Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

10/28(日)【速報】第87回日本音楽コンクール本選会《バイオリン部門》優勝:荒井里桜、 2位:佐々木つくし、3位:福田麻子、 入選:関 朋岳という結果に

2018年10月28日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
第87回 日本音楽コンクール 本選会《バイオリン部門》
THE 87th MUSIC COMPETITION OF JAPAN "VIOLIN"


2018年10月28日(日)15:00~ 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 4列(2列目)15番 3,150円(会員割引)
指 揮:高関 健
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 昨日に引き続き、「第87回 日本音楽コンクール 本選会《バイオリン部門》」を聴く。最近は毎年聴いているが、このところ高校生の優勝が続いており、コンクール年代も若年化が進んでいるように感じられていた。今年はどうなるかと興味津々であった。今年のバイオリン部門には110名の応募があり、棄権3名を除く107名が第1予選(8月27日〜29日/トッパンホール)に参加、内31名が通過した。第2予選(8月30日・31日/トッパンホール)を通過したのは12名。第3予選(9月1日/トッパンホール)で本選に進む4名が選出された。4名の内3名は大学生、高校生は1名である。
 今日の席は昨日とほとんど同じ、2列目のセンターである。あとひとつかふたつ左寄りだとソリストの正面になるのだが、バイオリン部門の本選会ではソリストの正面位置にNHKのテレビ・カメラが設置されるため1〜2列目のその位置の席は販売されていなかった。
 さてこの聴く席の位置については色々な考え方もあろうが、ことヴァイオリン協奏曲に関してはソリストに近い方が良いと考えている。演奏者のナマの音を最も近い位置で聴けるので、微妙な音色の変化や細やかなニュアンスの表現もハッキリと聴き取れるし、弦の振動するエネルギーもリアルに伝わって来るからだ。いつも気になっていることだが、2階センターの審査員席はステージからかなり遠く、しかも響きの良い東京オペラシティコンサートホールでは、独奏ヴァイオリンとオーケストラの音が渾然一体になってしまい、奏者の意志がどれくらい伝わるものなのか。心配してしまう。もちろん、通常のコンサートでも2階のセンターはS席機になるので、そこでの聞こえ方で評価すべきという考え方もある。正解はないことだと思うが・・・・。
 それでは、演奏順に簡単にレビューしてみよう。

●荒井里桜(あらいりお/1999年生まれ/東京藝術大学2年在学中)
【曲目】ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
 荒井さんは昨年2017年の「第15回 東京音楽コンクール・弦楽部門」で優勝している。その時の本選会でチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」と、今年の1月に開催された「第15回 東京音楽コンクール 優勝者コンサート」でメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」を聴いている。いずれもヴァイオリン協奏曲の名曲中の名曲であったが、コンクールでのチャイコフスキーでは押し出しの強い演奏をし、コンサートでのメンデルスゾーンは端正な演奏をしていたと記憶している。今日はコンクールなので・・・やはり前者のタイプの演奏になっていた。
 第1楽章、主題提示の後ヴァイオリンが入って来るところからガツンとしたインパクトを放つ。立ち上がりの鋭いボウイングで、くっきり明瞭な音を出し、おそらくは音量を出すためにかなり強く弾いている(第1楽章が終わったところでチューニングし直しているくらい)。そのため、ひとつひとつの音が明瞭で、しかもキレが良い。明らかにコンクール用の演奏スタイルだ。遠くの審査員席まで、思いを届けたい、という意志の強さが感じられる。それでいて、旋律には豊かにニュアンスが込められていてよく歌っている。それは第2楽章に現れていて、静かでロマンティックな主題を自由度も高くたっぷりと歌わせながら、結構音量も出している。この辺りはかなり心得ている感じ。第3楽章は再びインパクトの強い演奏でグイグイと押し出して来る。リズム感も良いが、自由度も高く、オーケストラと合わなくなるところも散見されたが、自身の強い意志で前へ前へと進んでいく。オーケストラに迎合せず小さくまとまらないその姿勢が素晴らしい。協奏曲の魅力をよく分かっているようだ。

●福田麻子(ふくだあさこ/1996年生まれ/東京音楽大学4年・特別奨学生として在学中)
【曲目】バルトーク:ヴァイオリン協奏曲 第2番
 福田さんは選曲がマニアックというか、評価の難しい曲を選んでしまったような気がする。審査員の先生方は専門家だから良いが、私などはこれだけオーケストラのコンサートを聴いていても、バルトークの「ヴァイオリン協奏曲 第2番」を聴く機会はほとんどない。つまり曲自体をよく知らないわけで・・・・。その前提でのお話になるが、福田さんの演奏はなかなか素晴らしい。まず音が柔らかく艶やかで、低音から高音まで均質に安定している。この曲は旋律がどちらへ進んでいくのか分からないような不思議な曲想で、様々に変化する旋律やリズムに対して、安定した音で演奏するというのは高度な技術だと思う。均質な音質で演奏すればこそ、楽曲自体の多様性、多彩な造型を鮮やかに表現出来るのではないだろうか。

