Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

9/3(日)スーパー・ソロイスツ/服部百音/2曲のヴァイオリン協奏曲は超絶技巧のパガニーニ第1番と静寂と熱情が交錯するシベリウス

2017年09月03日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
スーパー・ソロイスツ 服部百音 plays パガニーニ&シベリウス

2017年9月3日(日)14:00〜 Bunkamura オーチャードホール S席 1階 3列 20番 9,000円
ヴァイオリン:服部百音
指 揮:太田雅音
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:依田真宣
【曲目】
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品6
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47

 エイベックス・クラシック・インターナショナルの主催/企画・制作による「スーパー・ソロイスツ」シリーズの第2弾は、服部百音さんが登場。ご存じのように、今盛んに売り出し中の百音さんは、演奏機会がちょっと多すぎるくらいで、オーケストラとの共演による協奏曲やリサイタルに、当分はスケジュールがいっぱい詰まっているようだ。ヴァイオリン好きの私にとっては何だかんだといって気になる存在であることは確か。ということは、東京近郊でのコンサートがあれば、できるだけ聴いてみたい。何しろ彼女、今のところ小品を別とすれば同じ曲を弾いていない。コンサートの度に違ったプログラムを披露していて、18歳という年齢にしてはレパートリーが多いだけでなく、これまで聴いた限りでは、いずれもかなりレベルの高い演奏に仕上げて来ているのである。
 協奏曲を見てみると、今年2017年7月26日に神奈川県立音楽堂の「女神たちの協奏」というコンサートで、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏したばかりで、45日ほど経った今日はパガニーニの1番とシベリウスの2曲を一気に弾く。その後も、10月14日には兵庫でまたシベリウスを弾く予定だが、11月1日には東京オペラシティコンサートホールでN響とチャイコフスキーがあるし、年末(12月28日・29日)には東京交響楽団の「第九と四季」に出演するといった具合。その間にもリサイタルのツアーが大阪・札幌・東京(紀尾井ホール)と予定されている。ヴァイオリンのソリストとしてはまさに破竹の快進撃といった感じなのである。
 私の個人的な思いとしては、短期間に詰め込みすぎなように感じる。もう少しゆっくり勉強する時間を確保する方が良いのではないだろうか。何事においても勉強するのは若い内が効率が良く、理解するのも身につくのも早い。ある演奏家が語っていたのだが、「若い内は無理してでも勉強してたくさん溜め込んで、大人になってからそれを吐き出して演奏する」ということだった。もちろん、若い内でも演奏機会を与えられるならそれらに積極的に取り組み、現場レベルの対応力を身につけていくという考え方のあろう。どちらが正しいと言えるような問題ではないが、彼女の過密スケジュールを見ると、若干心が痛む。・・・・と言いつつも、11月のN響も、紀尾井ホールのリサイタルも、12月の「第九と四季」も聴きに行く予定にしているので、演奏する以上は頑張って素敵なパフォーマンスを期待しているのだが・・・・。

 前半はパガニーニの「ヴァイオリン協奏曲 第1番」。コンサートで聴くのはかなり久し振りである。ヴァイオリンの鬼才パガニーニの作だけあって、独奏ヴァイオリンには圧倒的に高度な技巧が盛り込まれているが、1817〜8年頃の作とされているように、古典派からロマン派への移行期に当たる。ただしイタリアなので、若干雰囲気は異なるが・・・。楽曲は、第1楽章が協奏風ソナタ形式、第2楽章は緩徐楽章、第3楽章がロンドというように、、古典的な造形の協奏曲であり、しかも主題がオペラの国イタリア風の歌謡的で美しい。
 百音さんの演奏は、全体的にかなり早めのテンポ設定で、ヴァイオリンの技巧的な性格を遺憾なく発揮している。歌謡的な旋律は伸びやかに歌わせ、経過句などに凝縮している超絶技巧的な装飾的なパッセージも、見事なテクニックでグイグイと飛ばしていく。演奏中はほとんど無表情で、超高速パッセージも正確にこなし、しかも表現力にも豊かな音楽性が感じられ、単なるアクロバット奏法を見せびらかしているわけではない。第1楽章の長大なカデンツァでは、パガニーニが乗り移ったかと思われるような鬼気迫るような超絶技巧の連続。ただ、音量はあまり大きくないので、オーチャードホールのような奥の深いホールだと、後方席ではその華麗なテクニックの微細な部分を聴き取ることは難しかったろうと思う。いずれにしても、パガニーニが自身のテクニックを自慢するために作ったような曲に対して、それに輪をかけたような高速テンポでの演奏は、技巧的にはもうすでに完成域に到達しているという自信の表れかもしれない。

 後半は、シベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」。この曲も技巧的にもかなり難易度が高い曲ではあるが、本日の百音さんの選曲においては、パガニーニで技巧を、シベリウスでは表現力のあるところを聴かせようというところだろう。
 百音さんは、年齢的にいっても、経験からみても、この曲をそれほど何度も演奏しているとは考えられないが、それにしても上手い。冒頭から、独奏ヴァイオリンが圧倒的な質感をもって迫ってくる。音質は艶やかで滑らかだし、音色は適度な緊張を伴う鮮やかな色彩を持ってる。高速パッセージが重音奏法などの技巧も素晴らしい。そして何より素晴らしいと思うのは、全体がきわめて音楽的なのだ。邪念がないのか、楽曲に真摯に向き合って、本質的な部分を素直に表現出来ている。キーンと凍り付いた空気感と氷の下で熱く燃えたぎる民族の血潮。純音楽ではあるが、そういった世界観が聴く者の心に植え付けられるはず。そんなシベリウスの情念がちゃんと伝わって来る演奏なのである。
 同年代の音大生や音高生たちがコンクールで演奏するのなどと比べても、一歩も二保歩も先を行っている感じ。つまりは完成度が高いのである。プロの演奏家として、お金を取って客を集められるレベルになっていることは確かだ。もちろん伸び白はまだまだいくらでもあると思うので、今後の演奏会が楽しみである。できれば日本に留まらずに、ひろく世界を舞台に羽ばたいて欲しい逸材であることは確かだ。

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