ぶらっとJAPAN

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掌の宇宙 ~大阪中央区 『湯木美術館』~

2015-07-31 23:49:27 | アート

 先日ご紹介した昆布屋・神宗のある高麗橋3丁目から2本ほど道を隔てたところにある平野町通。沖縄ソーキソバからイタリアンまで様々な店が立ち並び、平日の昼時は近くのサラリーマンやOLで賑わいをみせるグルメスポットですが、その通りの御堂筋にほど近いビルに、小ぶりだけど粋な美術館を発見。茶道具の展示をやっていたので、好奇心も手伝い、入ってみました。

 ほとんどが香合でしたが、他にも風炉や羽箒などさまざまな茶道具が揃っていて、素人目から見ても、とても趣味がいい。しかも香合は17世紀の明時代とか、掛け軸は近松門左衛門! の画賛とか、利休が使っていた釜敷とか、こんなオフィス街のど真ん中でどういうこと? と思っていたら、実はこれ、あの吉兆の創業者・湯木貞一さんのコレクションを展示している美術館だったんです。その名もずばり湯木美術館。以前、ここに吉兆のお店があったらしいです。現在の吉兆本店は、神宗さんの目と鼻の先、高麗橋2丁目にあります。

 湯木氏は日本料理に茶懐石を持ちこみ、日本料理の格を上げ、料理界で初めて文化功労賞を贈られたというすごい方。昭和54年の東京サミットで、大平首相主催の昼食会で最高級の料理を出し、世界各国の首脳をうならせたとか(文芸春秋・文春写真館のサイトより)。

 どおりで、と大きくうなずきました。単体での佇まいも素敵なのですが、茶室にしつらえられた道具たちの展示写真を見ると、例えばシブイ鉄色の破れ風炉の傍に色っぽい志野茶椀、そして可愛らしい香合がセッティングされて、更にそれぞれの個性が生きているのを感じます。さすが盛り付けにもこだわる料理人ならではのこだわりです。

 湯木氏は茶道にも造詣が深かったので、おそらく実際に茶会で使用されたと思われますが、どの道具も小さい中に精巧で美しい装飾が施されていて、手に取ってつくづくと眺めたくなります。隔絶された空間で香をかぎ、手のひら大の宇宙を、重みや滑らかさを感じながら目で楽しみ、そして味わう。茶の湯とは、五感を駆使して愛でるものなのだと改めて思います。

なかに、戊辰戦争などで世相が揺れている時期に催された茶会の会記が展示されていましたが、不安ななかにも、今この瞬間を愛でようとする人々の心の動きがリアルに感じられて、興味深かったです。

最近はネットやCGなど、重力を感じさせない媒体ばかりに接しているので、体感する芸術とでもいうべき茶の湯はとても憧れます。いつか本物を経験してみたいです。

ちなみにこちらの展覧会は本日まで。8月は準備の為休館で、次回は9月1日から秋季特別展がはじまります。

 

 


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