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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

7/9(水)読響サントリー名曲/ハルトムート・ヘンヒェンの渋く重厚な「未完成」とブラームスの交響曲第1番

2014年07月11日 01時15分37秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第573回サントリーホール名曲シリーズ

2014年7月9日(水)19:00~ サントリーホール S席 1階 3列 20番 4,180円(会員割引)
指 揮: ハルトムート・ヘンヒェン
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
ブラームス: 悲劇的序曲 作品81
シューベルト: 交響曲第7番 ロ短調 D759「未完成」
ブラームス: 交響曲 第1番 ハ短調 作品68

 読売日本交響楽団の「サントリーホール名曲シリーズ」を聴く。先月はスケジュールの都合がつかずサポッてしまったので、今月はちゃんと聴こうと思ってはいたものの、九州には超大型の台風が近づいているし、その影響で関東でも梅雨前線が活発化している。こういう天候の時は、古傷が痛んだりして(?)体調が芳しくなく、コンサートに行くのも何となく気が重くて・・・・。などといいつつも、「もったいないから行く」などと言ったら読響の皆さんに申し訳ないが、ちゃっかりいつも通りに早めに会場入りしていた。
 今月のマエストロは、ドレスデン生まれのハルトムート・ヘンヒェンさん。スマートで若く見えるが、1943年生まれというから、今年71歳になる。旧東ドイツで要職を歴任し、1986年からはオランダを中心に世界各国の一流オーケストラや歌劇場に客演している、ドイツ系音楽の重鎮の一人である。読響には初登場だ。今回の客演では、昨日のメトロポリタン・シリーズと今日のサントリー名曲シリーズが同プログラム、その後7月15日の定期演奏会、20日の東京芸術劇場マチネーシリーズにも登場してそれぞれ別プログラムを振る。得意のドイツもの、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームスが中心だが、ショスタコーヴィチやマルティヌーといった変わったところもプログラムに加えるなど、かなり意欲的なところも見せている。

 1曲目はブラームスの「悲劇的序曲」。曲が始まると、なかなか渋めのサウンドが響いてくる。音量もやや控え目な様子で、いつもの読響のような押し出しが少ないようだ。もちろん、控え目な音量のなかにも広いダイナミックレンジを採っているので、力感が乏しくなるようなことはない。音が渋めというのは、主に弦楽の音が澄んでいないためで、これは決して悪い意味で言っているのではなく、むしろドイツのオーケストラに見られるような「渋さ」のことである。またホルンをはじめとする金管群も抑制的に演奏されていて、全体のバランスも良い感じ。つまり、演奏は全体的にドイツ風のスタンダードなイメージで、構造的な緻密性も十分に感じられた。

 前半はもう1曲、シューベルトの交響曲第7番「未完成」である。編成を若干小さくしたので、この曲ではさらに音量がさがることになった。まあ、シューベルトだからそれも良いかもしれない。第1楽章の重苦しい低弦の序奏に対して、第1主題のオーボエなどはドイツ的な純音楽風の質感が素敵だ。弦楽に移ると、やはり渋めのアンサンブルで、美しいには違いないが、どこか土臭さを残すイメージだ。控え目の音量の中でも、ダイナミックレンジは広く、強弱のメリハリは明瞭だが、アンサンブルのリズム感が縦の線をキッチリと揃えるのではなく、わざと少し曖昧にしていて、その辺りが渋さにつながっていくのだろう。なかなか素晴らしい味わいである。
 第2楽章はテンポを中庸からやや速めに置き、まったりとした雰囲気を醸し出しつつもだらけた感じはさせない。ヘンヒェンさんの音楽作りは、キッチリしたものではなく、エッジが立っていない。その柔らかさが、まあ言ってみればドイツの伝統的なスタンダードさなのかもしれない。柔らかく、渋く、暖色系の音色。尖ってはいなくても、全体の構造性はしっかりとしていて、安定感もある。いつもの読響の豪快なサウンドとはだいぶ違っていた。

 後半はブラームスの「交響曲 第1番」。第1楽章の冒頭はさすがに重厚に押し出して来るが、やはり音量は抑えめである。しかしテンポを巧みに揺らがせ、深みのあるリズム感で立体的な抑揚をつけている。主部に入ると弦楽の渋めのアンサンブルが雰囲気を作っているし、管楽器群も出過ぎずに抑制的で、見事にコントロールされている。アクセントをつける役割のティンパニが強すぎるようにも感じられたが、これは聴いている席(3列目のセンター)の関係だろう。全体が出過ぎない感じが、ブラームスの内省的な音楽性をうまく表現しているようであった。
 第2楽章は、ロマンティックな曲想のところを、テンポを自在に揺らがせながら、抒情性たっぷりに歌わせていた。ヴァイオリンやオーボエなどの弱音を巧みに使い、小さめの音量でありながら、抑揚の深い音楽を創り出している。美しい旋律を美しい歌わせること。この普通のことを自然に、イヤらしくなくやってのけるヘンヒェンさんは、なかなかのロマンティストのようだ。コンサートマスターの小森谷巧さんのソロも、彼の独特な甘い音色が素敵である。
 第3楽章は、中庸からやや速めのテンポで、スムースに流れるように曲が運ばれていく。クラリネットの牧歌的な音色も素晴らしい。中間部になるとテンポを上げて緊張感を高めていく。そういった手法もベテランらしい巧みさで、音楽にすーっと引き込まれていってしまう。主部が回帰してくるところの間合いも素晴らしい。
 ほとんどアタッカに近く、指揮棒を下ろさずにそのまま第4楽章に突入する。序奏部分ではテンポを操り緊張感を高めてく。アンペンホルンが朗々と響き渡ると色彩感がガラリと変わる。今日はホルンが実に上手い(いつもそうあってほしい)。主部に入り第1主題が出てくると意外とサラリとしているが、やがでテンポがグングン速くなっていき、緊張感も高めて盛り上げて行く。第2主題が出てくるあたりから、気がつけばけっこう速いテンポで、推進力のある押し出しになっていた。渋めの音色に変わりはないが、いつの間にか音量は上がっている。読響の全合奏時の爆発的な瞬発力がここへきて登場し、盛り上がりも最高潮に達する。全休止の後、アルペンホルンの旋律が帰って来て、曲の流れも勢いが一段と増してきたようだ。コーダに入るりクライマックスに近づくと、エンジン全開の読響サウンドが炸裂し、ティパニが地響きを立てる。素晴らしい演奏であった。

 ヘンヒェンさんの音楽作りは、ちょっと地味目ではあるが、ドイツの伝統というか、スタンダードな中にしっかりとした造形がある。全体で聴かせるタイプだ。だから聴き終わった後に、うーん、ナルホド! と思わせるのだ。今日はとくに、シューベルトとブラームスだったから、余計な派手さは必要ない、といわんばかりの渋めの演奏だったと思うが、読響からそのような演奏を引き出していたのだから、やはり歴戦の強者なのであろう。満足のいく一夜であった。

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