全合奏は迫力ある押し出しが見事だし、甘美なロマンティシズムはねちっこく美しい。このような西本さんの音楽の描き方は、そのロシア的なサウンドの中から荒々しさを取り除き、しなやかで繊細な面を引き出していた。余計な先入観を取り除いて考えれば、普通に聴きやすく美しいチャイコフスキーであったといえそうだ。私が期待していたものとはちょっと違っていたようだが、これはこれで素敵な演奏だったのだと思う。

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9/8(土)東京フィル/響きの森/オール・ベートーヴェン・プロ/吉田 南、渾身のVn協奏曲/コバケンの交響曲第7番は20世紀の巨匠風

2018年09月08日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団 響きの森クラシック・シリーズ Vol.65
フレッシュ名曲コンサート

2018年9月8日(土)15:00〜 文京シビックホール A席 1階 2列 23番 3,700円(セット券割引)
指揮:小林研一郎
ヴァイオリン:吉田 南*
管弦楽:東京フィルハーモニー管弦楽団
【曲目】
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品65*
《アンコール》
 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 作品27-1より第3楽章
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92
《アンコール》
 アイルランド民謡:ダニーボーイ

 東京フィルハーモニー交響楽団が文京シビックホールで開催する「響きの森クラシック・シリーズ」の Vol.65を聴く。このシリーズは東京都文京区と公益財団法人文京アカデミーの主催だが、今回は公益財団法人東京都歴史文化財団(東京文化会館)との共催で「フレッシュ名曲コンサート」シリーズを兼ねる。そのため、ゲスト出演する若手の演奏家は、ヴァイオリンの吉田 南さん。奈良県出身で現在20歳。2014年の「第83回日本音楽コンクール」で優勝、2016年の「モントリオール国際音楽コンクール」で最年少参加で第3位に入賞するなど、期待の若手のひとりである。

 吉田さんの演奏を聴くのは「日本音楽コンクール」の時以来だか、この4年間の成長は著しい。荒削りのところがなくなり、丁寧で緻密な構成力を持ちつつ、スケール感が大幅にアップして、実に堂々たる演奏になっていた。音の線が太く、ひ弱さがなくて質感も濃厚に感じられる。音量も豊かで、押し出しも強い。なかなか見事な演奏だ。
 おそらくはコバケンさんが指揮する時の常で、テンポは遅め。しかもフレージングの合間にタメが入る重厚な造形だ。ちょっともどかしく感じるテンポ感なので、ソリストとしてははやる気持ちを抑えながらの演奏になるのではないかと、いらぬ心配をしてしまうところだ。もっともテンポが遅い分だけ、吉田さんのヴァイオリンはひとつひとつの音符にしっかりと音が乗っていて、造形がハッキリとしているし、大きな主題も雄大に歌わせることができていた。全体が大らかで力強い印象もある。要するに押し出しが強いのである。一方、カデンツァではテンポ感が少し速めになり勢いと疾走感が生まれる。速いパッセージ部分では安定した技巧性を発揮していたし、濃厚なサウンドでスケールの大きなソロを聴かせてくれた。
 アンコールはイザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番」より第3楽章。たっぷりと聴かせることのできる豊かな表現力を持ち、濃厚なサウンドと美しい重音とレガートが印象に残る。思いの外、大人っぽい演奏をするのでビックリした。吉田さんの弾くイザイをもっと聴いてみたくなった。

 後半はベートーヴェンの「交響曲 第7番」。コバケンさんの音楽は、最近特に感じるのだが、テンポが遅い。「リズムの権化」とも呼ばれるこの曲に対して、テンポが遅めだとリズム感のノリが悪くなってしまい、聴いていてもいささかダルイ感じがする。第1楽章などは、序奏も遅めで、堂々たる佇まいを見せているといえばその通りだが、鈍重な感は否めない。ソナタ形式の本体に入っても、遅めのままで、これはさすがにVivaceとはいえないのではないか? 逆にこの遅さの中であればこそシンフォニックな響きはしっかりとした造形を持っている。東京フィルも手慣れたもので、濃厚で質感もたっぷりのサウンドを轟かせていた。
 ただ、やはり言えることは、この曲は遅めのテンポで、フレーズの間にタメを入れたりすると、リズム感がおかしくなってしまい、独特の熱狂的な雰囲気が出なくなってしまう。私の個人的な好みとしては、高揚するリズムと熱狂的なエネルギーが欲しいので、許売るコバケンさんの指揮はまったくいただけない。また好みは別としても、最近の趨勢とてもこの曲の解釈はもっと速いのが一般的で、前のめり気味のリズム感で疾走するように、熱狂するようにエネルギーを発散させていくのが主流だと思う。コバケンさんの演奏を聴いていると、どうしても20世紀後半の巨匠たち時代の音楽を思い出してしまうのである。