●関 朋岳(せきともたか/1998年生まれ/東京音楽大学2年・特別奨学生として在学中)
【曲目】ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
 関さんは、今年2018年の「第16回 東京音楽コンクール・弦楽部門」の優勝者。つい2ヶ月前のことだ。このわずかな期間に日本のメジャー音楽コンクールに連続してファイナリストになるということは、実力はもちろんのことだが、調子も良く、乗っているということだろう。
 奇しくも、同じ「東京音コン」の優勝者である荒井さんと同じ曲目となった。関さんの演奏は、前回の時も感じたのだが、ちょっとクセがある。深みのある表現を追い求めているようで、ダイナミックレンジが広い。弱音の繊細さから、強音のキーンと張り詰めた感じまで、音量の幅が広いのである。そのため、弱音時にはオーケストラに飲み込まれてしまってよく聞こえない。また、装飾的な速いパッセージで急に音量が下がってしまう。これは2列目の正面で聴いていてもそうなのだから、遠い2階の審査員席までは届かないのではないだろうか。表現力は豊かだと思うのだが、それが聴く側に伝わらなければ、非常にもったいない。
 また、音質が硬質で尖っている印象で、個人的な好みでいうと、聴いていても心にグサグサ刺さってくる感じで、あまり心地よくない。

●佐々木つくし(ささきつくし/2000年生まれ/東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校3年在学中)
【曲目】チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
 佐々木さんは今回のファイナリストの中でただ一人の高校生。しかし、驚くべきほど雄弁で鮮やかなチャイコフスキーを披露してくれた。教科書的なレベルを超えて、この曲のスタンダードの理想像に近い演奏ではなかっただろうか。速めのテンポでも揺るぎない技巧を持ち、丸みを帯びた艶やかな音色で、聴く者の心を共鳴させる。旋律は細やかに歌わせていて、瞬間瞬間に鮮やかな音楽性を見せ、全体の造型もシッカリしているので、聴いていて安心感もあり、ここぞというところで感動的な爆発を見せる。何より良いのは、「弾ける」「弾かされている」感がなく、この名曲を完全にモノにしていることだ。今これだけの演奏が出来るのだから、将来が楽しみな逸材だと思う。

 さて、4名の演奏を聴いた上での感想は、今回は4名とも甲乙つけがたく、誰が優勝してもおかしくないし、おそらくは評価点は僅差ではないかと・・・そんな風に感じた。それでも、個人的な好みで順位を付けてみたりもしたのだが、ピアノと違って、ヴァイオリンはほぼ的中。ただ、何となく感じたのは、「東京音楽コンクール」と「日本音楽コンクール」では評価の基準が違うのではないかということ。まあ、主催者が違うのだから当たり前のことではあるが・・・・。
 というわけで、最終結果は以下の通りとなった。

《第87回日本音楽コンクール バイオリン部門本選結果》
  1位  荒井里桜(画像)
  2位  佐々木つくし
  3位  福田麻子
  入選 関 朋岳
  ※岩谷賞(聴衆賞)佐々木つくし


 最後にひとつ付け加えておきたい。本日の本選会でのオーケストラの演奏についてだが、高関 健さんの指揮が実に素晴らしく、教育者でもあるわけで、ソリストを見つめ、彼らに寄り添うように真剣な眼差しでオーケストラをコントロールしていたのが印象的だった。高関さんは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の常任指揮者でもあるので、オーケストラ・ドライブも見事なもので、どの演奏も素晴らしかった。ファイナリストの4名も、この指揮者&オーケストラと共演できたことだけでも、大変有意義で幸せなことだったと思われる。

※筆者注:本文中、「バイオリン」と「ヴァイオリン」の表記が混在していますが、「日本音楽コンクール」で使用されている正式名称が「バイオリン部門」となっており、名称を記載する箇所だけは「バイオリン」表記を採用しました。

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10/27(土)【速報】第87回日本音楽コンクール本選会《ピアノ部門》優勝:小井土文哉、 2位:竹澤勇人、3位:尼子裕貴、 入選:望月 晶という結果に

2018年10月27日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
第87回 日本音楽コンクール 本選会《ピアノ部門》
THE 87th MUSIC COMPETITION OF JAPAN "PIANO
"

2018年10月27日(土)16:00~ 東京オペラシティコンサートホール S席 1階 4列(2列目)13番 3,150円(会員割引)
指 揮:梅田俊明
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 「第87回日本音楽コンクール本選会《ピアノ部門》」を聴く。今年はスケジュールの都合がついたのでピアノ部門も聴いてみることにした。今年のピアノ部門には229名の応募があり、棄権16名を除く213名が第1予選(9月10日〜14日/トッパンホール)に参加、内47名が通過した。第2予選(9月16日〜18日/トッパンホール)を通過したのは9名。第3予選(9月30日/トッパンホール)で本選に進む4名が選出された。最近ではコンクール世代のピアニストを聴く機会が少ないので、第1予選通過者の段階で知った名前は1人もいなかった。
 席は2列目のソリスト正面(鍵盤側)で、ピアノの音は大き過ぎてオーケストラとのバランスも良くはないが、何しろ演奏している姿が目の前に見えるので、指のタッチや息遣い、指揮者とのアイコンタクトなど、臨場感は抜群である。音質そのものも良くないが、表現しようとしているニュアンスなどはむしろリアルに感じ取ることができるし、残響音やオーケストラの音に飲み込まれる前のナマの音を聴くことができる。審査員席は2階のセンターなので、シューボックス形式の東京オペラシティコンサートホールではステージからかなり遠い。つまり審査員の方々と私とでは、聴いた音楽の「音」がまったく違うものだということなのである。
 それでは、演奏順に簡単にレビューしてみよう。

●竹澤勇人(たけざわゆうと/1997年生まれ/桐朋学園大学音楽学部3年在学中)
【曲目】ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
 冒頭のカデンツァからとても丁寧に弾いているという感じで、とても端正な印象だ。音量はそれほど大きくはなく、2列目で聴いていても不快感はない。その分だけダイナミックレンジあまり広くないようだ。第1楽章の前半くらいまでは曲の流れに乗るのがややバタついている感じもあり、オーケストラとの掛け合いがスムーズに流れないところもあったような気がする。第2楽章の緩徐楽章はやや単調に流れた。第3楽章になるとやや前のめり気味のリズム感が緊張感を創り出し、躍動感と疾走感が生まれた。

