ぶらっとJAPAN

おもに大阪、ときどき京都。
足の向くまま、気の向くまま。プチ放浪の日々。

黄金時代の茶道具 ~ 大阪市立東洋陶磁美術館 ~

2015-06-25 23:28:07 | アート

 中之島の中央公会堂の向かいにある東洋陶磁美術館は、1982年(昭和57年)に世界的に有名な「安宅コレクション」を住友グループ21社から寄贈されたことを記念して、大阪市が設立したものです。明治時代には大阪ホテルと銀行集会所があったところで、現在は緑に囲まれた落ち着いた感じの素敵な建物です。

 2点の国宝を所有しているのですが、今回の展覧会はそのうちの一点、油滴天目茶碗が展示されているというので、本日行ってまいりました。

 東京の三井記念美術館や出光美術館などで、茶道具(というか主に茶碗)はいくつか観ているのですが、黒楽とか、志野とか日本物が圧倒的に多くて、いわゆる唐物はあまり見たことがなかったので、今回の展覧会はものすごく新鮮でした。

 日本のものとは違う硬質な景色で、土のせいでしょうか、色味も違う。人の手を渡ってきたんであろう、ねっとりとした表面の質感も「道具」って感じでよかったです。

 中に銘「荒木」というのがあって、例の有岡城の荒木村重が所有していたという茶碗があったのですが、それこそ人の手脂で磨かれてきた表面のねばり気が、古の武将の存在を感じさせて不思議な気持ちになりました。考えてみれば、大阪城はここから目と鼻の先。変な話、そこらにそうした人たちの魂が徘徊していても何の不思議もないわけで、利休だってこのへんを歩いたことあるのかもね・・・なんて考えさせられる、さすが大阪は奥深い街ですね。

 そんな昔の時代の茶碗が持ち主を転々と変えながらも生きのびてきたのは大事に伝えようとする人間の気持ちがあったからで、道具としてならシンプルにただ形があれば用は足りるのに、細かな模様や細工、色味をつけたしていき、そこに愛着を持つのは、もう人間の性としか言いようがない感じ。美に魅せられるというのは、人間の根源的な欲求なのだなと思います。

ただ魅せられる美の種類は、人によって違っているようで、油滴天目はさすがの美しさでしたけれど、今の私の気分なのでしょうか、ちょっときらびやかすぎて、夢中にはなれませんでした。例えば白天目の滋味のあるしぶい色味のほうが断然好みです。

 ただ17世紀といえば、まだまだ素朴な時代、油滴天目の深く輝いた色味は今よりずっと貴重な、まさに宝石みたいなもので、そりゃあ魅力的だったんだろうと思います。太閤様はきらびやかなものがお好きだったし(^^)

 つい特別展だけに注目してしまいがちですが、ここは平常展示もいいものが揃っています。今度ゆっくり見に来たいと思います。

 

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北浜でNew Yorker気分♪ ~BROOKLYN ROASTING CAFE~

2015-06-24 22:06:45 | グルメ

 久しぶりに中之島方面へ出たので、以前から気になっていた”BROOKLYN ROASTING CAFE”に行ってきました。

ライオン橋のすぐ近く、NYブルックリン発のカフェで、この北浜店は日本の路面第一号店です。

ヒ〇ヤ大黒堂からの・・・

ブルックリ~ン!!!

 

居心地のいいソファ。とてもくつろげます。

ウォーターサーバーも素敵

カフェ内にお花屋さんが併設されてます。

もともとコーヒー豆屋さんなので、種類も豊富。聞かなかったですが、たぶん購入できるんじゃないでしょうか。サイトにオンラインショップもありました。さすがmade in NY。元気あふれるビタミンカラーのポップなパッケージです。店内も打ちっぱなしのコンクリートの内装に、自転車やキャップがディスプレイしてあって、ソーホーな感じです。

 コーヒーショップに入っておいてなんですが、実はストロングコーヒーが苦手なワタクシ、ここのコーヒーはアメリカ人好みの低刺激で飲みやすいです。そして何より、この景色!