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9/7(金)東京二期会/プッチーニ《三部作》/『外套』『修道女アンジェリカ』『ジャンニ・スキッキ』

2018年09月07日 23時00分00秒 | 劇場でオペラ鑑賞
東京二期会オペラ劇場 《デンマーク王立歌劇場&アン・デア・ウィーン劇場との共同制作》
プッチーニ《三部作》『外套』『修道女アンジェリカ』『ジャンニ・スキッキ』
(日本語字幕付き原語(イタリア語)上演)

2018年9月7日(金)14:00〜 新国立劇場オペラパレス D席 4階 R1列3番 5,000円
指 揮: ベルトラン・ド・ビリー
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
合 唱:二期会合唱団、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部
合唱指揮: 冨平恭平
演 出: ダミアーノ・ミキエレット
演出補: エレオノーラ・グラヴァニョーラ
装 置: パオロ・ファンティン
衣 裳: カルラ・テーティ
照 明: アレッサンドロ・カルレッティ
合唱指揮: 冨平恭平
演出助手: 菊池裕美子
舞台監督: 村田健輔
公演監督: 牧川修一
公演監督補: 大野徹也

【出演】
『外套』
ミケーレ:今井俊輔(バリトン)
ジョルジェッタ:文屋小百合(ソプラノ)
ルイージ:芹澤佳通(テノール)
フルーゴラ:小林紗季子(メゾ・ソプラノ)
タルパ:北川辰彦(バス・バリトン)
ティンカ:新津耕平(テノール)
恋人たち:舟橋千尋(ソプラノ)
     前川健生(テノール)
流しの唄うたい:西岡慎介(テノール)

『修道女アンジェリカ』
アンジェリカ:文屋小百合(ソプラノ)
公爵夫人:与田朝子(メゾ・ソプラノ)
修道院長:小林紗季子(メゾ・ソプラノ)
修道女長:石井 藍(アルト)
修練女長:郷家暁子(メゾ・ソプラノ)
ジェノヴィエッファ:舟橋千尋(ソプラノ)
看護係修道女:福間章子(メゾ・ソプラノ)
修練女 オスミーナ:髙品綾野(ソプラノ)
労働修道女Ⅰ、ドルチーナ:高橋希絵(ソプラノ)
托鉢係修道女Ⅰ:鈴木麻里子(ソプラノ)
托鉢係修道女Ⅱ:小出理恵(ソプラノ)
労働修道女Ⅱ:中川香里(メゾ・ソプラノ)

『ジャンニ・スキッキ』
ジャンニ・スキッキ:今井俊輔(バリトン)
ラウレッタ:舟橋千尋
ツィータ:与田朝子
リヌッチョ:前川健生(テノール)
ゲラルド:新津耕平(テノール)
ネッラ:鈴木麻里子
ベット:原田 圭(バリトン)
シモーネ:北川辰彦(バス・バリトン)
マルコ:小林啓倫(バリトン)
チェスカ:小林紗季子
スピネロッチョ:後藤春馬(バス・バリトン)
公証人アマンティオ:岩田健志(バリトン)
ピネッリーノ:髙田智士(バリトン)
グッチョ:岸本 大(バス・バリトン)

 東京二期会のオペラ公演で、今回はプッチーニの最後のオペラ作品《三部作》の舞台上演である。《三部作》は、完成されたものとしてはプッチーニの最後の作品で、ちょうど100年前の1918年、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で初演されている(その次の作品『トゥーランドット』は未完)。《三部作》とは、『外套』、『修道女アンジェリカ』、そして『ジャンニ・スキッキ』の3作品のことで、これらはすべて1時間くらいの1幕ものである。基本的には、3作を同時に上演することになっている。
 『外套』と『修道女アンジェリカ』は当時流行していたヴェリズモ・オペラに属するシリアスな作品で、『外套』では人が殺され、『修道女アンジェリカ』は女性だけのオペラ。『ジャンニ・スキッキ』はドタバタ喜劇で、ラウレッタのアリア「私のお父さん」はあまりにも有名で、ソプラノ歌手のリサイタルの定番曲(アンコールで歌われることも多い)だ。《三部作》の一挙上演はかなり大作業になるのであまり上演機会は多くないのが実状だ。というのも、上記の出演者の一覧を見れば分かるように、わずか1時間の1幕オペラなのに、各作品ともやたらと沢山の登場人物がある。これらを1人1役にするとかなりの人数の歌手が必要となるので、同じ歌手が3作品に掛け持ちで出演する、そういう仕組みになっているのである。今回も東京二期会ならではの豪華な歌手が揃い踏みとなった。

