藤原新也『死を想い生を想う』
しおれ、悲しみ、滅入り、不安を抱え、
苦しみにさいなまれ、ゆらぎ、くじけ、うなだれ、
よろめき、めげ、涙し、孤独に締めつけられ、
心置き忘れ、打ちひしがれ、うろたえ、
落ち込み、夢失い、望みを絶ち…
あとは生きることしか残されていないほど、
ありとあらゆる人間の弱さを吐き出すがいい。
藤原新也著『メメント・モリ』より
僕はインドで、ガンジスの火葬のシーンを随分見たんだけども、
一番ショックだったのは、死体を焼く職人がいるでしょう。
代々世襲制で、ずうっと死体を焼く職人を嗣ぐわけです。
例えば、一日に三体焼くとして、一ヶ月にまあ百体位、一年に千体位焼くんですよ。
仮に十年、そういう仕事をしているというのは、一万体位も屍を焼いてきている人なんですね。
職人として淡々として死体を焼いているわけですね。
例えば、風が横から吹いた時に、炎が横に逃げるから、
風上にサリーを翳して置く。
それで風が来ないようにしたりする。
焼けにくい部分というのは、例えば、頭とか、
そういうところは途中で大きな棍棒で叩き割るわけですよ。
そうすると、脳味噌がパッと飛び散って、沸騰しているから、
それに火がついて、花火みたいにパッと散ったりする。
膀胱に溜まっている水が沸騰して、火の中からシューッと小便が出たりする。
そういう火と水の凄い修羅場みたいなものを見てきた。
死体を焼く職人というのはそういうことを淡々とやっている。
特に、頭を叩き割るシーンを見て、なんか物を打ち割って、なるべく早くうまく焼くという。
それだけのために淡々と仕事をしているという。
そこが凄く最初は違和感を覚えたんです。
だんだん最後に人間が焼け残って、灰になって、彼らは最後に箒でパッと掃くわけですね。
それで川にパーンと灰を捨てる。川面に来ると灰が流れていく。
そういう光景をずうっと見続けて来て、逆に凄くわだかまっているものが消えていった。
今、人が死ねば、箒で一掃きで、最後はおれも箒で掃かれるのかという感じで、逆に未練が無くなった。
死んだらあの世に逝くとか、まだ輪廻の世界に望みを託している場合じゃない。
死んでしまえば箒で一掃きだという。
#photobybozzo
しおれ、悲しみ、滅入り、不安を抱え、
苦しみにさいなまれ、ゆらぎ、くじけ、うなだれ、
よろめき、めげ、涙し、孤独に締めつけられ、
心置き忘れ、打ちひしがれ、うろたえ、
落ち込み、夢失い、望みを絶ち…
あとは生きることしか残されていないほど、
ありとあらゆる人間の弱さを吐き出すがいい。
藤原新也著『メメント・モリ』より
僕はインドで、ガンジスの火葬のシーンを随分見たんだけども、
一番ショックだったのは、死体を焼く職人がいるでしょう。
代々世襲制で、ずうっと死体を焼く職人を嗣ぐわけです。
例えば、一日に三体焼くとして、一ヶ月にまあ百体位、一年に千体位焼くんですよ。
仮に十年、そういう仕事をしているというのは、一万体位も屍を焼いてきている人なんですね。
職人として淡々として死体を焼いているわけですね。
例えば、風が横から吹いた時に、炎が横に逃げるから、
風上にサリーを翳して置く。
それで風が来ないようにしたりする。
焼けにくい部分というのは、例えば、頭とか、
そういうところは途中で大きな棍棒で叩き割るわけですよ。
そうすると、脳味噌がパッと飛び散って、沸騰しているから、
それに火がついて、花火みたいにパッと散ったりする。
膀胱に溜まっている水が沸騰して、火の中からシューッと小便が出たりする。
そういう火と水の凄い修羅場みたいなものを見てきた。
死体を焼く職人というのはそういうことを淡々とやっている。
特に、頭を叩き割るシーンを見て、なんか物を打ち割って、なるべく早くうまく焼くという。
それだけのために淡々と仕事をしているという。
そこが凄く最初は違和感を覚えたんです。
だんだん最後に人間が焼け残って、灰になって、彼らは最後に箒でパッと掃くわけですね。
それで川にパーンと灰を捨てる。川面に来ると灰が流れていく。
そういう光景をずうっと見続けて来て、逆に凄くわだかまっているものが消えていった。
今、人が死ねば、箒で一掃きで、最後はおれも箒で掃かれるのかという感じで、逆に未練が無くなった。
死んだらあの世に逝くとか、まだ輪廻の世界に望みを託している場合じゃない。
死んでしまえば箒で一掃きだという。
#photobybozzo