犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

辞書の話~見坊豪紀①

2008-01-17 00:04:21 | 辞書の話
 三省堂からは,同じような規模の小型国語辞書が出ている。

新明解国語辞典」と「三省堂国語辞典」です。

 実は,この二つ,もともとは一つの辞書でした。金田一京助の名ででた『明解国語辞典』(昭和18年)です。
 初めての小型国語辞典としてベストセラーになり,その印税で金田一京助はアイヌ語の研究を続けることができた。その実,彼は辞書の編纂にはほとんどタッチしなかった。

 実質的な執筆者は見坊豪紀。彼はその後死ぬまで辞書編纂者として「用例収集」を続けます。

 ただ,明解国語辞典の共同執筆者である山田忠雄との間で「辞書観」の違いが表面化し,見坊は単独で「三省堂国語辞典」を構想。「明解国語辞典」を継承した「新明解国語辞典」の山田と袂を分かちます。


 三省堂国語辞典第四版には,初版からすべての序文が収められている。

 ざっと読んでみると…


〔第1版〕(1960)
金田一京助(編集者代表)による序文。特徴なし。つまらない。

〔第2版〕(1974)
見坊(主幹)の序文。「第一版刊行と同時に開始した現代日本語の用例採集」という、その後の見坊のライフワークへの言及が見られるが、「三国」を「新明解」の「弟分」と規定するあたり、いまいち自信なさげ。

〔第3版〕(1982)
いきなり「辞書は“かがみ”である―これは、著者の変わらぬ信条であります」で切り出す。同じ“かがみ”でも「新明解」は鑑であり「三国」は鏡であるとして、かつての兄貴に訣別宣言。新しい言葉を「見出しに立てる」ことが大切であり「その手続きを可能にする方法はただ一つ、用例を採集することであります。」と結ぶ。稀代のワードハンター見坊豪紀の信仰告白。

〔第4版〕(1992)
新版に対する並々ならぬ自信が、これまでの「であります」調から「である」調へ変わったところからも窺われる。見坊が「1日も欠かさず続けてきた」用例採集は「すでに五十年に及び、カードは百四十五万枚に達した」。「すでに第三版によってわれわれの先見性は証明されている」と断言、小型辞書ながら大型辞書をしのぐ新語・新語義を収録していることを誇る。いまや「新明解」眼中になしといったところ。

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御犬様

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