新田次郎
『新装版 劔岳 <点の記>』★★★
山岳小説を語る上では必須な一冊
--------(抜粋)
日露戦争の直後、前人未踏といわれ、また、 決して登ってはいけない山とおそれられた北アルプスの劔岳
測量官・柴崎芳太郎はその山頂に三角点埋設の至上命令を受ける。
山岳信仰から剱岳を畏怖する地元住民の反発、 ガレ場だらけの切り立った尾根と悪天候・ 雪崩などの厳しい自然環境、日本山岳会との登頂争い、 未発達な測量技術と登山装備などさまざまな困難と戦いながら山頂 に挑んだ柴崎一行の苦闘の姿をえがく。
山岳信仰から剱岳を畏怖する地元住民の反発、
巻末に著者自身による劔岳登山の記「越中劔岳を見詰めながら」付
木村大作監督による映画化作品(浅野忠信、香川照之、
第33回の日本アカデミー賞受賞
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御岳山の宿坊の本棚にあったのを手に取り、
途中まで読んでそのままだった。
いつの日か劔岳に登ってみたい。
と思ったことはないけど、気にはなる。
オトコのロマンみたいな山
(ここで男女平等とかはなしで)
富士山みたいに誰でもかもーんみたいなお気軽感はなく、
北アルプスに聳え立つあの尖った秀峰に惹かれ、
やはり「危険度が最も高い山」 と言われているからには挑戦してみたい山
一度は目指してみたい山かしら?
先に 「越中劔岳を見詰めながら」を読む。
(そう得意の解説巻末先読み(ネタバレ含って分かっていながら) )
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「 われわれは剱岳の山頂に三等三角点を設けるために来たのであって 、山岳会と登頂競争をするために来たのではない。 出発に先だってこれだけのことを云って置く。 よく心得て貰いたい」
「なあに、あせることはないですよ。 山は逃げたりしないですから」
鶴次郎が云った。その一言が救いになった。 四人は切戸を見下しながら深い溜め息をついた。
(われわれを剱岳の頂に立たせ給え。頂上への登路を示し給え)
「雪を背負って登り、雪を背負って帰れ」
という声が聞こえた。
「旦那、聞いたでしょう、あの声を・・・・・・」
「ああ聞いた・・・・・・」
「そういう話はちょいちょい聞いたことがある。 雷に当たって死んだ話、岩壁から落ちて死んだ話、 雪渓を歩いていて雪の割れ目に落ちて死んだ話、 熊落としの穴に落ちて死んだ話、そのほかいろいろあるが、 一番多いのは嵐にあって凍えて死んだ話だ」
九月に入ると八月より晴天の日が多くなる。だが、 台風が近づいて来ると、山は大荒れに荒れる。 当時ラジオはなかったから、 彼等が台風の接近を知る方法とすれば新聞だったが、 山の中にいるからそれはない。 しかし彼等は台風が近づいたことを予め知り、それに対する防禦策 をちゃんと講じていた、 彼等は台風の接近を雲の動きによっていち早く察知していたのであ る。
台風の接近に先だって、高い空に巻雲が現われる。 刷毛で掃いたような白い線状の巻雲の先端が鍵型に曲がっている場 合は台風が近づきつつある証拠だ。更に台風が近づけば、 山の天気は不安定になる。雲の動きが急になり、 驟雨が断続的にやって来る。 こうなると台風はかなり近づいたことになる。 しかしこの段階ではまだ気圧計の示度にはっきり現れない場合もあ る。気圧計の示度が下がり始めるのは、 かなり台風が近づいてからであった。
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