以前に、星組で「激情」が再演される、やったぁ
っていう記事を書きましたが…
「激情 ~ホセとカルメン~」は、10年ほど前に宙組の姿月あさと&花總まりのコンビで
上演され、芸術祭優秀作品賞も受賞している、柴田侑宏脚本・謝珠栄演出の
作品です
柴田侑宏氏の作品はどれもこれもセリフ回しが素晴らしく、
展開に無理がなく、宝塚ファンに人気があります。
謝珠栄氏の振付のダンスはソウルフルでダイナミック
姿月あさと演じるホセはこれまでの宝塚男役とは全然違う男性像ですが
男っぽい人じゃないと出来ない役だと思います。
花總まり演じるカルメンは、まるでカルメンが乗り移っているようでした…
音楽は斉藤恒芳氏、舞台芸術は日比野克彦氏が手掛け、当時話題になりました。
斬新だけどモダンでスタイリッシュで一切のムダが排除された
機能的な舞台セットには圧巻でした
たとえば盆が回った時に
クラブ・リーリャスパスティアのセットから寝室に転換したり、
斜めに切られたセットを組み合わせ、盆が回ったら十字架の形になったり…
上手く説明できなくてもどかしい
そんな「激情」が、私が現在最も贔屓にしている星組で上演され、
地方公演だったので見に行けずでしたがDVDでガマン我慢
柚希礼音率いる星組のためにリメイクされた「激情」のレビューです
初演とも比べながら書きたいと思います
まず総じてダンスが良かった!柚希礼音君しかり、夢咲ねねちゃんしかり。
礼音君ホセがカッコイイ
(初演の姿月あさとさんは、
ちょっとふっくらされていたので…
)
初演では、カルメンはホセを子供扱いしているような、
弄んでいるような印象を受けましたが、今回の星組のホセとカルメンは
”対等”な感じがします。ところどころでホセを気遣うカルメンが
見え隠れしていたし。
たとえばスニーガ中尉に「(ホセが営倉から)もう出て来るだろう、
今日あたり」と言われた時、ねねちゃんカルメンは
本当に嬉しそうな恋する女の表情をしていて、その後に
エスカミリオから「セニョリータ!」と声を掛けられても
この時は彼のことは眼中にもない様子のカルメン。
ホセがガルシアのことを問いただした時に、
「ああ、亭主だってこと?仕方ないだろ、向こうと先に会ったんだから」の
くだり、ハナちゃんカルメンは「ガハハッ」と全く
悪ぶった様子もないけれど、ねねちゃんカルメンはちょっと気まずそう。
「アタイ達の関係はまた別よ。」と諭す部分も言い聞かせるような
丁寧な言い回しで。
ホセとガルシアとの決闘シーンも
ホセがやられそうなトコロをカルメンが割って入って「ホセ!」と
叫ぶシーンがあったり。
そして最後にホセが後ろからカルメンを抱きしめて歌うシーンも、
初演ではカルメンがすごく嫌そう~~な、辟易したような表情ですが
今回は辛そうな、泣きそうな表情のねねちゃんカルメン。
初演の方がホセが惨めな感じです
地方公演なので人数の少なさはご愛嬌。
まずオープニングでホセとメリメ(『カルメン』原作者で語り部)と歌う
「自由と抑制」、歌詞はそのままでメロディがガラリと変更
歌は初演の方が絶対良い
出だしの駆り立てられるような
ピアノの伴奏や、たとえば「♪
心だけは空に向かい解き放とう♪」
の部分が初演メロディの方が歌詞に沿っている感じ。
締めくくりの「♪
生まれて来た真実求めて♪」のホセとメリメのハモリが良いのに
そして「春の祭り」。ホセ含め兵隊さん達の手袋が黄色に。
手の振付が独特なのでより手の動きを目立たせるためでしょうか?
エスカミリオ役は夢乃聖夏。ここでも人数の少なさがちょっと寂しい感じ…。
ジプシーの男達によるダンスのシーン、地方公演だからか
ダンスが不揃いで練習不足を感じてしまったのは私だけ?
真風涼帆さんのレメンダート(ジプシーグループ内の兄貴分)も
初演の樹里咲穂さんと比べちゃ可哀想なのだけどお歌が残念…
カルメン登場
カルメン演じるねねちゃんの腰の動きがすごい
花總まりさんはダンスは(無難にこなすけれど)不得意だったため、
比べるとねねちゃんのダンスの上手さが際立つ上に、
「本当はこんなダンスだったのね」と改めて思わされます。
ホセにバラの花をカルメンが渡すのに、初演では口に咥えてでしたが、
今回は原作通り花を投げてホセがパシッと受け取る…という演出に変更されてました。
ねねちゃんカルメンはダンスが得意なので、街での喧嘩シーンの
ダンスもちょっと時間が長くなっていました。
誘惑シーンでは、カルメンがホセにキスする、というのが新たに加えられていました。
チュッってしてホセが油断した隙にスルリと逃げます。
逃げた後に高笑いするのも初演にはなかったような?
クラブ・リーリャス・パスティアでのカルメンのフラメンコ。
舞台セットもそのまま。ねねちゃんカルメンのフラメンコ衣装が、
初演のハナちゃんカルメンのそれと比べてお粗末に
まずフラメンコ用の櫛(くし)のペイネタ。
ペイネタってこんなのですが…→
ねねちゃんもペイネタを左側に着けているけれど、随分控えめ。
そして全然違うのがドレスの裾を膨らませるためのパミエ。ねねちゃんカルメンの
お衣装は何だかペラペラなのにハナちゃんカルメンのお衣装はパミエたっぷりボリューミーなドレス。
そしてラブシーン…盆は、やっぱり回らずリーリャス・パスティアのセットのまま。
ちょっと動きに無理があるけど仕方がない。
それよりも、ねねちゃんのダンスが素晴らしい!後ろへの反り返り、
身体が柔らかいし、振付も少し変更。カルメンがより動く振付に。
↓カード占いから夫ガルシア登場、ホセとガルシアの決闘の場面の
舞台セットはこうなりました。決闘シーンは流石迫力でした
ガルシアは圧倒的に和央ようかさんが良いです
ドスがきいているし、長身でスタイル抜群で、ダンスもダイナミックで。
↓初演のビデオではあまり映らなかった、カルメンのエスカミリオとの
浮気場面がクローズアップ。カルメンを問い詰めるホセもカッコイイ
↓さすがに十字架のセットは出来なかったのでしょう、ホリゾント幕に
十字架を映す演出に変更。
↓闘牛場のシーン。闘牛用の牛はホセです。
礼音君のダイナミックなダンスが光っていました
↓ホセがカルメンを殺めるシーン。初演では現代風にピストルでズギューンでしたが、
原作に回帰し、ナイフで一突きの演出に変更。
ねねちゃんカルメンの「花が散るような倒れ方」が素晴らしかった
(脚本を手掛けた柴田侑宏氏の指示なのです、カルメンの倒れ方)
初演も素晴らしかったけれど、星組の「激情」もこれはこれで
新鮮な魅力があります