●尼子裕貴(あまこゆうき/1999年生まれ/桐朋学園大学音楽学部1年在学中)
【曲目】チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
 冒頭の3拍子を刻む和音からしっかりとした造型を見せるで押し出しはあまり強くないようだ。音量もおまり大きくはないようだが、弱音部をうまくコントロールしているのでダイナミックレンジは広い。旋律を歌わせるようなテンポの揺らぎや、リズム感のノリの良さもある。また、装飾的なパッセージが煌びやかに際立たせるのも上手い。楽曲が派手なせいもあるが、第1楽章が終わったところで拍手してしまう人がいたくらい。第2楽章のロマンティックな表現も美しい。第3楽章のロンドはリズム感も良く躍動感もあるし、速めのテンポ感が若々しくで素敵だと思った。

●小井土文哉(こいどふみや/1995年生まれ/桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコース1年在学中)
【曲目】ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
 後半2人は奇しくも同じ曲になってしまったので演奏の違いが明瞭になったように思う。小井土さんの演奏は、4名の中では年長ということもあり、音楽的なバラツキが少ない完成度の高さを見せた。曲相が多彩に変化する曲だけに、まとまりを欠くと混沌としてしまうが、うまくまとめていたと思う。ただ、目の前での演奏を聴いている限り、音質がやや濁る(あるいは色彩的に渋めというか)印象があり、ラヴェルの曲の持つ色彩感に対して若干の違和感を感じた。とくに第2楽章前半のビアノ・ソロの部分で透明感が欲しいと思った。技巧的にも豊かな表現力も全体的には完成度は高いと思うが、色彩感があまりラヴェルっぽく感じられなかったのである。

●望月 晶(もちづきあき/1999年生まれ/桐朋学園大学音楽学部1年在学中)
【曲目】ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
 一方、望月さんのラヴェルは、まだまだ未完成という雰囲気を残しつつも、色彩感が豊かで、曲全体を鮮やかに彩っていたように思う。いわゆる音の粒立ちが良いというタイプで、音に透明感があり、多様な和音を美しく響かせる。リズム感も全体的にとてもフレッシュな印象で、生命力が息づいている感じだ。第2楽章のソロは、澄んだ音色でロマンティックに歌わせる。単調なリズムと旋律の中、そこには情感が溢れていて、とても人間的だと感じた。聴く者の心に共鳴する優しさのある表現。彼女がラヴェルを選んだ理由が分かるような気がする。第3楽章は一転して多彩で華やか、弾むリズムと躍動。それも音が澄んでいるから非常に爽やかな仕上がりとなっていた。

 4名の演奏を聴いて、上記のような感想を持った。ただ、今回の本選会では、聴いた後でも順位がアタマに浮かんでこない。少なくとも、ずば抜けて優れていると思えるような演奏はなかったように思えた。予選会でのソロもまったく聴いていない状況だから尚更である。私はピアノに関してはそれほど詳しくはないが、協奏曲は好きなのでよく聴いている方だと思う。それでも今日の4名の演奏は、甲乙つけ難いものだった。客観性を少しないがしろにして個人的な好みを反映させて順位を付けてみたのだが、聴衆賞を含めて最終選考結果とはまったく違っていたので、敢えてここに書く必要はないだろう。
 最終結果は下記の通りとなった。

《第87回日本音楽コンクール ピアノ部門本選結果》
  1位 小井土文哉
  2位 竹澤勇人
  3位 尼子裕貴
  入選 望月 晶
  ※岩谷賞(聴衆賞) 尼子裕貴

 結果については、個人的にはやはり不満が残ることになるが、まあ、コチラの方が素人なので文句を言っても始まらない。・・・・うーん。でもなぁ・・・・。

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10/26(金)安達真理/ヴィオラ・リサイタル/暖色系の音色が伝える作曲家の「こころ」/ブラームス、ロータ、ブロッホなど

2018年10月26日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
MARI ADACHI salon concert series #1
安達真理 ヴィオラ・リサイタル
ヴィオラの音色でこころを結ぶ


2018年10月26日(金)19:00〜 トーキョーコンサーツ・ラボ 自由席 1列中央 3,000円
ヴィオラ:安達真理
ピアノ:田中英明
【曲目】
プロコフィエフ :バレエ音楽『ロミオとジュリエット』より
      「前奏曲」「少女ジュリエット」「騎士たちの踊り」「マーキューシオ」「バルコニーの情景」
ビーバー:パッサカリア
ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第2番 変ホ長調 作品120-2
ロータ:ヴィオラ・ソナタ 第2番
ブロッホ:ヴィオラとピアノのための組曲
《アンコール》
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ

