☆ バレンタインに続き、女子同士で「バレンタインでもらったから~」なんて言ってお互いチョコレートを交換するホワイトデー。かくして、この日は全国の男子校が白けたりする。 ☆ カール・マルクスが逝った日(1883年)。後には家族と『資本論』の読み取ることが難し過ぎるくらい下手っぴな文字で書かれた草稿が遺され、さすがの同志フリードリヒ・エンゲルスも草稿の解読には苦労したとかしないとか・・・・・ ☆ 川口市のアパートで熟睡していたブクロ派のトップが、早稲田界隈からやって来た連中に過激な方法で叩き起こされた挙句に永遠に就寝させられる(1975年)。
本日記載附録(ブログ)
車線上の無残な動物の轢死体_瞬時に目をそむけ、遭遇した不運を呪う
しかし、彼は「かわいそうに」を飛び越えて_噴き出す感情は「もったいない」
誰もが知り謎に満ちたモグラ_身近な存在である哺乳類を研究する「モグラ博士」
自称「標本バカ」というほど標本にも魅せられた国立科学博物館動物研究部研究主幹
「モグラ博士」として知られると同時に、「標本バカ」の哺乳類分類学者_川田伸一郎(14/14)
【この企画はWebナショジオ(文=川端裕人、写真=的野弘路)】を基調に編纂(文責 & イラスト・資料編纂=涯 如水)
第5回 「無目的、無制限、無計画」の大切さ =2/2=
「うちのニホンカモシカの標本って昔はたぶん20くらいしかなかったんですけど、この4年くらい集めまくって、今では、登録しているので8000点、未登録も含めれば9000点くらいです。これだけあると、ヨーロッパモグラの8000点を超える研究ができますね。同じ種でも、必ず変異はあって、この前ためしに500点くらい歯の変異を調べてもらったら、やっぱりいろいろあるんです。一番後ろの歯、第三大臼歯って呼んでるんですけど、その後ろにもう1本歯がはえてるとか。それよりももっと由来不明の謎の歯が生えているのがいるとか。500見て1つ見つけたわけですけど、その1つだけで語るわけにはいかないから、最低でも、数千見ないといけませんよね。雌雄別に見たかったら、その倍ですよね。さらに年齢別に見たかったら──」
解明したい変異の頻度や、雌雄・年齢などの属性ごとの解像度次第で、8000、9000という標本の数が、決して大きなものでなく、必要最小限にもなりうる、というわけなのだった。
しかし、これだけたくさん集めて、収納はどうするのだろう。いくら、収蔵庫として専用のビルを使えるからといって、いずれはパンパンになってしまうんではないだろうか。
「いえ、もうなってます。置き場所がないんですよ。新しい建物を建てる予算が得られるのを待つばかりですね。それができなくても、集め続けるしかありません。いよいよ、ということになったら、貸倉庫に手を出しますかね(笑)」
なるほど、だから、壁際にどんどん箱が積み上げられたりしているわけなのだ。収容能力を超えてまで集める。本当に「無制限」だ。さらに言えば、部外者の心配をよそに、ここでも「無計画」において揺るぎなし、という様子だ。
収蔵庫を案内していただくうちに、「クリハラリスみたいな外来種ですとか、カモシカの頭だけ何千個というのではなくて、誰もが貴重だと認めるものもどうぞ」ということで、見せていただいたのは、モグラよりもリスよりもかなり大きな仮剥製が入った棚だった。
「アマミノクロウサギ。仮剥製を10以上持っているところはうちしかないと思います。たぶん70点くらいあるはずです。まだ、仮剥製になる前の状態のものも入れると120とか130とか」
これも、結構な数の「無制限」系の受け入れなのではあった。
「奄美野生生物保護センターというところから提供いただいているもので、猫に噛まれたり、蛇に噛まれたりで死んだやつです。うちに来る前にいろんな研究室で組織のサンプリングをされているので、あちこち切られていて、ちょっと修復士みたいな仕事になってます。もともとウサギって結構、皮を剥きにくいことも重なって、一体で一時間くらいかかってますね。これも、数を集めてよくよく見ると、結構、変異があって、それを研究したいと思っているところです」
しばらく留まった収蔵庫での時間は濃密で、頭がくらくらしてしまった。
さらに収蔵庫ツアーを続け、別の階の大部屋に足を踏み入れると、収納棚がなく、まるまる開けたエリアがあった。
仮剥製ではない、立派な大型哺乳類の剥製が所狭しと並んでいるのである。 いきなりホッキョクグマと目があってドキッとした。
ああ、これは知っている。よく博物館の展示で見る、「普通」の剥製だ。おまけに、上野の国立科学博物館の地球館3F展示室「大地を駆ける生命」に展示されているヨシモトコレクションの「展示されていない分」ではないか。
ヨシモトコレクションは、ハワイの裕福な実業家で日系二世だったワトソン・ヨシモト氏が晩年、父母の国の国立科学博物館に寄贈したものだと聞いている。収蔵庫に残された「展示されていない」剥製たちも、非常に迫力があり、まさに博物館という雰囲気を醸し出していた。
しかし、ぼくの印象に強く残ったのは、しっかりポーズを取った展示用の剥製や骨格ではなく、ひたすら収集され保管されている仮剥製などの圧倒的な存在感だった。
案内してくれた川田さんは、染色体の研究者として訓練を受け、モグラの研究でフィールドに出て、標本を作り、また博物館の標本で研究をするうちに、みずから、博物館の標本を集める立場になった。モグラが穴を掘ってネットワークを張り巡らすように、あちこちにネットワークを張り巡していたら、自らが「すべての標本が集まる(標本を集める)」自然史博物館という場に行き着いたのである。
モグラ博士と標本バカ。それは、コインの表と裏のように川田さんを特徴づけると同時に、フィールドと標本、サイエンスと標本、といった自然史博物館のテーマにもつながっている。本当に興味深いものを見せていただいた。
おわり
明日 新企画“ 噴火の予知を目指す藤田英輔 ”続く・・・・・
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