テニスと読書とデッサンと!

柔らかい温かさ。

かなり前のことになるのですが、

ある日、海に続く道を歩いていたら

何の前触れもなくなにか得体の知れないものが

私の胸の中に飛び込んできたような

不思議な感覚に襲われました。

目にも止まらぬ速さで入ってきたので

なにが飛び込んできたのかはわかりません。

いままでに経験したことのない

なんだかとっても奇妙な感覚でした。

気のせいに違いない。

そう思い直してしばらく忘れていたのですが、

その日、夜遅く家に帰ってベッドに入り

眠れずに本を読んでいたら突然胸の中で

なにかがコロンと転がったのです。

ウソだろ?エラいこっちゃ!マジか!

あれは気のせいなんかじゃなかったのか。

私の体温とは別の体温が私の胸の中に存在し

それが私とは異なるリズムで呼吸している。

”ひょっとしてオレ、妊娠している?”

だなんてジョークを飛ばしている余裕はありません。

私は急いで本を閉じ上半身を起こすと

着ていたTシャツを捲って

胸のあたりを凝視してみましたが

なんの変化もありませんでした。

やっぱり思い過ごしだと再び気を取り直し

読書灯を消して目を閉じました。

その夜、私は奇妙な夢を見たのです。

 

夜の帳が降りた公園に私が立っていると

金属が擦り合うような音が聞こえたのです。

見渡すとグローブジャングル(地球儀型の回転遊具)が

滑り台の横でゆっくり回転している音でした。

なにやらその中心が薄桃色に明滅しています。

まるで光が呼吸をしているみたい。

私はその光に惹き寄せられるように近づいていきます。

変だなとか怖いとかは感じませんでした。

むしろなにが光っているのか

気になって気になって仕方がありません。

そばまで行くとその光っているものは

復活祭で使われるイースターエッグのようでした。

なんてカラフルで美しいのだろうと

さらに近づきパイプに手を伸ばした瞬間、

それは公園全体が明るく見えるほど

強烈な光を放ったかと思うと、

私の方にスーッと音もなく移動してきます。

私は目が眩みそうになりながらも

目を閉じることはしませんでした。

というより、なにか見えない力で

目を開かされているような感じなのです。

いいえ、身体全体が金縛りにあったみたいに

身動きが取れません。

そうこうしているうちに

イースターエッグはグローブジャングルから

抜け出して私の周りを回り始めました。

ものすごい速さです。

足元に目をやると私の影がそれに合わせて

早回しの日時計みたいにグルグルグルグル。

 

「入っちゃって・・・いい?」

 

たしかそんな声がいきなり耳に届いたのです。

私はわけがわからず「なに?」って

聞き返そうとするのですが口が開かない。

(よく夢の中で経験するパターンですね)

 

「入っちゃおーっと」

 

そう言ってイースターエッグが

右肩のあたりから私の中に入ると

公園は再び暗闇に包まれました。

私は自分でもわからないのですが

なぜかとても安心したような気持ちになって

そのままグローブジャングルのすぐ近くで

仰向けになって眠ってしまったようです。

 

目が覚めたらなんの変哲もない普通の朝でした。

読みかけの本は栞が外れた状態で

ベッド脇の床に落ちていました。

そんな不思議なことがあって以来、

思い出してはときどき確かめるように

ジャンプしたり肩を揺すってみるのですが

なにかが転がるような感覚はありませんし、

ウルトラマンのように胸が点滅するような

こともありません。

ただなんとなくあのとき以来、

胸の中が柔らかい温かさで満たされているような

感覚がずっと続いているのですが、

それもやっぱり気のせいなのかも知れませんね。


ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「diary」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事