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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

2/25(木)東京フィル/オペラシティ定期/チョン・ミョンフンの極上のマーラー5番/小林愛実が急遽出演

2016年02月25日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京フィルハーモニー交響楽団/第99回東京オペラシティ定期シリーズ

2016年2月25日(木)19:00~ 東京オペラシティコンサートホール A席 1階 4列(2列目)14番 5,355円(会員割引)
指 揮:チョン・ミョンフン
ピアノ:小林愛実*
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:三浦章宏
【曲目】
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488*
《アンコール》
 ショパン:ノクターン 嬰ハ短調〈遺作〉*
マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調

 東京フィルハーモニー交響楽団の今月のマエストロは桂冠名誉指揮者のチョン・ミョンフンさん。こういう世界のトップレベルの指揮者が定期演奏会を振ってくれるのは大変有り難いことであると同時に誇らしいことでもある。彼が指揮台に立つと東京フィルがいつにも増して素晴らしい演奏を聴かせてくれるのだ。とくに今日のマーラーを聴けば、東京フィルが世界の一級のオーケストラであることが確信できる。ただし・・・・いつもそうとは限らないところが、また東京フィルらしいのだが。
 今回のチョンさんは、今日2/25の東京オペラシティ定期、明日2/26のサントリー定期、2/28のオーチャード定期で、同プログラムを演奏する。メイン曲はマーラーの交響曲第5番だが、他にモーツァルトのピアノ協奏曲第23番が用意されていて、チョンさんの弾き振りが予定されていた。彼はチャイコフスキー・コンクールで第2位になったことがあるくらいのピアノの名手なのである。ところが、何かトラブルがあったらしく「指の故障」という理由で、ピアノの方はドタキャンになってしまった。急遽代役に立ったのは、昨年のショパン・コンクールでファイナリストとなり一躍脚光を浴びるようになった小林愛実さん。ホームページでは告知されていたが、プログラムの印刷には間に合わなかったようなので、本当に急の話だったのだろう。チョンさんの弾き振りは是非にも聴きたかったところだが、話題の愛実さんが聴けることになったのも嬉しいところだ。

 前半はモーツァルトのビアノ協奏曲第23番。チョンさんのオーケストラ・ドライブは端正なもので、上品ではあるが、濃厚で薄っぺらでないところが良い。古典派の造型をロマン派の音色で、といった感じだ。愛実さんのピアノもクセのない端正なもので、音の粒が丸く揃っている。音色も美しい。旋律がまあるく歌い、リズム感も軽快だ。モーツァルトだからだろうが、ダイナミックレンジの比較的狭く、小編成のオーケストラとの音量バランスをうまく併せている。その分、かえって抑制的すぎるようにも感じられた。もう少し自由に遊んでも良いかな、とも。
 逆に、ソロ・アンコールで弾いてくれたショパンの遺作のノクターンは、ねっとりと濃厚で、自由度の高い演奏。心に浮かぶ楽想を何の抑制もなく、そのまま鍵盤に置き換えている。なるほど、こういう、ある意味で個性的な演奏がショパン・コンクールで高く評価されたのかもしれない。

 後半は、マーラーの「交響曲 第5番」。これが近来稀に見るような素晴らしい演奏で、本当にビックリした。第1楽章の冒頭のトランペットから、普段とは異質なくらいの音楽的な響き。そう、何が良いかと言えば、とにかく「音楽的」に本物という感じなのである。やや遅めのテンポで、音楽が雄大で堂々としていて、迷いがない。スコアをなぞっているような、借り物のようなところが微塵もなく、チョンさんの音楽性と東京フィルの持てる力が120%も発揮されているといった印象で、描き出される音楽が、実に豊かな音楽なのである。
 具体的に言えば、主題の歌わせ方や、間合いの取り方、アンサンブルのバランス、そして各楽器の質感の高い音色など、部分部分も隙がないし、全体の構成、構築力も見事なもので、壮大に、ドラマティックに仕上がっている。全合奏のffになっても、爆音がホールに溢れてしまうこともなく、エネルギーはいっぱいでも豊かに音楽が鳴っているのだ。もちろんここにあるのは、ドイツ的な響きでもないし、ウィーン風の香りがあるわけでもない。チョンさんの解釈も決してドイツの伝統的なものを目指してはいない。そういった意味では、今日の演奏には地域性が感じられない(日本風でも韓国風でもない?)。スコアから導き出される純音楽を徹底的に追求したらこうなったのであろう。そして東京フィルの演奏も素晴らしい。トランペットやホルンなどの金管の鮮やかさ、オーボエやクラリネットの木管の柔らかくて自然な音色、弦楽の透明感のあるアンサンブル、適度な打楽器。全体の濃厚な音色と豊潤な響き。そして何よりも演奏から伝わって来る熱気とエネルギーが、聴いている私たちを強く共鳴させるのである。マーラーは長くて苦手といいつつも、この交響曲第5番はけっこう嫌がらずに聴いている。いろいろ聴いた海外の一流と言われるオーケストラの演奏と比べても、今日のチョンさんの指揮した東京フィルの演奏がこれまでで最高だったと言っても決して過言ではないだろう。
 その思いは会場にいた人たちにも強烈に伝わったとみえて、演奏が終わっても拍手は鳴り止まず、オーケストラのメンバーがステージから去っても鳴り止まず、ソロ・カーテンコールに応じたチョンさんが東京フィルのメンバーをステージに呼び戻す一幕もあった。チョンさんの熱狂的なファンが多いのも事実だが、東京フィルの定期会員をこれほど興奮させるにもこの人だけだ。素晴らしい演奏は、だれが聴いても素晴らしいと分かるのである。

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