 ヴィオラの安達真理さんが久し振りに本格的なプログラムでのリサイタルに臨んだ。会場は、今や私にとってもお馴染みとなった感のあるトーキョーコンサーツ・ラボ。120席規模のサロンで、残響が長いわけではないが、音質の良い響きのサロンである。
 プログラムは上記の通りの重量級。プロコフィエフ の『ロミオとジュリエット』は、ベートーヴェン弦楽四重奏団のヴィオラ奏者であるワジム・ボリゾフスキーの編曲で、5曲が抜粋されて演奏された。
 ビーバーは17世紀後半の作曲家・ヴァイオリニストで、この有名な「パッサカリア」はヴァイオリンのための「ロザリオのソナタ集」の最終曲。今日はそのままの運指で5度下げた状態でヴィオラで演奏された。しかもバロック・ピッチ(A=415Hz)という調弦でバロック・ボウ(通常より短い弓)を使用し、時代の感性を再現する。
 ブラームスの「ヴィオラ・ソナタ 第2番」は晩年の作で、クラリネット・ソナタとして作曲されたものを本人がヴィオラ用に編曲したものである。
 ニノ・ロータは『ゴッドファーザー』などの映画音楽で一般には知られているが、本業はクラシック系の作曲家だ。この「ヴィオラ・ソナタ 第2番」は1945年の作で、時代的には現代だが、曲相は非常にロマンティックな詩情豊かな曲である。
 ブロッホはユダヤ系スイス人で、20世紀前半に主にアメリカで活躍した作曲家・音楽教師。この「ヴィオラとピアノのための組曲」は実際には行ったことのないスマトラ、ボルネオ、ジャワなどをイメージして作曲されたとされている。近代的な作風の中に東南アジアのエキゾチックなイメージ(熱く、原始的・・・)が盛り込まれている。4楽章からなり、全編で30分を超える大作である。

 こうした時代も国も民族も多様で多彩な楽曲を、1度のリサイタルで弾きこなすというのもなかなか大変なことだと思う。それぞれの曲のイメージの違いに対してアタマをリセットして行かないとならないはずだ。その点で、安達さんのヴィオラは柔軟性と多様性を持っている。ウィーンとローザンヌに留学し、その後もヨーロッパ各地で演奏してきた経験も大いに役立っているのだろう。
 安達さんのヴィオラは、基本的にはマイルドで柔らかく、音が丸い。つまり角がない。音色は暖色系で艶やか。人の声に最も近いと言われるヴィオラの特性を最も素直に表出することができ、しかも押しつけがましくないところがとても良い。温かみのある音色はまさにアルトの歌唱のようで、聴く者の心に自然に響いてくる優しさがある。
 オーケストラや弦楽四重奏などでは、ヴィオラは内声部を受け持つことが圧倒的に多いためか、ヴィオリストは協調性や親和性に優れている反面、個性を押し出すタイプの人は少ない。その結果、様々な「ヴィオラ・ジョーク」が生まれたりしているわけだが、その辺がソリストとしてのヴィオリストの難しい側面があるのだろう。しかし、安達さんのヴィオラは、押し出しの強さこそあまり感じられないものの、聴く者の心に共感を呼び起こすチカラがある。演奏を聴いていると、作曲家の思いや演奏家の気持ちの有り様が、こちらのアタマの中にフワリと浮かんでくる。聴く者の心と共鳴するのだ。ビリビリと魂が震えるような感動をするのではないが、心の中にポッと温かい火が点されるような感動。だから聴いていてとても心地よく、幸せな気分に浸ることができるのである。普段は内声部を受け持つヴィオラだからこそ、心の内側に届く音楽になるのだろう。



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10/25(木)サラ・チャン ヴァイオリン・リサイタル/N響メンバーの弦楽五重奏をバックにたつの「四季」を女王のような存在感で

2018年10月25日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
サラ・チャン ヴァイオリン・リサイタル
〜早熟の天才、充実の時を迎える〜


2018年10月25日(木)19:00〜 紀尾井ホール S席 1階 1列 9番 7,000円
ヴァイオリン:サラ・チャン
NHK交響楽団メンバーによる弦楽五重奏
 ヴァイオリン:森田昌弘
 ヴァイオリン:三又治彦
 ヴィオラ:横溝耕一
 チェロ:宮坂拡志
 コントラバス:市川雅典
【曲目】
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集『和声と創意の試み』第一集より「四季」
ピアソラ:ブエノス・アイレスの四季
《アンコール》
 J.S.バッハ:G線上のアリア

 昨年に引き続き今年も来日してくれたヴァイオリン界のスーパースターもサラ・チャンさんのリサイタルを聴く。丁度1年前、2017年10月25日に同じ紀尾井ホールでリサイタルを聴いた。その時はピアノ伴奏でブラームスやフランクのヴァイオリン・ソナタという、王道を行くプログラムで、世界のトップ・アーティストのパフオーマンスを堪能させていただいた
 今回は、弦楽五重奏(N響のメンバーによる)をバックに「2つの『四季』に挑む」というコンセプトで、ヴィヴァルディの「四季」とピアソラの「ブエノス・アイレスの四季」というプログラム構成となった。
 会場の紀尾井ホールの客席を見渡しても、見知った顔が少ない。そういえば今日はサントリーホールでN響のBプロ定期があるので、音楽ファンの人たちはブロムシュテットさんを聴きにそちらへ行ってしまったのだろう。私はヴァイオリンが好きだから、絶対にサラ・チャンサンは聴き逃せない。あれ?、逆にN響の人たちがコチラに出演しているぞ・・・・?。

 しかし、サラ・チャンさんの演奏には痺れる。美しい音色はひたすら艶やかで美しく、パッションの溢れる強い音はひたすらアグレッシブで発揮度が高い。抒情性豊かな表現では大胆に、しなやかに旋律を歌わせ、走るところでは前のめりにリズムを刻む。そのパフォーマンスには圧倒的な存在感がある。スターだけが持つオーラだろうか。
 天才少女の名を欲しいままにして来たサラ・チャンさんもそろそろアラフォーと呼ばれる年齢になる。プロとしての演奏歴は30年に及ぶ。誰もが目を見張るような超絶技巧はもちろん今も健在だが、技術だけでいったら超絶技巧の持ち主は世界中にたくさんいる。しかし、サラ・チャンさんには技巧を遥かに超越した豊かな表現力がある。韓国系アメリカ人である彼女には、クラシック音楽家として「お国自慢」できるような曲はない。子供の時から身につけてきた国際的な感性が強く、ドイツものだろうがロシアものだろうが、民族性などを超越して、極めて「音楽的」な演奏を構成するチカラをもっているのだ。今となっては、それは彼女の「個性」になっているといえる。とにかくスゴイ人なのである。

