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7/6(金)日本フィル東京定期/広上淳一の意外なプログラム/尾高惇忠の交響曲「時の彼方へ」とバッハの「マニフィカト」

2018年07月06日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
日本フィルハーモニー交響楽団 第702回 東京定期演奏会《第1夜》

2018年7月6日(金)19:00~ サントリーホール A席 1階 2列 18番 3,500円
指 揮:広上淳一
ソプラノ1:鈴木玲奈*
ソプラノ2:吉田和夏*
アルト:中山茉莉*
テノール:吉田浩之*
バリトン:浅井隆仁*
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
合 唱:東京音楽大学
コンサートマスター:白井 圭(ゲスト)
ソロ・チェロ:菊地知也
【曲目】
J.S.バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068
尾高惇忠:交響曲「時の彼方へ」
J.S.バッハ:マニフィカト ニ長調 BWV243*

 日本フィルハーモニー交響楽団の「第702回 東京定期演奏会」を聴く。指揮は広上淳一さん。日本フィルのシーズンは毎年9月から始まり翌年の7月度で終了する。従って本日が「東京定期」としては2017/2018シーズンの最終回となる。
 本日のプログラムはちょっと変わっている。J.S.バッハの曲を初めと終わりに置き、その間に尾高惇忠さんの交響曲を挟むというもの。大編成の現代曲をバッハで挟むというのも異質なら、そのバッハの曲も大編成のオーケストラで演奏するという。古楽器やピリオド奏法などに対するアンチテーゼというか、流行に左右されずに自由な発想で音楽を楽しめば良いのではないか、という広上さんの提案らしい。20世紀の巨匠指揮者たちがやっていた手法だともいえる。

 前半は、まずバッハの「管弦楽組曲 第3番」。これを16型の弦楽5部を擁するオーケストラ+通奏低音のチェンバロで演奏する。確かに、最近では聴くことのではない、分厚い弦楽の響きと深いヴィブラートによる重厚な演奏だ。管楽器が色彩感豊かなのは良いとしても、ティンパニが強く打ち出して低音部を補強するようになると、不思議なもので、それだけでロマン派の香りがするようである。厳格なバロック音楽を人間の感情も露わに表現すると、こうなるということらしい。もともと濃厚な日本フィルの弦楽を敢えて16型にしているのだから、ブルックナーのようなバッハ・・・・というよう感じである。もはやチェンバロの通奏低音なんか、聞こえやしない。

 続いて、尾高惇忠さんの作曲による交響曲「時の彼方へ」。2011年9月、仙台フィルハーモニー管弦楽団の委嘱により作曲された。翌2012年にはNHK交響楽団の「MUSIC TOMORROW」で再演された。従って本日が3回目の演奏ということになる。2011年秋に初演された作品ということで東日本大震災とま関連を問われることが多かったそうだが、その年の2月に楽曲のスケッチは出来上がっていたため、直接的なインスピレーションは働いてはいないそうである。
 それでも第1楽章に表れる荘厳な響きや破壊的な造型は、大自然の怒りやそれに対する人間の恐れや慰撫する感情などを彷彿とさせる。このような現代の作品は、なかなか言葉では表現しづらいものだが、決して難解な音楽ではないし、むしろロマン派後期の音楽を発展させたようなところがあり、少なくとも人間の情感が豊かにそこに描かれているように聞こえる。感覚的には、自然とそれに対峙する人間という図式が感じ取れる。音楽的な構成は、一応は急-緩-急の3楽章形式で、第1楽章はソナタ形式風、第2楽章は間奏曲的な緩徐楽章、第3楽章には第1楽章の動機が循環してきてパッサカリアやフガートが展開するなど、構造的にもオーソドックスな面を持っている。とにかく造型のしっかりとした音楽である。
 演奏の方は、日本フィルらしい濃厚な色彩感とダイナミックなアンサンブルで、単なる音の集合体になってしまったりすることなく、実に人間味のある、人の情感が強く描かれた演奏だったと思う。

 後半は、再びバッハに戻り「マニフィカト」ニ長調の全曲。ソリストは、ソプラノ1が鈴木玲奈さん、ソプラノ2が吉田和夏さん、アルトが中山茉莉さん、テノールが吉田浩之さん、バリトンが浅井隆仁さん。合唱は東京音楽大学の学生さん達からなる混声合唱団である。ニ長調と明記しているのは、変ホ長調の稿(BWV243a)もあるからだ。本日演奏されたのはニ長調の稿(BWV243)で1733年の作である。全12曲で構成されている。テキストはラテン語である。
 ステージ上では、指揮者の下手側にソプラノ1、ソプラノ2、アルトが、上手側にテノールとバリトンの2人が椅子に腰掛けて待機、出番になると指揮者のすぐ横に立って歌った。合唱はステージ上、オーケストラの後方の雛壇である。
 楽曲の構成は、第1曲=合唱、第2曲=ソプラノ2、第3曲=ソプラノ1、第4曲=合唱、第5曲=バリトン、第6曲=アルトとテノール、第7曲=合唱、第8曲=テノール、第9曲=アルト、第10曲=ソプラノ1、ソプラノ2、アルト、第11曲=合唱、第12曲=合唱。なお、第3曲と第4曲のみが続けて演奏される。
 演奏はとても素晴らしいものだったと思う。私はバロック音楽やバッハについてはほとんど知らないので、つまり比較対象する経験も知識もないので、本来なら良いも悪いも分からないというのが正しい姿であろう。ただ、素人なりに聴いていても、豊潤で美しい音楽が演奏されていたし、歌手陣の歌唱もとても自然に聞こえていたので、つまりはとても良い演奏だったのだと思った次第である。歌手の中では鈴木玲奈さんだけが多少面識があり4回ほど聴いたことがあったので、親しみをもって聴くことができた。これまではオペラ・アリアばかりだったので、こうした宗教曲のソロを、しかもラテン語の歌唱というのはかなり異質な世界だ。しかも聞くところによると、玲奈さんは本日がサントリホール・デビューとのこと。そうした要素を鑑みても、クセのない美しい声で、堂々とした歌唱であったと思う。
 日本フィルの演奏は、濃厚で質感が高い。16型の弦楽で分厚いアンサンブルを響かせる。またトランペットが華やかなサウンドで存在感を見せていた。広上さんのアプローチは、モダン楽器によるモダンな演奏ということなので、大編成ならではの荘厳で華麗な演奏になっていた。
 一方合唱は、アマチュアには違いないので仕方ないとも思うが、いささかタテの線が合わずにキレが良くないように感じられた。まあ、聞き苦しいというほどでもなかったので、無難な仕上がりにはなっていたのだと思うが・・・・。
 というわけで、素人なりに感じたのは、とても素晴らしい演奏で、苦手なバッハなのに聴きに来て良かったと思った次第である。要するにどんなジャンルの音楽であっても、演奏が良ければ苦にならないどころが感動できるのがクラシック音楽に良いところ。日本フィルの安定的にクオリティの高い演奏は、いつも快い感動をもたらしてくれるから嬉しい。

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