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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

10/27(土)第81回 日本音楽コンクール 本選会《ヴァイオリン部門》/優勝は会田莉凡、第2位は周防亮介

2012年10月28日 02時34分41秒 | クラシックコンサート
第81回 日本音楽コンクール 本選会《ヴァイオリン部門》
THE 81th MUSIC COMPETITION OF JAPAN "VIOLIN"


2012年10月27日(土)16:00~ 東京オペラシティコンサートホール A席 1階 4列 16番 2,500円(実際は2列目)
指 揮: 円光寺雅彦
管弦楽: 東京交響楽団

 昨年に引き続き、第81回 日本音楽コンクール《ヴァイオリン部門》の本選会を聴く。今年のヴァイオリン部門は応募者が129名。第3次までの予選を通過して本選会に駒を進めたのは、宮川奈々さん、大江 馨さん、坪井夏美さん、周防亮介さん、会田莉凡さんの5名。このうち宮川さんは昨年も本選に残り今年が再チャレンジとなった。
 本選会の課題は以下のヴァイオリン協奏曲の中から選択されることになっている(カデンツァは自由)。
【課題曲】
●バルトーク: ヴァイオリン協奏曲 第2番
●ベートーヴェン: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
●ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
●ドヴォルザーク: ヴァイオリン協奏曲 第2番 イ短調 作品77
●メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
●パガニーニ: ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品6
●プロコフィエフ: ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
●シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
●チャイコフスキー: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
 結局、本選入りした5名に選ばれたのは3曲のみ、バルトークの2番が2名に、ブラームスが2名に、メンデルスゾーンが1名に、選ばれた。今年もどういう訳か同じ曲が選ばれた。本選会では、ヴァイオリン協奏曲が5曲演奏される。4時間に及ぶコンサートは、緊張感も高く、聴いている方もかなり疲れるものだ。演奏順に簡単に振り返ってみよう。選考の最終結果は、最後に記載する。

●宮川奈々(1991年生まれ/桐朋学園大学 3年在学中)
【曲目】ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
 宮川さんは昨年に続いての本選入り。つまり安定した実力の持ち主ではあるのだが、もうひとつ何か抜け出すところが欲しい感じである。技巧は安定しているが、コンクール用にアピールを強くするためか、押しの強い演奏を試みたようで、音色にややバラツキがあった。近くで聴いていたせいもあるが、強めのボウイングには擦過音が混ざり、十分に楽器が鳴らないような箇所も見られた。一生懸命弾くことに感情が振り回されてしまっていたような印象だ。心理的に固くなって表現の幅が拡がらなかったようで、本来のチカラが発揮できなかったのではないだろうか。今日はトップバッターということで少々緊張があったかもしれない。

●大江 馨(1994年生まれ/桐朋学園大学 ソリスト・ディプロマコース 1年在学中)
【曲目】メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
 桐朋学園のソリスト・ディプロマコースに在学しているくらいの実力者であるのに、一方で慶應義塾大学法学部1年にも在学中という。まったくうらやましいかぎりの才能である。やはり男性奏者は全体に音が太い。誰でも知っているメンデルスゾーンで挑戦というのも、素直といえば素直なアプローチである。演奏にもそんな感じが表れていて、奇をてらったところもなく、非常に素直な演奏に終始した。全体には音もキレイだし、リズム感も良く、前へ向かっていく推進力は若々しくて好感度抜群。ただし低音部の強奏等では音程の乱れも感じられた。第2楽章の抒情的な主題などは速めのテンポでサラリと弾く辺りは、やっぱり男の子だなァ、という感じである。

★ここで休憩15分。ここまでは、大江さんの方が発揮度が高かったかなァ、といったところ。


●坪井夏美(1993年生まれ/東京藝術大学 1年在学中)
【曲目】バルトーク: ヴァイオリン協奏曲 第2番
 坪井さんの第一印象は、音が均質であること。極めて正確な音程と、低音部から高音部までの全音域にわたって音質が変わらないのである。これは音色が単純といった否定的な意味ではなく、バラツキのない安定した音が出せるだけの技巧を持っているというプラス評価である。とくにバルトークのこの曲では、調性も曖昧で目まぐるしく転調するし、12音階的に要素もある。拍子やリズムも変則的。従ってこういう曲では、安定した演奏技術が大前提となる。坪井さんの演奏は、全体を正確にまとめたという印象で、ちょっと教科書的だったかもしれない。ダイナミックレンジはけっして広くないが、構築力はしっかりしている。もちろんプラス評価である。

