Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

11/2(水)バンベルク交響楽団/ブロムシュテット+諏訪内晶子/進化するベートーヴェン・プログラム

2016年11月02日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
KAJIMOTO WORLD ORCHESTRA SERIES 2016
バンベルク交響楽団 日本公演 2016


2016年11月2日(水)19:00〜 サントリーホール S席 1階 3列 23番 20,000円
指 揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
ヴァイオリン: 諏訪内晶子*
管弦楽:バンベルク交響楽団
【曲目】
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61*
ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」
《アンコール》
 ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」作品84より序曲

 ドイツの名門、バンベルク交響楽団が名誉指揮者のヘルベルト・ブロムシュテットさんに率いられての来日公演を聴く。2012年の来日以来、4年ぶりとなる。今回の来日公演ツアーでは、10/29福岡、10/30宮崎、11/1名古屋、11/2・11/3東京(サントリーホール)、11/4東京(東京オペラシティコンサートホール)、11/5京都と回り、5都市で7公演を行う。その内、10/29福岡、11/2東京、11/5京都の公演では諏訪内晶子さんがゲスト・ソリストとして参加する。ツアー洋に用意された曲目は、諏訪内さんが弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲に加えて、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」と第6番「田園」、シューベルトの交響曲第7番「未完成」、ブルックナーの交響曲第7番、そしてモーツァルトの交響曲34番である。これらが組み合わせを変えて各地で演奏される。
 私は前回の来日公演の時にはベートーヴェンの「英雄」と第7番を聴いているので、今回は「運命」とヴァイオリン協奏曲の日を選んだ。「田園」も聴きたかったが、諸々の事情で諦めることにした。

 前半は諏訪内さんをソリストに迎えてのベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」。結論から言うと、最近の諏訪内さんにしてはやや精彩を欠いていたという印象だった。もちろんこの曲は、ヴァイオリン協奏曲といってもそれほど派手なパフォーマンスで聴衆を喜ばせるような曲ではない。古今東西の人気のあるヴァイオリン協奏曲の中では、むしろ地味な方に入る。ベートーヴェンの曲だからといって「苦悩を通じての歓喜」というようなテーマ性はなく、むしろ「田園」の系統の穏やかで温かみのある曲である。従ってソリストに求められるのは、過激な超絶技巧でも、強烈な押し出しでもなく、むしろ滋味溢れる表現力ということになろう。
 もちろんそのような曲であるから、諏訪内さんはどちらかといえば淡々と、いわば古典的な純音楽として、美しく演奏していたような気がする。名器「ドルフィン」も今日はあまり鳴っていない。音量は、いつもの協奏曲の時に比べれば、かなり控え目。したがってダイナミックレンジが狭く、ややメリハリも少な目。音質はいつもと変わらず艶やかで申し分ないと感じたが、何となく表現の幅も狭いように感じられた。ちょっと不思議な感じであった。
 ブロムシュテットさんの指揮も、かなり抑制的で、オーケストラを7割程度のパフォーマンスに抑え、ヴァイオリンとの調和を保ってはいたが、全体的にオーケストラ側も精彩がなく、何とも地味目にベートーヴェンになっていたように思う。諏訪内さんの調子なのか・・・・ブロムシュテットさんの解釈なのか・・・・。
 諏訪内さんのソロ・アンコールもなかった。

 後半はベートーヴェンの交響曲「運命」。ここでオーケストラのパフォーマンスがグンと跳ね上がる。音量もダイナミックレンジも、音の立ち上がりも鋭く、全体にエネルギーが満ちている。ただ、これは私だけでなく友人達も同様な感想を漏らしていたが、今日のバンベルク交響楽団は、かつてのようなボヘミア系のドイツ色が濃いローカル・オーケストラ(それも一流の)の持つ、ちょっと渋めで土の香りがして、そして伝統の音と演奏スタイルを継承しているというようなイメージがかなり薄れているように感じられた。良く言えば、国際化が進み、高度の機能性が求められる「今風」のオーケストラへと進化しているということになる。思えばオーケストラ音楽も、グローバリゼーションが進み、人的交流も盛んになっているし、シェフも外国から招かれたりもする。団員達も世代交代が進めば国際化の波に呑まれるようになる。別にバンベルク響に限ったことではなく、来日する世界中のオーケストラで似たような感覚を味わっているように思う。伝統が失われるのを寂しく感じるか、機能性が高まるのを喜びと感じるかは人それぞれ。いずれにしても、世界中のオーケストラが変わってきていることは確かだ。
 演奏の方は、ブロムシュテットさんの若々しい(現在89歳!!)音楽創りにはまず驚かされる。各楽章とも全体的に速めのテンポ設定で、躍動的なリズム感に乗って、推進力も抜群。何と瑞々しくエネルギッシュな「運命」なのだろう。逆の見方をすれば、解釈に少々コクがないというか、インテンポで快走するイメージが強かった。もちろんブロムシュテットさんの持ち味なので、聴く側としては好みの問題となる。私は決してこのような演奏が嫌いなわけではないが、かといって前面的にBravo!!と感じる風でもない。演奏自体のクオリティは(機能的という意味で)極めて高く、文句の付けようもなく上手い。弦楽のパワフルなところなどは、日本のオーケストラも見習うべきだろう。そういう意味からも、やはり世界の一流のオーケストラの一つには違いないのだが、私としてはちょっとだけ、不完全燃焼の部分を感じていたのも確かなのである。

 アンコールは「エグモント」序曲。多少失礼な言い方になってしまうかもしれないが、この曲の演奏が本日一番と感じた。ブロムシュテットさんは、この曲では適度な間合いとタメ入れて重厚感を出し、走るところは推進力を漲らせる。生き生きとしてドラマティック。終わり良ければすべて良しということで、最後はBravo!!で締めくくった。

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