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10/23(火)第27回Kissポートクラシック/フレッシュ名曲コンサート/若手の岡 昭宏を迎えてヴェルディ『レクイエム』を

2018年10月23日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
第27回Kissポートクラシックコンサート/フレッシュ名曲コンサート
ヴェルディ:レクイエム

2018年10月23日(火)19:00〜 サントリーホール A席 1階 1列 20番 2,800円
指 揮:大友直人
ソプラノ:森 麻季
アルト:福原寿美枝
テノール:吉田浩之 
バリトン:岡 昭宏
管弦楽:東京交響楽団
混声合唱:ミナトシティコーラス
【曲目】
ヴェルディ:レクイエム

 公益財団法人 東京都歴史文化財団(東京文化会館)が主催する「フレッシュ名曲コンサート」のシリーズで、今回は会場が港区となり、公益財団法人 港区スポーツふれあい文化健康財団(Kissポート財団)が共催して開催された。通常は各区の区民ホールなどが会場に充てられるで、港区の場合はサントリーホールが使用されることになる。

 指揮は大友直人さん、管弦楽は東京交響楽団、合唱は地域のアマチュア合唱団であるミナトシティコーラス。曲目は、ヴェルディん『レクイエム』全曲である。ソリストはソプラノの森 麻季さんをはじめとするベテランに混ざって、若手の岡 昭宏さんが加わった。岡さんは、「第12回 東京音楽コンクール」声楽部門で第1位および聴衆賞を獲得した。つまり「フレッシュ名曲コンサート」の対象となるのは彼だけなのである。

 ソリストの4名は実力的にも十分で、皆さん素晴らしい歌唱を聴かせてくれた。私は例によって1列目で聴いたわけだが、指揮者の大友さんの両サイドがそりスチたちの定位置であったため、目の前で聴く大ホールに向けた歌唱は迫力たっぷり。大いに堪能させていただいた。

 それに対して、合唱のミナトシティコーラスは、少々キレ味が鈍く、瞬発力が求められる部分ではパンチに欠けるところが気になった。とはいえ、アマチュア団体としては十分なパフォーマンスであったといえるレベルだったと思う。

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10/20(土)Hakuju Hall/藤倉 大 個展/Part 1&2/ソプラノ、チェロ、ホルン、クラリネットと弦楽四重奏など2006年〜2018年の作品演奏会

2018年10月20日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
Hakuju Hall 開館15周年記念
藤倉 大 個展 

2018年10月20日(土)Hakuju Hall 指定席 B列 15番 2,500円
作 曲:藤倉 大
弦楽四重奏:カルテット・アマービレ
 ヴァイオリン:篠原悠那
 ヴァイオリン:北田千尋
 ヴィオラ:中 恵菜
 チェロ:笹沼 樹
ソプラノ:小林沙羅
チェロ:新倉 瞳
ホルン:福川伸陽
三味線:本條秀慈郎
ギター:村治奏一
クラリネット:吉田 誠

《Part 1》14:00〜15:00
【曲目】
Neo(音緒)~三味線のための(2014)〈本條〉
きいて~ソプラノのための(2017)〈小林〉
Moment~チェロのための(2006)〈新倉〉
ゆらゆら~ホルンのための(2017)〈福川〉
GO〜ピアノと管楽のための より 第5楽章 クラリネット独奏曲(2016)〈吉田〉
Eternal Escape〜チェロのための(2001 rev. 2006)〈新倉〉
Halcyon〜クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための(2011)〈吉田&カルテット・アマービレ〉

《Part 2》15:30〜16:30
【曲目】
Rubi(co)n〜クラリネットのための100の音(2006)〈吉田〉
ゆらゆら〜ホルンと弦楽四重奏のための(2017)〈福川&カルテット・アマービレ〉
Osm〜チェロのための(2015)〈新倉〉
夜明けのパッサカリア〜ソプラノのための(2017)〈小林〉
チャンス・モンスーン〜ギターのための(2014)〈村治〉
Perpetual Spring〜クラリネットと弦楽四重奏のための(2017)〈吉田&カルテット・アマービレ〉
はらはら〜ホルンのための(2018 Hakuju Hall 開館15周年記念作品 世界初演)〈福川〉

 Hakuju Hallが開館15周年を記念して、作曲家・藤倉 大さんの作品演奏会を企画した。Part 1とPart 2の2部構成で、各公演はおよそ1時間というプログラムだが、もちろん内容は異なるもの。室内楽向けのホールとしては極めて響きの良いHakuju Hallで、室内楽曲を集めた現代音楽のコンサートは、もちろん難解な部分はあるかもしれないが、藤倉さんほどの作曲家であれば、聴いていても決して飽きることもなく、常に新鮮な「音」を創り出して来るからとても面白い。
 演奏家も若手の一流どころが勢揃いしたのも魅力的であった。ソプラノの小林沙羅さんはいつも聴いているし、チェロの新倉瞳さん、ギターの村治奏一さん、ホルンの福川伸陽さんなと、お馴染みの演奏家の皆さんだ。また弦楽四重奏団の「カルテット・アマービレ」はかなり以前から着目していたのだが、どういうわけかコンサートの度にスケジュールが合わず、何と今日が初対面である。