テラスから。

ソファからでも十分楽しめます。

ブルックリン・リバーって言われてもそうかなって思います。実際は土佐堀川ですが(笑)。

ソフトドリンクもあります。今月からオレンジジュースの販売開始だそうで、濃縮還元でないストレートでさっぱりしたお味だとか。

次回、トライしてみたいと思います(^^)/

 

 

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三玲のもう一つの作品 波心庭 ~ 京都・光明院 ~

2015-06-23 22:19:57 | 京都

重森三玲氏の庭、続きます。

光明院は東福寺の塔頭で、1391(明徳2)年の開創。東福寺の庭園と同時期に作られた三玲氏初期の代表作です。

「雲は嶺上に生ずることなく、月は波心に落つること有り」(煩悩がなければ仏心という月は波に映る)という禅語から『波心庭』と呼ばれています。

写真の渦巻きのようなサツキとツツジの刈り込みは雲紋を表していて、その前にあるのは三尊石。釈迦三尊、阿弥陀三尊、薬師三尊を表しています。

「光明院」という名にちなんで、この三尊から放射状に光が発しているように、石が配置されています。

・・・なんてことは、写真を撮って帰ってきてから調べて初めて知ったことでして(^^;)。

なんにも考えず、しかも天気が怪しかったので、若干慌てていたこともあり、改めて写真を見返してみて、光明院の全体像も、美しさも何一つとらえられていなかったことを知り愕然としてしまいました。

記事を書くのもやめようかと思ったのですが、お庭自体は素敵なところなので、東福寺の庭を気に入ったならぜひ立ち寄っていただきたく、参考にしてもらえればと、しぶしぶアップです。

東福寺のすぐ近くなのですが、この辺りは塔頭がたくさんあり、全部を訪れるのは難しいのか、こちらは人もまばらです。

その理由の一つは、入り口に「いい加減な気持ちで入らないでください。きちんとお参りしてください」といった内容のかなり厳しめの但し書きがしてあるからだと思われます。何せ、建物は広いし、それがまたほぼ無人ですから、昼寝スポットや食事処にしちゃう不埒な輩がいるようで・・・。正直、三玲氏の庭があるって知らなかったら、私は恐れ多くて入ることはできなかったです。

でも、拝観料は志納ですし、お部屋に入って咎められるわけでもなく、心優しい管理人さんなのだと思います。なので、ちょっと緊張しますが、居心地は悪くありません。

 

春は桜やさつき、夏は新緑、秋の紅葉と季節によって見どころが変わるので、「虹の苔庭」とも呼ばれているそうです。

今回はさつきにはちょっと遅かったですね。子供の頃、通学路にツツジがたくさん植えてあったのを目にしていたものの、何も考えずに通り過ぎていましたが、ところどころに残った赤色を見ていると、花の色どりって大切だなと思います。

石好きなんで、ついつい石に近寄って撮ってしまいましたが、他の方のブログやなんかみてると、お部屋から遠目で見るのが美しいということがわかりました。実際、お部屋から座ってみたりもしたのですが、写真に収めることはしなかったので、残念です。

 

帰って来てから激しく後悔、今度行った時は、もっとお庭の良さを伝えられる写真を撮ってこようと思います。

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東山魁夷をめぐる旅 5 小さな破調が生み出す美 ~ 東福寺 八相の庭 ~

2015-06-22 22:43:06 | 東山魁夷

東福寺庭 1964-66年(『今、ふたたびの京都』 求龍堂)

うろ覚えで撮ったので、ちょっと構図が違いますね・・・^^; 

「今度こそ心を籠めて京都を描こう」と思い立った時、魁夷画伯はすでに50歳代半ばでした。京都に憧れ、画家として十分なキャリアを積んでいながら、それまで京都を描いたことは一切なかったそうです。その後、5年ほどの間、足しげく京都に通い、あちこちスケッチをして回ったとか。今回、いろいろ資料を調べていて改めて気づきましたが、北欧をモチーフにした作品にその萌芽があったとはいえ、画伯が「人間の営み」に肉薄したのはこの京都が初めてだったんですね。幼い頃から身体が弱く、両親の不和に苦しみ、戦争を経てこれからというときに相次いで肉親を亡くし、ある意味、風景に逃げ込んでいた画伯の魂がようやく地上に降りてきたということでしょうか。

『京洛四季』に収められている作品をはじめとして、画伯が描いた京都は、日本の古典文学で語られてきた日本風土の美しさを現代の風景の中に見いだそうとする心持ちと、人々の営みの積み重ねによって生み出された美を見出そうとする心持ちの両方が見え隠れします。古来、日本人は自然と共生してきましたが、その結晶と言える「庭」は、モチーフとしてたびたび登場します。魁夷画伯は、庭という景色に、自然と寄り添おうとする人間の美を読み取ろうとしています。

 東福寺の北庭・小市松が描かれたのは、1964~66年、魁夷56歳ごろの作品です。作庭が1939年ですから、名庭としての評判は十分に確立されたあとですね。とはいえ同時代作家の作品ですから、その鑑賞する眼には多少のライバル心と、共に日本独自の美を伝えようと精進する者として、大いに勇気づけられるものがあったのではないでしょうか。丹念に描き込まれたディテールに、三玲氏への尊敬の念がうかがえます。