●周防亮介(1995年生まれ/東京音楽大学付属高等学校 2年在学中)
【曲目】ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
 周防さんは昨年2011年の東京音楽コンクールで優勝している実力者で、その時の優勝者コンサートで聴いたのが今年の1月のことだ。この9ヶ月間にまた一段とスケールが大きく成長していた。ブラームスの大曲にたいして正面から正々堂々としたアプローチ。楽曲の解釈もなかなかのもので、ブラームスの深い精神性にも踏み込んで、奥深いところを聴かせている。技巧的な安定感は言うに及ばず、全体から小さなフレーズにまで、細やかなニュアンスのある表現は実に多彩で、とても17歳とは思えない大人っぽい演奏であった。音色も素晴らしく、深みのある低音部からキレの良い高音部まで、男性的な骨太さと女性的な感じのする艶やかさか程良くブレンドされた、素敵な音色であった。ステージでの演奏経験も豊富だから、場慣れしているし、演奏家としても既にプロレベル。お金を取ることのできる演奏だと思った。ただ、最後にふと気になったのは、例えば提示部と再現部がこまかなニュアンスまで同じように表現されているように感じられたこと。聴いていて、1度目は上手いなァ、2度目はアレ…? 別に偉そうに批評できる立場ではないのだが、これだけ素晴らしい演奏ができるのだから、さらに踏み込んだ解釈があれば…と考えるのは贅沢だろうか。

★ここで2度目の休憩15分。この時点で、周防さんが1位、坪井さんが2位といった予想であったが…。最後の会田さん次第だなァと友人たちとの採点であった。


●会田莉凡(1990年/桐朋学園大学 ソリスト・ディプロマコース 4年在学中)
【曲目】バルトーク: ヴァイオリン協奏曲 第2番
 会田さんは名前は存じ上げていたが聴くのは初めて。ウワサのりぼんちゃん、というわけだ。再びバルトークの2番だが、会田さんのアプローチは強烈であった。まず楽器がよく鳴っている。ダイナミックレンジが極めて広い。繊細な弱音から最強奏まで、音量の幅はプロの中に入ってもまったく引けを取らないレベルだ。また音質も非常に豊かで濃厚である。もちろん、技巧的な点ではまったく問題なく、調性のない半音階なども正確だし、どんなに速いパッセージもサラリと弾いていた。一番印象に残るのは、押し出しの強い演奏で、スケールが大きいことだ。といっても強引な感じはなく、豊かな音量と音を濁らせない多彩な音色を繰り出し、ステージから客席の方に音楽を押し出してくるイメージ。また比較的自由度の高い演奏で、緩徐部分でのテンポの落とし方でオーケストラを押さえ込んでいくような場面も見られた。このようなスケールの大きな演奏は、松山冴花さんに似ているタイプだと思う。初めて聴かせていただいたのに、すっかりファンになってしまいそうだ。

★全員演奏が終了。この時点での私たちの採点では、周防さんと会田さんのどちらか、または両者が優勝、3位が坪井さんというランキングになっていた。聴衆賞の「岩谷賞」は周防さんでキマリだろう(会場の反応、拍手やBravo!がダントツに多かったから)。私としては、すっかり魅了されてしまった「りぼんちゃん」に1票を投じ、選考結果の発表を待たずに帰宅した。何しろ4時間に及ぶコンサートで、午後4時に始まり終わったのが8時であった。

 ピリピリしたムードの中で演奏された5名のファイナリストの皆さんと違って、私たちのような関係者でもないお気楽な聴衆にとっては、大好きなヴァイオリン協奏曲が1曲500円で聴くことができて喜んでいたりと、大変不謹慎であった。それでも若い人たちの演奏は、やっぱり元気があって、若さがあって、とても素敵だ。上手い下手も大事なことかもしれないが、挑戦することも若さの証であり、特権でもある。5名の皆さんにBravo!!を送ろう。皆さんの今後の活躍に期待したい。

 さて、最終の選考結果は以下の通りとなった。私の採点も概ね当たった。今日の本選会の採点結果だけで選考された訳ではなく、第3次予選で獲得した総和点数の60%を本選の点数に加算して、合計得点で最終の順位が決められたことを付記しておく。

【第81回 日本音楽コンクール《ヴァイオリン部門》最終選考結果】
  ●優 勝……会田莉凡
  ●第2位……周防亮介
  ●第3位……坪井夏美
  ●入 選……宮川奈々、大江 馨
  ※岩谷賞……周防亮介

 なお、「第81回 日本音楽コンクール《ヴァイオリン部門》本選会」の様子は、下記の通り、NHKのテレビとFMラジオで放送される予定。
  ●NHK BSプレミアム「クラシック倶楽部」 2012年12月3日(月)6:00~6:55
  ●NHK-FM「ベストオブクラシック」     2002年11月20日(火)19:30~21:10
  ●NHK Eテレ「らららクラシック」     2012年12月2日(日)21:00~22:00 ※コンクール全般

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