 今回の曲目の中では、沙羅さんの「きいて~ソプラノのための」と「夜明けのパッサカリア〜ソプラノのための」は、昨年2017年12月、東京オペラシティの「B→C」シリーズに沙羅さんが出演した時の委嘱作品であり、その時聴いている。声をひとつの楽器として捉えたような部分があり、現代における歌曲の新しいカタチを模索しているようであった。

 その他はすべて初めて聴く曲であった。新倉さんによるチェロのための曲は、特殊奏法を含めて、チェロという楽器の表現領域の限界に挑戦している。幅広い音楽分野へのアプローチを試みる新倉さんにピッタリの曲だといえる。

 福川さんが演奏したホルンのための3曲は、いずれもかなり高度な技巧を前提とした曲で、こちらも特殊奏法(?)を駆使して、様々に変化する音が面白い。ホルンでこんなこともできるのか・・・・と、やや呆れてしまうくらいにスゴイ。

 現代音楽という分野も作曲家の個性が現れることに変わりはない。前衛的であったり、実験的で難解な曲は、聴く側にもそれなりに知識と経験が必要になる。しかし、藤倉さんの場合は先鋭的な斬新さが素直に受け入れられる面白さを持っていると思う。作る側の独りよがりな狭い世界観の音楽ではなく、私たち一般の聴く側の人間にも、興味がかき立てられるものがあり、聴いていても面白いし、音楽的にもカッコイイのである。

 終演後は、藤倉さんをはじめ演奏家の方々かホワイエに出て来られたので、知っている方とはご挨拶を交わして、いつものように記念写真を撮らせていただいた。




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10/19(金)クァルテット・レストロ・アルモニコ/シューベルトの名作「死と乙女」に挑戦/見事なアンサンブルで秘めたる思いを熱く表現

2018年10月19日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
クァルテット・レストロ・アルモニコ
珠玉の名作「死と乙女」に挑む


2018年10月19日(金)19:00〜 浦安音楽ホール 自由席 1階 1列 14番 入場無料
クァルテット・レストロ・アルモニコ
 ヴァイオリン:伊藤亜美
 ヴァイオリン:須山暢大
 ヴィオラ:安達真理
 チェロ:山澤 慧
【曲目】
ヴェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
クライスラー:弦楽四重奏曲より第3楽章「序奏とロマンツェ」
ヴォルフ:イタリア風セレナーデ
シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番「死と乙女」
《アンコール》
 モーツァルト:ディヴェルティメント ヘ長調 K.138より第2楽章

 公益財団法人 光山文化財団が主催する無料のコンサート。事前に申し込むだけで、誰でも聴きに行くことができる。今回の出演は、私にとってはお馴染みとなっている弦楽四重奏団「クァルテット・レストロ・アルモニコ」。ヴァイオリンが伊藤亜美さんと須山暢大さん、ヴィオラの安達真理さんに加えて、チェロの山澤 慧さんが留学を終えて帰国されたので、久し振りに4名が揃ってのコンサートとなった。

 会場は最近オープンしたばかりの「浦安音楽ホール」で、私も初めて訪れた。JR京葉線の新浦安の駅のすぐ近くにあるのだが、初めてなので迷ってしまった。スマホの地図アプリを見ながらなのに初めてのところだといつも迷う。意外と方向音痴のようだ。東京駅から20分前後で着く場所なのに、何となく不便なイメージがあってか、場所的にはあまり行きたくないところである。
 浦安音楽ホールは、一応クラシック音楽用のホールということで、303席という規模だが、客席は階段状になっているので、どの席でも見やすく聴きやすそうだ。残響は1.55秒〜1.82秒。色々調整できる装置付きらしい。内装は木製で柔らかい響きで中々良い音だ。今日は着くのは遅れたが、うまい具合に最前列の席を確保することができた。

 プログラムは前半が当初の発表から曲順が変わって上記のようになった。これは実際にホールに来てリハーサルしてみて、響きの具合などからイメージが変わったかららしい。その辺の自由度の高いところは、いかにもクァルテット・レストロ・アルモニコだ。プログラムの趣旨は、見れば分かるように時代を超えたウィーンの音楽。やはりクラシック音楽の中心地であるウィーンでは、時代と共に最先端の音楽が作られてきた。そんなことも感じさせる、なかなか凝ったプログラムである。

 1曲目は、ヴェーベルンの「弦楽四重奏のための緩徐楽章」。ヴェーベルンは新ウィーン楽派の作曲家として知られているが、この曲は1905年の作で、まだロマンティックな調性音楽あであり、大変美しい旋律と和声を持っている曲だ。4人の旋律がピタリと揃った時、分厚く感じさせる和声の中から、感傷的なロマンが漂ってくる。美しい演奏だ。

 2曲目は、クライスラーの残した唯一の「弦楽四重奏曲」より第3楽章の「序奏とロマンツェ」。クライスラーの音楽もまたウィーンを代表する洒脱で粋な音楽だといえる。この楽章も緩徐楽章であり、ウィーン風の気品と洒落っけが感じられる。ヴァイオリニストとしての名声を既に確立していた1919年の作である。あまりにもヴァイオリニストとして巨人でありすぎたためにこの「弦楽四重奏曲」は影の薄い存在になっているが、とても美しい曲なのである。本日の演奏も、音楽の喜びが伝わってくるような、暖色系の音色のアンサンブルがとても良い感じだ。

 3曲目は、ヴォルフの「イタリア風セレナーデ」。この曲は1887年に作曲された弦楽四重奏のための曲で、後に管弦楽版や弦楽合奏版に編曲もされている。後期ロマン派の音楽である。「セレナーデ」といわれればしっとりとしたロマンティックな曲を想像しそうなものだが、この曲は「イタリア風」とあるように陽気で弾むようなリズムのロンドである。こちらの演奏は、さらに一層、音楽の喜びを感じさせる。明るく翳りのない音色と躍動的なリズム感の良さ、そしてアンサンブルも見事であった。


