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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

2/26(金)都民芸術フェスティバル/N響+アラベラ・美歩・シュタインバッハーのチャイコVn協奏曲

2016年02月26日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
2016 都民芸術フェスティバル 参加公演
オーケストラ・シリーズNo.47 NHK交響楽団


2016年2月26日(金)19:00~ 東京芸術劇場コンサートホール A席 1階 D列 25番 3,800円
指揮:リオネル・ブランギエ
ヴァイオリン:アラベラ・美歩・シュタインバッハー*
管弦楽:NHK交響楽団
コンサートマスター:ヴェスコ・エシュケナージ
【曲目】
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35*
《アンコール》
 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 作品27-2より第3楽章*
ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲「展覧会の絵」
《アンコール》
 ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第1番

 「2016 都民芸術フェスティバル」のオーケストラ・シリーズで、NHK交響楽団を聴く。このフェスティバルは、東京都民向けにで様々な舞台芸術を提供する文化事業であり、東京都と公益社団法人東京都歴史文化財団が主催している。舞台芸術の分野としては、オーケストラ、室内楽、オペラ、バレエ、現代舞踊、現代演劇、日本舞踊、邦楽、能楽、寄席芸能も民俗芸能の11のカテゴリーに分かれており、東京芸術劇場や東京文化会館などを中心に、1月から3月にかけてそれぞれ開催される。
 オーケストラ・シリーズでは、在京のブロ・オーケストラ8団体がそれぞれ1回ずつ、東京芸術劇場コンサートホールでコンサートを行う。それも各オーケストラの定期公演とは異なる内容で、指揮者もソリストも曲目も、ここでしか聴けない単独のコンサートになるのである。単独開催だから好きな席が選べるし、東京都の文化事業だからチケット価格も低く抑えられていて、なかなか良い企画だ。私はといえば、事情があってチケット獲得に失敗してしまい、4列目の右ブロックになってしまったのであるが・・・・。

 そして今日はN響の回で、ソリストがアラベラ・美歩・シュタインバッハーさんで、曲目がチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と、ムソルグスキーの「展覧会の絵」ときているものだから、当然のごとく完売となった。指揮は初登場のリオネル・ブランギエさん。

 さて会場の芸劇コンサートホール。どういうわけか、今日はステージ後方の反響板がなく、かつてのようにパイプオルガンが見えている。もちろん今日の曲目ではオルガンは使わないので、なぜ反響板を引っ込めたのかは不明だが、これがないと音が拡散して茫洋としてしまうので・・・・。

 プログラムの前半は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。アラベラさんは毎年のように日本に来てくれるが、どうしてもドイツ中心の曲目を演奏することが多い。だから今回、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を弾くというので、これは聴かなければと思った次第。私にとっても初めてのことだし、興味津々であった。
 曲が始まってみれば、今まで聴いてきたドイツの伝統的な佇まいを見せる演奏とはやや趣を異にして、ドイツ風味を捨てて、国際感覚の演奏というか、特定の色の着いていない、これが本来のアラベラさん流の演奏なのではないかと思われる演奏である。
 協奏曲のソロとしての押し出しはやや強めだが、演奏自体はエレガントに旋律を歌わせている。音楽の流れに見事に乗っていて、美しくレガートを効かせ、それでいてクッキリと明瞭な音色を保つ。エッジを立てるところでは鋭さも発揮するが、全体を覆うトーンはエレガントでマイルドだ。指揮者のブランギエさんとの打ち合わせも十分(?)で、時折急速にテンポを変えたりするが、オーケストラとのアンサンブルはピタリと合っている。
 また、アラベラさんは抜群のバランス感覚を持っているように感じた。協奏曲だから音量は大きめに出しているが、音色の柔らかさでそれをあまり感じさせない。実際には音がよく分離していて、オーケストラと対等に渡り合っている。大きく歌う場面でも、超絶技巧的な速いパッセージでも、当たり前と言ってしまえばそれまでだが、音程が極めて正確で、その辺りが抜群の安定感と存在感を見せる要因にもなっているようだ。
 国際感覚と言ったのは、指揮者とN響を含めて、ロシア風の土臭い雰囲気がまったく感じられなかったからだ。極めて純音楽的な演奏で、明瞭でスッキリ、エレガントでドラマティックなのである。
 アラベラさんのソロ・アンコールは、イザイの」「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番」より第3楽章。ピツィカートから始まり、弓を使えば重音が続く多声的な曲だ。ここでも音程の正確さが異なる声部をクッキリと浮かび上がらせ、抒情性も豊かに素晴らしい演奏を聴かせてくれた。

 後半は「展覧会の絵」。ブランギエさんはなかなか良い指揮者で、こういったフェスティバルの名曲コンサートにもかかわらず、N響から本気モードの質の高い演奏を引き出していた。冒頭の「プロムナード」でのトランペットなど、艶やかで色彩感たっぷり。オーケストラを劇的に操るのも巧く、「小人」では速めのテンポで切れ味も鋭い。ただ、今日の席が右ブロックだったせいで、オーケストラの低音部、つまりヴィオラ、チェロ、コントラバス、トロンボーン、テューバなどが、長い残響音と一緒になってほとんど分離しない低音の塊になってしまう。要するにドロドロと響いてくるだけだった。やはり反響板を出した方が良かったのではないかと思う。ヴァイオリンやフルート、オーボエなどの高音域は鮮やかで色彩的であっただけに、少々恨めしく思った。
 というわけで、演奏自体は、標題音楽らしいというべきか、説明的な演奏のような感じがしないでもなかったが、しっかりとした構成力があり、各楽器のバランスも良く、劇的なつくりも素晴らしい。ブランギエさんの音楽は、造形的に素晴らしいだけでなく、キレ味も鋭く、メリハリが効いていて、実に気持ちが良い。なかなか素晴らしい演奏だったと思う。
 アンコールは、ドヴォルザークの「スラブ舞曲 第1番」。まあ、この辺は・・・こんなものだろうという感じ。

 聴き終えてみれば、ブランギエさんという指揮者がなかなか素晴らしく、N響も本気で演奏してくれたので、かなり質感の高い演奏会になった。アラベラさんも見事だったし、お手軽価格で聴くのには贅沢な一夜であった。

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【お勧めCDのご紹介】
 今日はN響のコンサートだったのに、N響さんには申し訳ありませんが、アラベラ・美歩・シュタインバッハーさんのCDを紹介します。彼女のCDとしては最新のもので、2015年5月のリリース。内容はもちろん、チャイコフスキーとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲が収められています。共演はシャルル・デュトワ指揮、スイス・ロマンド管弦楽団。前年にジュネーブでセッション録音したもので、SACDハイブリッド盤です。

メンデルスゾーン : ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 | チャイコフスキー : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 (Mendelssohn : Violin Concerto, Op.64 & Tchaikovsky : Violin Concerto, Op.35 / Arabella Steinbacher | Orchestre de la Suisse Romande | Charles Dutoit) [SACD Hybrid] [輸入盤・日本語解説付]
アラベラ・美歩・シュタインバッハー,メンデルスゾーン,チャイコフスキー,シャルル・デュトワ,スイス・ロマンド管弦楽団
Pentatone / King International

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