戸室山(とむろやま) 笏谷狛犬(しゃくだにこまいぬ)
【データ】戸室山 547メートル▼最寄駅 JR北陸新幹線・金沢駅▼登山口 石川県金沢市俵町の医王山スキー場▼石仏 戸室山山頂の西。地図の赤丸印▼地図は国土地理院のホームページより
【案内】加賀藩金沢城の石垣の石を掘り出した山が戸室山。その南のスキー場があるキゴ山一帯も石を掘った山。二つの山の間、スキー場駐車場先の医王山寺が戸室山の登山口。長い石段から道が始まる。
山頂三角点の西、金沢市街がよく見える場所に大きな寄棟造りの石祠が2基祀られている。神仏を祀る石祠のなかで、屋根が流造りは神、寄棟造りは仏を祀るという傾向があるので、戸室山の石祠は仏堂とする。
大きい仏堂は高さ110㎝、小さめの仏堂は100㎝と内部に仏像を納めるには十分な大きさである。これも戸室石なのだろう。仏堂には戸室権現を祀っているのだろが、しかし室部正面に大きな石がはめ込まれていて室内を見ることはできない。
手もとに戸室山信仰の資料もないので戸室権現についてはわからないが、その東の医王山と一体の信仰とされている。この医王山は尾根続きの白山との関係があったことは知られている。
小さめの仏堂の前に小さな狛犬が鎮座している。頭が小さな狛犬は古風な印象。狛犬を研究している龍谷大学非常勤講師・山下立氏の資料(注)によると、このような形の狛犬を「笏谷石制狛犬(笏谷狛犬)」としている。笏谷(しゃくだに)は地名。戸室山の狛犬が笏谷狛犬かどうか私には判断できないが、以下は山下氏の笏谷狛犬資料から抜粋する。
笏谷狛犬とは、福井市足羽山(石谷山)麓で採掘される笏谷石で制作された狛犬。時期は室町時代から桃山、江戸時代までで膨大な作品を生み出し、これが桃山以降に各地に供給され、北海道・東北から山陰に至る日本海沿岸部、近畿・中京地域に作品が現存する。構造は台座供一石調成、初発期から幕末期まで作品は変わらない。
改めて戸室山の狛犬に戻ると、全体的な容姿と整ったタテガミは笏谷石狛犬のようだが、石が荒く黒い色が笏谷石らしくない。(注)山下立著「日本狛犬史から見た石造狛犬」2022年6月、日本石仏協会談話室資料