読売日本交響楽団 第209回土曜マチネーシリーズ
2018年8月25日（土）14:00〜 東京芸術劇場コンサートホール S席 1階 A列 16番 5,150円（会員割引）
指 揮：ヨーン･ストルゴーズ
ヴァイオリン：シモーネ･ラムスマ*
管弦楽：読売日本交響楽団
コンサートマスター：小森谷 巧
【曲目】
シベリウス：交響詩「フィンランディア」 作品26
シベリウス：ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47*
《アンコール》
イザイ：無伴奏ヴァイオリン･ソナタ 第2番 イ短調 作品27-2 より 第4楽章*
ドヴォルザーク：交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
読売日本交響楽団の「第209回 土曜マチネーシリーズ」を聴く。
今月のマエストロは、読響初登場のヨーン･ストルゴーズさん。1963年、ヘルシンキの生まれ。フィンランドを中心にヨーロッパやアメリカで豊富なキャリアを持っているという。もちろん、シベリウスが得意のレパートリーというわけだ。
ゲスト･ソリストは、ヴァイオリンのシモーネ･ラムスマさん。昨年､2017年2月の「土曜マチネー/日曜マチネー」に続いて、読響には2度目の客演となる。前回はあまり良い印象はなかった。
1曲目はシベリウスの「交響詩『フィンランディア』｣。これがまた冒頭から金管がよく鳴っている。読響らしい明瞭で豪快なサウンドだ。ストルゴーズさんは初共演にも関わらず、短期間でこのオーケストラの特徴を掴んだようで、弦と管のバランスも良く、広いダイナミックレンジで、読響から本質的なサウンドを見事に引き出している。音楽的な解釈は、お国もの特有のイメージ、つまり森閑とした張り詰めた空気感と、熱く煮えたぎる魂を同時に描き出す。全体のスケールの大きな構成からディテールの細やかな旋律の表情まで、オーケストラを質感高く鳴らし、よく歌わせている。聴いていて素直に納得でき、感動をいただける演奏だと思う。
2曲目はシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲｣。ラムスマさんの登場である。彼女はオランダ出身で、スラリと背が高く、演奏もスケールが大きいイメージだ。昨年とはだいぶ印象が異なり、全体のクオリティ感が高い。音量もけっこう豊かで、押し出しも強い。第1楽章の初めの方はいささかギクシャクした印象もあったが、途中からは音楽の流れに乗り、その上でソリストらしい自由度を見せ、主張するところは強く押し出す。テクニック的には、やや荒削りな感じもするが、これは普段聴き慣れている日本人のヴァイオリニストたちの緻密さとの相違でそう感じるのかもしれない。逆に言えば、荒っぽく感じさせるだけ表情が豊かだということでもあり、また個性を前面に出して自分なりの演奏スタイルを貫いているのだとも言える。いずれにしても、シベリウスなので、エレガントな音楽ではないわけだから、アグレッシブな演奏の方が向いているという解釈なのであろう。ストルゴーズさんがバックで鳴らしているオーケストラも情熱的な「熱い魂」を押し出しているので、その点でも合っている。ダイナミックでゴツゴツした、エネルギーが噴出するような演奏になっていた。個人的な好みとしてはちょっとやり過ぎに感じてしまうのだが、これは人それぞれの好みによることであって、演奏自体はなかなか素晴らしい出来映えであったといえる。
後半は、ドヴォルザークの「交響曲 第9番『新世界から』｣。ここでも、ストルゴーズさんは読響から明瞭で豪快なサウンドを引き出していた。金管の伸びやかで輝かしい音、木管の自然体の柔らかさ、緻密なアンサンブルなのにパワフルな弦楽、ノリの良い打楽器。最大音量は日本でもトップといえる読響だが、ダイナミックレンジを広く取って、弱音を抑え込む。録音しているとしたら、技師泣かせの演奏だ。
音楽的な解釈は、どちらかといえばストレートでクセが全くない。全体像はごく普通に感じさせるが、ディテールにはかなり拘って、旋律を細やかな歌わせ、豊かな表情を付けている。それなのにクセがないのは、北欧的な素直さのような気がする。だから今日のドヴォルザークは、スラブ系の泥臭さは全くといっていいほど感じさせず、濁りのない北欧の空気感で演奏されているような印象だ。それでもとても聴きやすく、美しくダイナミックな音楽になっていた。まあ、これも好みの問題になると思うが、私はこれはこれで素晴らしい演奏だったと思えた。
名曲の名曲たるところは、様々なタイプの演奏にも耐えられる普遍性があるところだろう。
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指 揮：ヨーン･ストルゴーズ