 後半はメイン曲、シューベルトの「弦楽四重奏曲 第14番『死と乙女』」である。第2楽章に歌曲「死と乙女」からの主題の転用があるためにこの名で呼ばれている。シューベルトが亡くなる4年前の1824年の作で、全4楽章が短調で書かれているため、全曲の色調は暗く、負の側面の心情の吐露が感じられる作品だ。演奏時間も40分に及ぶ大曲である。
 さすがにこの曲の演奏については、音楽の楽しさの表現というような要素はなく、むしろ演奏を通じて作曲家の魂に迫ろうとする強い意志が感じられた。前半の楽曲のように、喜びや楽しさが音楽表現の原動力となることもあれば、「死と乙女」のように作品に真摯に向き合い、絶望や苦悩、葛藤などの心情をあぶり出すような演奏をすることも、時として必要になる。だから4人の演奏家も、前半とは違って表情も真剣そのもの。演奏家としての魂を作品に注入して、暗い色調の中にも熱い思いを垣間見せて、聴く側にとっても心がヒリヒリするような情感が伝わって来ていた。アンサンブルも見事ではあったが、全体がひとつにまとまっているというよりは、4名の個性がぶつかり合っているような燃焼系の演奏になっていたと思う。だからこそ聴く側にも強い緊張が伝わっていていたのだろう。

 アンコールは、モーツァルトの「ディヴェルティメント ヘ長調 K.138」より第2楽章が選ばれた。「死と乙女」の重苦しい雰囲気を払拭するようにと、最後は穏やかで心地よい天国的な音楽で締めくくられた。

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10/16(火)読響名曲シリーズ/ムローヴァによるベートーヴェンのVn協奏曲とアントニーニのベートーヴェン交響曲第2番

2018年10月16日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第616回 名曲シリーズ

2018年10月16日(火)19:00〜 サントリーホール S席 1階 3列 20番 5,290円 (会員割引)
指 揮:ジョヴァンニ・アントニーニ
ヴァイオリン:ヴィクトリア・ムローヴァ*
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:日下紗矢子
【曲目】
ハイドン:歌劇『無人島』序曲
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61*
《アンコール》
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ長調 BWV1004より「サラバンド」*
ベートーヴェン:交響曲 第2番 ニ長調 作品36

 読売日本交響楽団の「第616回 名曲シリーズ」。今月のマエストロはイタリア出身のジョヴァンニ・アントニーニさん。ゲスト・ソリストはヴァイオリン界の大物、ヴィクトリア・ムローヴァさんである。

 1曲目、ハイドンの「歌劇『無人島』序曲」は初めて聴いた。そもそもハイドンのオペラなんてほとんど上演されることもないから無理もない。曲は単調を基調とした悲劇的な様相を呈している。アントニーニさんのキレの良い演奏で読響のサウンドも軽快だ。

 2曲目のベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」は、ムローヴァさんのヴァイオリンが何ともベテランの風情で、テンポ設定は速めなのに独奏ヴァイオリン自体のキレ味があまり良くない。速めのインテンポで、淡々と曲が進んでいくようで、面白味もないようだ。明らかに年齢から来る技量の低下も見られたが、それほど超絶技巧でもないベートーヴェンだから、ベテランらしい表現力でカバーしているといったところか。この演奏の評価は何ともビミョーなところだが、私としては今後はもういいかな、といったところであった。

 後半はベートーヴェンの「交響曲 第2番」。あまりコンサートで演奏されることはない曲だが、若々しい生命力が迸る、素晴らしい曲だと思う。演奏の方は、その生命力の部分をメインにしたような解釈で、弾むようなリズム感と躍動感があり、キレ味の明快な演奏であった。また、オーケストラの音色が明るく、フレッシュな印象を増強させていた。

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10/13(土)女神との出逢い/青木尚佳&エマヌエーレ・セグレ/ツアー最終日をやはり最良の演奏で締めくくる

2018年10月13日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
土曜ソワレシリーズ/女神との出逢い
青木尚佳&エマヌエーレ・セグレ ヴァイオリン&ギター デュオ・リサイタル


2018年10月13日(土)17:00〜 フィリアホール S席 1階 1列 8番 3,500円(セット券)
ヴァイオリン:青木尚佳
ギター:エマヌエーレ・セグレ
【曲目】
パガニーニ:チェントーネ・ディ・ソナタ第1番 M.S.112
パガニーニ:大ソナタ M.S.3より第2楽章「ロマンス」
パガニーニ:チェントーネ・ディ・ソナタ第4番 M.S.112
シューベルト:ソナチネ 第1番 D384
ジュリアーニ:グラン・ポプリ 作品126

ファリャ:スペイン民謡組曲
     「ムーア人の織物」「ナナ」「カンシオン」「ポロ」「アストゥリアスの歌」「ホタ」
アルベニス:マリョルカ島 作品202 *ギター・ソロ
アルベニス:アストゥリアス 作品47 *ギター・ソロ
サラサーテ:アンダルシアのロマンス 作品22-1
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン 作品20
《アンコール》
 クライスラー:愛の悲しみ

