都市直下地震の新たな脅威「長周期パルス」-超高層・免震ビルを一撃
福和 伸夫-名古屋大学減災連携研究センター長・教授
公明新聞4月24日2019年-要点抜粋箇条書き
長周期パルス=キラーパルス
2016年4月の熊本地震において国内で初めて観測された。
周期(揺れが一往復する時間)が約3秒もある大きな揺れが1回、地震発生10秒後に起きた。
通常発生するちいさい地震の周期は1秒以下で、耐震設計の建物なら、まず倒れることはない。
直下型の大地震、阪神淡路大震災でも、周期は最大で1~2秒程度。
長周期長時間地震動とは異なり、揺れは長くは続かず一回限り。
伝わる範囲も活断層近くにとどまる。
一撃で目前の相手を倒すカウンターパンチ。
たった一度の揺れで下層階の梁や柱まで壊し、建物を倒壊させる恐れがある。
今ある超高層ビルに施されている免振対策では対抗できない。
免振装置が擁壁に衝突してシステム自体が破壊されかねない。
直下型の大規模地震で地中浅くにある断層が大きくずれ、その表層部が地表にまで達すると出現する。
対策は?
福和 伸夫氏の回答
研究は始まったばかりで、まだ十分な解決策はない。
いささか無責任に聞こえるかもしれないが、「高い建物は造らない」ことに勝る対策はない。
台地と平地の境に活断層が走っており、かつ長く地震が起きていないところは要注意。
都市部では少なくとも活断層の上には高層ビルを建てない、あるいは建てるにしても十分な変形性能を持たせたり、免振装置がぶつかって壊れないよう、クリアランス(ゆとり)を十分確保した建物に限るべきだろう。
そもそも東京や大阪の地盤は柔らかく、言うなればプリンのようなもの。
そこに長周期の地震が起これば、プリンが皿の上で左右に震えるように大揺れするのは当たり前だ。
そんな地盤の上に超高層ビルが林立している現実を直視することから始める必要があるかもしれない。
この点は長周期パルス対策としてというより、むしろ南海トラフ巨大地震対策として協調しておきたい。
次の長周期パルスはどこで発生しそうなのか?
大阪の中心部を南北に走る上町断層帯。
東京西部の立川断層帯。
仙台市の長町・利府断層帯。
上記活断層で大きな地震が起きる回数は数千年に1回程度。
プレート境界型の巨大地震に比べて、活断層で大規模地震が起きる発生確率は極めて低く、揺れの範囲も限定的である。
専門家の多くも「過剰に心配する必要はない」としている。
長周期長時間地震動(東日本大震災)
東北太平洋沖の震源地から800キロメートル近くも離れた大阪市内の超高層ビルを10分間にもわたって揺らし続けた。
周期は2秒を超える。
対策の優先度は長周期パルスより長周期長時間地震動にあるべきで、数十年内に確実に起こることが分かっている南海トラフ巨大地震対策を、まず完璧に仕上げるべき。
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