ヴァイオリン：シモーネ･ラムスマ*
管弦楽：読売日本交響楽団
コンサートマスター：小森谷 巧
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シベリウス：交響詩「フィンランディア」 作品26
シベリウス：ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47*
《アンコール》
イザイ：無伴奏ヴァイオリン･ソナタ 第2番 イ短調 作品27-2 より 第4楽章*
ドヴォルザーク：交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」
読売日本交響楽団の「第209回 土曜マチネーシリーズ」を聴く。
今月のマエストロは、読響初登場のヨーン･ストルゴーズさん。1963年、ヘルシンキの生まれ。フィンランドを中心にヨーロッパやアメリカで豊富なキャリアを持っているという。もちろん、シベリウスが得意のレパートリーというわけだ。
ゲスト･ソリストは、ヴァイオリンのシモーネ･ラムスマさん。昨年､2017年2月の「土曜マチネー/日曜マチネー」に続いて、読響には2度目の客演となる。前回はあまり良い印象はなかった。
1曲目はシベリウスの「交響詩『フィンランディア』｣。これがまた冒頭から金管がよく鳴っている。読響らしい明瞭で豪快なサウンドだ。ストルゴーズさんは初共演にも関わらず、短期間でこのオーケストラの特徴を掴んだようで、弦と管のバランスも良く、広いダイナミックレンジで、読響から本質的なサウンドを見事に引き出している。音楽的な解釈は、お国もの特有のイメージ、つまり森閑とした張り詰めた空気感と、熱く煮えたぎる魂を同時に描き出す。全体のスケールの大きな構成からディテールの細やかな旋律の表情まで、オーケストラを質感高く鳴らし、よく歌わせている。聴いていて素直に納得でき、感動をいただける演奏だと思う。
2曲目はシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲｣。ラムスマさんの登場である。彼女はオランダ出身で、スラリと背が高く、演奏もスケールが大きいイメージだ。昨年とはだいぶ印象が異なり、全体のクオリティ感が高い。音量もけっこう豊かで、押し出しも強い。第1楽章の初めの方はいささかギクシャクした印象もあったが、途中からは音楽の流れに乗り、その上でソリストらしい自由度を見せ、主張するところは強く押し出す。テクニック的には、やや荒削りな感じもするが、これは普段聴き慣れている日本人のヴァイオリニストたちの緻密さとの相違でそう感じるのかもしれない。逆に言えば、荒っぽく感じさせるだけ表情が豊かだということでもあり、また個性を前面に出して自分なりの演奏スタイルを貫いているのだとも言える。いずれにしても、シベリウスなので、エレガントな音楽ではないわけだから、アグレッシブな演奏の方が向いているという解釈なのであろう。ストルゴーズさんがバックで鳴らしているオーケストラも情熱的な「熱い魂」を押し出しているので、その点でも合っている。ダイナミックでゴツゴツした、エネルギーが噴出するような演奏になっていた。個人的な好みとしてはちょっとやり過ぎに感じてしまうのだが、これは人それぞれの好みによることであって、演奏自体はなかなか素晴らしい出来映えであったといえる。
後半は、ドヴォルザークの「交響曲 第9番『新世界から』｣。ここでも、ストルゴーズさんは読響から明瞭で豪快なサウンドを引き出していた。金管の伸びやかで輝かしい音、木管の自然体の柔らかさ、緻密なアンサンブルなのにパワフルな弦楽、ノリの良い打楽器。最大音量は日本でもトップといえる読響だが、ダイナミックレンジを広く取って、弱音を抑え込む。録音しているとしたら、技師泣かせの演奏だ。
音楽的な解釈は、どちらかといえばストレートでクセが全くない。全体像はごく普通に感じさせるが、ディテールにはかなり拘って、旋律を細やかな歌わせ、豊かな表情を付けている。それなのにクセがないのは、北欧的な素直さのような気がする。だから今日のドヴォルザークは、スラブ系の泥臭さは全くといっていいほど感じさせず、濁りのない北欧の空気感で演奏されているような印象だ。それでもとても聴きやすく、美しくダイナミックな音楽になっていた。まあ、これも好みの問題になると思うが、私はこれはこれで素晴らしい演奏だったと思えた。
名曲の名曲たるところは、様々なタイプの演奏にも耐えられる普遍性があるところだろう。
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