 横浜市青葉区にあるフィリアホールで開催される人気シリーズ「土曜ソワレシリーズ/女神との出逢い」。今回はヴァイオリンの青木尚佳さんか初登場で、ギターのエマヌエーレ・セグレさんとのデュオ・リサイタルである。内容としては、5日前にHakuju Hallで開催されたコンサートと全く同じもので、お二人による日本ツアーの最終日ということになる。
 個人的に前回と違うところは、聴く席の位置が同じ最前列でも本日はセンターよりやや左寄り。つまりヴァイオリンの尚佳さんの正面なのだが、ギターのセグレさんがどういう訳か楽器を彼の方から見て右向きに構えていたので、丁度うまい具合の私の方を向いていた。従って前回よりも、ギターの音がよく通って来て、ヴァイオリンとのバランスが結構良くなった。また、セグレさんもツアー最終日だからという訳でもなかろうが、前回よりもノリが良く、音も出ていたし、生き生きとした演奏を聴かせてくれた。

 とはいうものの、やはりヴァイオリンとギターでは阿東的に音量に差があるので、尚佳さんの演奏はかなり抑えている。パガニーニなどは、その抑え気味であることで、優美な音色に繊細さが加味されて、美しい旋律を上品に歌わせることになった。プログラムの後半は、本来ならギター伴奏に相応しいスペインものが並んでいるが、セグレさんのギターがあくまで情熱的なスペイン風ではなく、ヨーロッパ風のエレガントな演奏であったためか、尚佳さんのヴァイオリンにも抑えが効いていて、結果的に品の良い演奏になつた。艶やかでしっとりとした潤いのある音色はそのままに、情熱を語るのではなく、サロン風の距離感が親近感を呼び、体温のような温かみを感じさせる演奏だったと言えそうだ。


 終演後にはサイン会があったので、先日のHakuju Hallの時のツーショット写真をセグレさんにもプレゼントしたら、大変喜んでいただいた。その写真に尚佳さんとお二人のサインをいただいた。セグレさんはおっとりしてとても優しそうな方。今日もツーショットの写真撮影を気軽に引き受けてくれた。お人柄が音楽にも見事なくらい表れていたので可笑しかった。



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10/10(水)林 美智子/ベル・エクサントリック/渋谷のeplus LIVING ROOM CAFE&DININGでベル・エポックのフランスを彷彿と

2018年10月10日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
ベル・エクサントリック Belle excentrique  ~林 美智子 ベル・エポック歌曲集~

2018年10月10日(水)19:30〜 eplus LIVING ROOM CAFE&DINING 全席指定 L-1 2番 4,000円
メゾ・ソプラノ:林 美智子
ピアノ:河原忠之
【曲目】
ストラヴィンスキー:アヴェ・マリア
プーランク:パリへの旅(歌曲集「月並み」より)
プーランク:ホテル(歌曲集「月並み」より)
プーランク:おまえはこんな風なのだ
ヴィアルド:カディスの娘たち
ヴィアルド:アイ・リュリ
アーン:星のない夜は
アーン:わが詩(うた)に翼ありせば
ドリーブ:カディスの娘たち
ラヴェル:イタリアの唄
マスネ:エレジー
オーリック:ムーラン・ルージュ
サティ:ジュ・トゥ・ヴ
橋本國彦:お菓子と娘
《アンコール》
 サティ:ジュ・トゥ・ヴ

 東京のJR渋谷駅近くにある「eplus LIVING ROOM CAFE&DINING」というカフェ(ダイニング)では、店内にステージがあり、クラシック系の音楽を中心としたライブ演奏を楽しみながら食事ができる。というよりは、コンサートに食事が付いているという感じであろうか。従って全席が指定席であり、チケットが前売りされている。当然、食事は別料金で、1品以上の注文が条件となる。
 今回はお馴染みのメゾ・ソプラノの林美智子さんのステージが19:30から開催された。私は18:30の開場(入店)に到着し、先に食事を済ませて開演を待っているカタチになった。

 前掲の【曲目】を見れば分かるように、「ベル・エクサントリック Belle excentrique」のタイトル通り、林さんの同名のCDと曲目も曲順も同じである。敢えてそうしたとのこと。ただし、CDの方はそれぞれの曲が色々と編曲されて演奏されているのでバリエーションが楽しめるが、本日のコンサートでは河原忠之さんのピアノ伴奏による歌唱に限定されていた。ピアノは短いグランド・ピアノだったので、いつもコンサートで聴いているような重厚に響きはなく、軽いBGMといった感覚である。歌唱はもちろんマイクを使わないナマであるが、店内は50席くらいのゆったりとテーブル席が配置されている空間なので、ちょうど良いところだろう。純粋に音楽を聴く空間ではないので、環境音が途切れないが、まさにサロン的な雰囲気に包まれていて、なかなか心地よい。


 林さんの歌唱はいつもと変わることなく、温もりを感じさせるメゾ・ソプラノが優しく通り抜けていく。時にはステージを降りてきて店内を歩き回りながら歌ったりもして、アーティストがより身近に感じられる。ベル・エポック時代のパリのカフェのソワレはこんな雰囲気だったのだろうか。肩に力の入っていないフランスの歌曲は、こうした夜の雰囲気にもぴったりである。美味しい食事の後、コーヒーなどを飲みながら、ゆったりとしたソファに身を沈めて聴く音楽というのもまた格別である。それがまた林さんの歌うフランス歌曲というのだから、至高の一時というものであろう。

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【お勧めCDのご紹介】
 もちろん、林美智子さんの「ベル・エクサントリック Belle excentrique」をご紹介します。全編がベル・エポック時代を彷彿とさせるフランス歌曲。親しみのある温かい声質のメゾ・ソプラノによる歌唱が、心に染み込んでくるような素敵な雰囲気を醸し出している逸品です。

Belle Excentrique~林美智子ベル・エポック歌曲集~
河原忠之,大萩康司,三浦一馬
SPACE SHOWER MUSIC


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