ぶらっとJAPAN

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藤田嗣治展【兵庫県立美術館】

2016-08-20 22:25:16 | アート

 

アート関連続きますが、兵庫県立美術館で開催中の藤田嗣治展に行ってきました。

戦争画だけは東京の美術館で観たことがありますが、それ以外は、原画を観るのは初めてです。

今回はかなり大規模な展覧会で日本初公開のデッサンなど興味深い展示がたくさんありました。

個人的には、例えばゴーギャンの南の島の絵のような土の匂いの感じる素朴な画風が好みなので、正直、フジタの都会的で洗練された画風にハマることはありません^^;

それでもフジタの代名詞ともいえる乳白色の肌と流麗な線はため息が出るくらい綺麗でした。チラシにある絵を見てもわかる通り、輪郭線は墨汁と筆で描かれているようです。線の終わりがすっと細くフェードアウトしているのをみてもわかります。ただ、それがなければ極細で迷いのないラインが筆で描かれているとは到底信じられません。そもそも油絵であの淡く滑らかな色が出せるというのが奇跡みたいなものですよね。

日本画を思わせるファブリックの模様はオリエンタルな匂いもするし、ビスクドールのように無機質な顔にエロティックな肉体、ときたら、アムールな街パリでは、それはもうウケただろうなと思います。

フジタは自分で洋服を縫ってしまうくらいファッションにこだわりがあったそうですが、モデルの女性が着ている洋服を見ていても、その優れた美的センスがうかがえます。

その中で、ちょくちょく顔を出している猫の表情が妙に愛嬌があって、とても存在感がありました。展覧会ではフジタのスナップ写真も公開されているのですが、その中に愛猫の首根っこを抑えて(笑)スケッチをしているフジタの姿があって、チラシの猫が若干オラオラな空気を出している理由がわかった気がしました

愛する女性と愛嬌のある猫、そして芸術の都パリでの幸福な景色に酔っているところ、ガツンと一発現れるのが「アッツ島玉砕」。

後に戦犯とみなされる原因となった戦争画です。この絵を単体で見ても思うところは多々あるのですが、輝くばかりの美しい色彩から一転してのこの景色は・・・。

これは苦しすぎる人生ですね。

戦後、パリに戻ってから明るい作風の作品が現れたのが救いでした。

晩年に洗礼を受けてから、フジタは再び宗教画に取り組むようになります。

それは礼拝堂建設へと繋がっていくのですが、その過程で、それまで美しいけれども少し冷たい感じのしていたフジタの絵に、愛がにじみ出るような、柔らかいタッチが加わり、数多くの模索を経て、フジタの絵はようやくふさわしい場所にたどりついたように見えました。

臨終の地は異国でしたが、最後の伴侶が日本人女性だったというのは象徴的な気がしています。

観終わった後は、フジタという人間をもっと深く知りたくなる、そんな展覧会でした。

コメント
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