 広い庭の整然とした市松模様からわずかに崩れ始める瞬間を大胆に切り取った構図は、絵としての面白さと共に、破調の美を愛する日本人好みのものとなっています。お庭は四つありますから、いろいろ候補はあったと思うのに、最終的にこの場所を選んだのは、人間の営みのなかで受け継がれてきた人工の切石と、その環境に適応して生き生きとした緑を見せる苔の姿が、「人と自然の共生」の象徴のように見えたからではないでしょうか。仲良く寄り添っていたものが次第に崩れ、自然に溶け込んでいくかのように数を減らしながら遠ざかる石の行方は、まるで人の一生のようにも思えます。

 単純ながら広がりのある構図は、私も含め、印象に残るのでしょうね。ブログで取り上げていらっしゃる方も多いですし、テレビでも見たことがあります。たくさんの人をひきつけてやまない魅力的な絵です。ちなみに作品は、長野県の東山魁夷館に収められています。いつか本物を見に行きたいです。

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若々しい三玲 ~ 京都 東福寺本坊庭園 ~

2015-06-21 22:35:49 | 京都

 

 紅葉の名所として名高い東福寺。青紅葉もまたみずみずしくて素敵です。これ全部紅葉したら凄いでしょうね。

 しかしながら、本日のお目当ては紅葉ではありません。先日、松尾大社の記事でも触れた重森三玲43歳の最初の作庭、東福寺本坊庭園です。

 以前、訪れた時は“東福寺方丈「八相の庭」”という名称でしたが、2014年に“国指定名勝”に登録され、「国指定名勝 東福寺本坊庭園」と改まったそうです。方丈を中心に、東南西北の四方に庭が配置されています。

 中に入ってまず目に入るのが、東のお庭。庫裡と方丈を繋ぐ渡り廊下の右手にあります。

 三玲が作庭の際に示された唯一の条件は「一切の無駄をしてはならない」という禅の教えに従って、本坊内にあった材料はすべて廃棄することなく再利用するというものでした。この東庭の円柱は、山内にあった東司(便所)で使用されていた礎石が再利用され、北斗七星の形に配置されています。

 

この写真からはわかりづらいですが、北斗七星の形に並んでいます。

 

奥には天の川も。

 伝統的な日本庭園の手法の上に子供の頃から馴染ある星座の存在が、とてもモダンに感じます。

 渡り廊下を挟んで左側は、枯山水の南庭です。蓬莱神仙思想に基づいて、石は蓬莱、濠洲などの山を、奥の築山は京都五山を表しています。

 つい先日、松尾大社のお庭を見たばかりだからかもしれませんが、庭からあふれ出る情熱的な若々しさに目を見張りました。数年かけて全国の庭を見て歩き、新しい日本の庭を作ろうとした三玲氏の思いが、ド直球で伝わってきます。

茶目っ気すら感じる躍動感に思わずテンションが上がりました(笑)。

  

とび魚みたい。今にも飛び出しそうです。

エッジの効いた黒。

宇宙を感じさせる渦巻きはすでにこの頃から。

 

いい石、使ってますね!

京都五山を表す築山。三玲氏の瑞々しい感性の発露である可愛らしい丸み。

 西と東のお庭で使われている市松模様は、廃材利用であるため、ふつう庭石では使わない直線を持った石を利用するための苦肉の策だったそうです。でも、それが見事に日本のモダンな美に昇華されています。

 

西庭。作庭当時はさつきがこれほど育っておらず、もっと市松模様に見えたとか。でも、育ってきた分、迫力はきっと増してますね(^^)/

北庭。石は勅使門から方丈に敷き詰められていた切石を再利用したもの。なのでまっすぐ。

 

 市松が崩れ、石がぽつんぽつんと一つずつになるところは、はじめは白川砂の上に置かれていたそうです。ところが、この場所が苔の生育に適した環境だったため、あっという間に今のようになってしまったんだとか。設計図が残っているので復元は可能ですが、今の風情も捨てがたいということでそのままにしてあるそうです。

  

 逆向きにではありますが、庭を通して図らずも三玲氏の生涯を肌身に感じることになりました。東福寺の庭はまだどこか人間くさくて、作られた庭も具象の世界から抜けきれず、人間界にとどまっています。一方、松尾大社の、特に上古の庭は、その人間臭い部分が浄化されて、透明度が増していた気がします。三玲氏が到達した枯淡の境地です。そんな境地への憧れはありますが、今はまだ東福寺の人間臭い三玲氏に愛着を感じてしまいますね。少しばかり青臭い野心も魅力的です。

 じめついた梅雨空の下での訪問でしたが、爽やかな風が吹き抜けるような庭に、心が明るくなりました。元気がなくなった時は、ここに来ればいいですね(^0^)

 なお、庭の解説については、東福寺のホームページを参考にさせていただきました。

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