浅間山(あさまやま) 羽黒大神(はぐろのおおかみ)
【データ】浅間山 2338メートル▼国土地理院25000地図 車坂峠、浅間山▼最寄駅 JR小海線、しなの鉄道・小諸駅▼登山口 長野県小諸市甲又の浅間山荘(天狗温泉)▼石仏 二の鳥居の先。地図の赤丸印
【案内】小諸から浅間山への登山口は浅間山荘(天狗温泉)と車坂峠の二つあり、浅間山荘から蛇堀川に沿って続く道がかつての信仰の道で、山中にいくつかの石碑が立つ。霊神碑もあるところから木曽御嶽のような信仰登山があったようである。そのなかに「羽黒大神 大天狗 小天狗」と三柱の神名が並ぶ石塔がある。羽黒は出羽三山の羽黒山と思われる。羽黒山がこの浅間山中に勧請され、大小の天狗を脇侍とした理由はわからないが、重要な神として祀られたようにみえる。『浅間山の祈り』(平成13年、追分宿郷土館特別企画展図録)には「奥州湯殿山へ向かう行者が六月中に追分を通るとき浅間山登山を行う」とあり、私が住む千葉県八千代市の奥州参り(出羽三山参り)も、善光寺を巡って新潟、鶴岡へ出る三山講が多かったことなどから、浅間山麓でも出羽三山は身近な信仰として浸透していたと思われる。それは山麓に残る出羽三山塔からも説明できる。
浅間山信仰の拠点は北山麓の群馬県嬬恋村の延命寺、南山麓の軽井沢追分の浅間神社と御代田町の真楽寺の三か所あったことが分かっている。これに対して小諸には浅 間信仰の拠点になった寺社があったのかはわからない。登山道に木曽御嶽のような新しい信仰登山の石碑があることから、この道を支配する寺社がなかったのかもしれない。羽黒山が重要な位置を占めていることは、この道の中腹の火山館先にある浅間神社からもわかる。神社の賽銭箱には「浅間山大神 前掛山大神 羽黒山大神」とあり、社殿に収められた木札にもこの三神が記されていた。前掛山は山頂の浅間山に西に隆起した火口で、現在はここまで登ることができる。
【独り言】浅間山は活火山で、登山口の浅間山荘前に火山情報・レベル1(火山活動は静穏、火口から500メートル以内立ち入り禁止)と表示されていました。20年ほど前に浅間山の南にある石尊山に登ったときは、途中に避難シェルターが何か所もあったと記憶していますが、この浅間山荘から火山館の間には一つもありませんでした。20年前とは状況が変わっているのでしょうが、この道は浅間山の登山道では一番被害が及ばない道らしいのです。いま避難所を兼ねて建てられた火山館にしても、昔か らあった小屋を建て替えたものと管理人が話していたように、火山の被害が少ない谷間のようです。その昔の小屋の囲炉裏から見た牙山(きっぱさん)の写真が火山館に貼ってありました。いい写真なので一枚撮らせてもらいましたが、ここはたぶんこの上にある浅間神社の行者が住んだ行屋、八ヶ岳の行者小屋と同じ役目の小屋だったに違いないと思いました。
【続く】浅間山(長野)道標
安曇野 穂高 じゅんちゃ