【宝塚】宙組 『激情 ～ホセとカルメン～』

原題はプロスベル・メリメ作の『カルメン』です。
この宝塚版のカルメン『激情』は、その年の文化庁芸術祭優秀賞を受賞しました
オペラで有名ですよね。それを、音楽も有名なオペラのものは一切使わず、
すべて宝塚のオリジナル。作曲家は斉藤恒芳氏。
そして舞台美術はモダンアートで知られる日比野克彦氏。

脚本は私の大好きな柴田侑宏氏。
演出はダイナミックな振付で知られる謝珠栄氏。
月組の『黒い瞳』もこの組み合わせでしたね。これも最強コンビだと勝手に思っています。
台詞、演出すべてにおいて無駄がない
脚本、演出、音楽、舞台・・・すべてにおいて錚々たるメンバーなのです

それに加えて、主役は・・・
私の約25年間の観劇歴の中で、最も輝いていると思う、宙組初代トップ、
姿月あさと＆花總まりのコンビ

この『激情』の舞台、見所も満載なんです。
まず幕が開いてからのホセ(姿月)×メリメ(和央ようか)との掛け合い、
そして謝珠栄の振付のダイナミックな「春の祭り」では、斉藤恒芳氏の
斬新で洗練された音楽にのせた、兵隊、ジプシー男、街の女＆闘牛士・・・の
それぞれ個性あるダンス。
宙組　激情　オープニング

http://www.nicovideo.jp/watch/sm6269151
カルメンがホセを誘惑する場面やカルメンのフラメンコ。↓

2人のちょっと過激なラブシーン、闘牛の場面や、
日比野克彦氏の舞台美術が光る十字架のシーンでの四重唱。

以前、宙組『エリザベート』について書きましたが、その『エリザベート』の
後に『カルメン』を演ってしまったんですよ

すなわち、黄泉の帝王トート閣下だった姿月さんは、衛兵隊のヒラ隊員で
一人の女に溺れて転落して行く男、ホセを。
ホセはちょっと宝塚のヒーロー像と比べると情けない感じの役どころですが、
姿月さんが演じると男の色気たっぷり、「コレは男らしい人じゃないと無理だな」と
感じさせる完成度の高い演技です
そして、気高いハプスブルグ家最後の皇妃エリザベートだった花總さんは、
情熱的に男を誘い、尻軽でちょっと下品で恋多きジプシー女、カルメンを。
花總さんがやるとガハハハっと笑ってもどこか上品に見えるから不思議。

この舞台は有難くもナマで観劇できたのですが、
(しかも1階真ん中前から8列目)その見事な変貌ぶりに驚嘆
本当にアレがトート閣下？本当にアレがエリザベートを演った人なのか・・・？
一番強烈だったのがやっぱりラブシーンでしたね当時も賛否両論あって。
「清く正しく美しく」を謳う宝塚でこの演出はアリなのか？と思うくらい刺激的。
私の他の観客もフリーズしていたのを、空気で感じました

結局最後の方はカルメンがエスカミリオ(湖月わたる)という闘牛士と浮気、
ホセとカルメンはお互い考えが相容れることはなく、ホセはカルメンを銃殺。
でも柴田氏の素晴らしい脚本の中では、
ジプシー女A：「ホセはアンタのために、2人も殺しちまったんだよ。(中略)
でも好きなんでしょう？」
カルメン：「好きよ。愛してる！でも縛られるのは嫌。」

カルメンのこの台詞で、ちょっぴりホセが浮かばれる気が・・・

そういえば、姿月さんのディナーショーでは、宝塚版『カルメン』では
使われなかったビゼー作曲のオペラ使用曲の数々を歌ってくれましたよ