 プロダクションは、デンマーク王立歌劇場およびアン・デア・ウィーン劇場との共同制作ということで、ダミアーノ・ミキエレット さんという人の演出。現代的で無駄がなく、また適度に読み替えなとも交えて、センスの良い演出になっていたと思う。それぞれが丁寧に作り込まれているだけでなく、全く異なる性質の3作品に演出上の連続性を持たせて、《三部作》としてのまとまりも創り上げている。何しろ3作品もあり、細かく書いていくとキリがないので、詳細は割愛させていただく。

 今回は会場が新国立劇場のオペラパレスであった。予算の都合で最安のD席にしたのだが、それでも少しでも音の良いところをと思い、4階の右側バルコニーのR1列を取った。4階とは言っても3階のセンター席と同レベルの高さにある。ここはステージには最も近く1列だけある席で、オーケストラピットを真上横側から見下ろすような位置になるが、座席が真横を向いているため、背もたれに背中を付けてキチンと座ると、ステージはほぼ、見えない。だから身体を乗り出して見ざるを得ないのであった。オーケストラの真上なので、音の響きはとても良い。一方、歌手の歌唱には指向性があるため、あまりよく聞こえなかったのも確かだ。まあ、最安席にしては上出来の席だと思う。

 プッチーニの《三部作》は上演機会もあまりないので、この機会に観ておかないと、という思いで鑑賞することにしたのだが、ダブルキャストが組まれていたのでどちらの組を選ぶかという際に決め手となったのは、この日が平日の昼公演で値段が少々安かったからではない(もっともD席は同じであったが)。実は、今年2018年1月25日にHakuju Hallで開催された「二期会モーニング・ ディーヴァ」を聴いたのだが、それは二期会のオペラ研修所を優秀な成績で修了したソプラノの高品綾野さんとメゾ・ソプラノの中川香里さんのデュオ・リサイタルであった。そのお二人が、今回の『修道女アンジェリカ』で二期会のオペラにデビューを飾ったのである。とくに知り合いというわけではないが、リサイタルの際に少しお話しする機会があったので、何となく「縁」のようなものを感じて、せっかく《三部作》を観るのだから、お二人のデビューをこの目で確認しようと思った次第。それでこの組の公演を観ることにしたのである。実際には歌う場面の少ない役柄ではあったが、むしろステージ上で演技している時間の方が長かったくらい。コチラとしては残念な限りだった。何しろ二期会は会員が多いから、スターダムにのし上がっていくのは大変な事だとは思うが、お二人とも才能はあるし容姿も素敵なので、応援していきたいと思う。次回作はいつになるのだろうか。

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9/3(月)ロイヤル・ストックホルム・フィル/サカリ・オラモが放つスタンダードな「運命」と「巨人」

2018年09月03日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
日本/スウェーデン外交関係樹立150周年記念
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
特別演奏会 II 《オーケストラの醍醐味》


2018年9月3日(月)19:00〜 サントリーホール S席 1階 3列 18番 18,000円
指 揮:サカリ・オラモ
管弦楽:ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
【曲目】
ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」
マーラー:交響曲 第1番 ニ短調「巨人」
《アンコール》
 アルヴェーン:羊飼いの娘の踊り

 ちょっとした偶然で、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演を聴けることになった。元々はまったく行くつもりはなかったのだが、知り合いが行けなくなった人のチケットを安価で融通してくれたのである。席も、私のいつも聴く位置の範囲内なので、好都合であった。曲目も「運命」と「巨人」なら問題はない。

 とはいっても、元々行くつもりがなかったと言うことは、あまり期待していなかったということであり、その意味では想定内の結果であった。
 ベートーヴェンの「運命」は、やや遅めのインテンポで、どちらかといえば表情に乏しい。つまり特徴がないのである。中学校の音楽の授業でレコードを聴かされているような、標準的で一般的な解釈の、普通の演奏とでもいうか、指揮者が誰々で、オーケストラが○○で、というような個性が感じられない。まさしく教科書的な演奏だと感じた。今どき、この手の演奏をわざわざ海外から来てもらって聴くには及ばないと思う。
 マーラーの「巨人」についても同様である。スウェーデンのオーケストラに相応しく、音は澄んでいてとてもキレイだし、上品でちょっと気取っている。真面目で、派手なパフォーマンスもない。演奏もそこそこ上手い。・・・・・だからマーラーの持つ内的な葛藤や苦悩が伝わってこないのである。旋律が、和声が、とても素直に音になって流れてくるだけで、作曲家が楽曲に込めた思いがぜんぜん感じられないのであった。

 結局のところ、何故辛口になってしまったのかというと、18,000円を費やして聴くべき価値のある演奏とは思えなかったからだ。いくら名の通った名門だとはいえ、外来のオーケストラなら何でもかんでも良い演奏を聴かせてくれるわけではない。もちろんその評価をするには、実際に聴いてみるしかないのだが・・・・。今回は9,000円ならOKだけれど18,000ではNGといったレベルのコンサートであった。

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8/30(木)読響名曲シリーズ/小山実稚恵のショパンP協奏曲1番/ストルゴーズ渾身のタクトでシベリウスの交響曲第2番を爆演!

2018年08月30日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第614回 名曲シリーズ

2018年8月30日(木)19:00〜 サントリーホール S席 1階 3列 20番 5,290円(会員割引)
指 揮:ヨーン・ストルゴーズ
ピアノ:小山 実稚恵*
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:景山昌太郎(ゲスト)
【曲目】
アレッサンドレスク:秋の黄昏時
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11*
《アンコール》
 ショパン:ワルツ 第19番 イ短調 遺作*
シベリウス:交響曲 第2番 ニ長調 作品43

 読売日本交響楽団の「第614回 名曲シリーズ」を聴く。5日前、8月25日の同団の「土曜マチネーシリーズ」で、フィンランド出身のヨーン・ストルゴーズさんがなかなか素晴らしいシベリウスを聴かせてくれたので、本日の「交響曲第2番」に期待大で臨む。

 1曲目はアレッサンドレスクの「秋の黄昏時」という曲。アレッサンドレスクは20世は前半のルーマニアの作曲家で、名前を聞くのも初めてだった。楽曲は単一楽章の弦楽合奏曲で、アンダンテ・カンタービレである。いわゆる現代音楽ではなく、美しい旋律と和声に包まれた穏やかな曲想である。読響の弦楽はちょっと荒削りなところがあるが、今日の演奏はしっとりとした美しさが際立つ素敵な演奏だった。

 2曲目は、ショパンの「ピアノ協奏曲 第1番」。ゲストのソリストは小山実稚恵さん。ベテランで相変わらずの人気者で、支持者は多い。しかし、今日の演奏はいささか雑な印象が強かった。第1楽章のピアノが入って来るところから、どこか和音が濁っているような、全体に繊細さが乏しい感じがする。演奏全体にしなやかさがなく、ドタバタしている印象で、オーケストラとの親和性も感じられなかった。ただし、ファンの方々は喝采していたし、普通に聴いている分にはこれでも良いのかもしれないが、読響の「名曲シリーズ」で、フィンランドの指揮者と、ショパンと小山さんの組み合わせの趣旨がよく分からない。名曲西違いないのだけれども・・・。

 後半は、シベリウスの「交響曲 第2番」。コチラの方は、とても分かりやすく、さすがお国もの、という感じである。解釈は重厚で、大陸的なスケール感いっぱいの豪快な演奏であった。どこまでも透明な水と空気が続き、豪快にオーケストラが鳴っているのにも関わらず、森閑とした森と湖の自然が目に浮かぶ。その静謐とした空気感の中に、熱いマグマが地下に蠢いていて、地上に噴出する機会を窺っている・・・・。冷たさと熱さが共存するシベリウスの世界観が描き出されていく。
 ストルゴーズさんは短期間で読響の特質を掴み取り、本領を発揮するような見事なオーケストラ・ドライブを見せた。金管は十分な音量で質感高く咆哮する。ホルンは熱っぽく、トランペットは高らかに、トロンボーンは地鳴りのように。木管は空気感を描き出す。フルートはそよぐ風、オーボエは小鳥のさえずり、クラリネットは木々の揺らめき、ファゴットは森の精のつぶやき。弦楽はヴァイオリンの透明なアンサンブルと、低弦のゴツゴツした響き。
 全体のダイナミックレンジは広く、静寂のイメージから雄大な自然の表現まで、美しく、そして豪快に鳴り響くのは、読響ならではである。全合奏の大音量になっても、各パートの音が聞こえるし、とくに弦楽に金管や打楽器に負けない力感があるところが良い。第3楽章終盤から第4楽章に連なる高揚感はこの曲の最大の聴き所になるが、厳しい自然と強大な敵のような巨大な山脈を超えた途端に一気に視界が開け、地平線まで続く明るい春の平野の眺望が視界に飛び込んでくる。「交響曲第2番」はあくまで純音楽なのだけれども、他のどの作曲家よりもシベリウスは「視覚」と「情念」に同時に訴えてくるチカラを持っていると思う。今日の演奏は、頭の中にフィンランドの自然とシベリウスの精神世界が見事に投射されて来た。素晴らしい演奏であった。

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