田口ランディ
『坐禅ガール』★★★★
『坐禅ガール』★★★★
先日くだらない恋愛小説が読みたいなと思って、
本棚の前を行ったり来たりふらふらして、なぜか目に付いた。
どうなの?(笑)
坐禅
精神統一
コロナで逢えてない知人との会話で「宿坊」の話題が出たのも一因
いやーランディ節は健在だった。
おもしろかった。
やっぱりこの方は表現が豊かでとても素直
そのひねくれた感情もよく分かる。
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男の人に求められる。好きになってもらえるって、 すごく素晴らしいことだと思った。 こんなに心が喜びでわき立ってくるなんて、信じられない。
やったあ・・・・・・。
不安が吹っ飛んで、私はお月さままで、 飛んでいけそうな気分だった。
誰かに好かれるって、なんてすてきなことなんでしょう。
一瞬で人生を変えてしまう。まるで、魔法です。
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「僕は補欠?」
「まさか」
「じゃあ、代打だ」
「怒りますよ」
「年下はいいよ、ぜったい」
「なぜ?」
「そばにいる。そして、そばにいる」
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正しさはいつも自分以外の他人を貶めるのである。
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この子は誰に電話をかけているのかしら。もしかしたら、 死んだ恋人とやらに電話をかけていたんじゃないか、 そんな気がした。 いったいどんな気持ちでつながらない電話を耳に当てていたのだろ うか。あるいは、 この子は本気で死んだ恋人としゃべっているんじゃないだろうか。
あの娘は死ぬかもしれないと思った。ある朝、 庭の松の木で首を吊っていそうである。
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「ねえ、以前にうつ病の人は美形が多いと言っていたけど、 そういうものなの?」
私はふと思いついたことを聞いてみた。
「ああ、そんなこと言ったかしら。そうね、 うつ病の人には独特の風貌があるわ。 独特の透明感というのかしら、 男も女もちょっと線が細くて美形が多いわね」
「その娘、美人なのよ。うつ病かしら」
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愛欲がないと女の視線は冷酷だ。馴れあった夫の顔は、 美醜がどうのという分別もなく平然と見ていられる。 なんの期待もないからである。
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「特に女性にとって恋愛はストレスなのよ。知っている? 女は男の二倍も恋愛でストレスを感じるのよ。 うまくいっている時はいいけど、 およそあんなに疲れるものはないわね。 そこに仕事や家族の悩みが加わってごらんなさいな、 老けこむに決まっているわ」
「まあ。じゃあ、あなたは、もう恋をしないの?」
そう言うと、彼女は私の目をまっすぐに見た。どきんとした。
「昔のような恋愛はしないわ。でも恋はしますよ。いつだってね」
「恋をしても、もう悩まないということ?」
「悩む。そうね、 あなた方はどういうことを悩むと呼んでいるのかしら。 多くの場合、 恋の悩みは相手が自分の思い通りならないことでしょう。 相手が自分の望むことをしてくれない、 相手が自分を好きになってくれない、 だから苦しいのではないかしら」
「そう言ってしまえばそうだわね」
「では、よう子、坐禅を続けてみればいいわ。 坐ってみて自分がどう変わるか、 自分で確かめるしかないでしょう。なんでも、 先に答えをもらってから始めるのではつまらないわ」
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坐禅
静かな密空間でわたしは仕事する。
夕方になると感染者が気になる。
さて今日は100?200?そろそろ300超えかしら。
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森の奥の湖水のような深い瞳でじっと私を見ています。 でもその視線は武器ではないのです。人を攻撃しません。 もっと温かな慈しみの雨のような視線でした。
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人間の心というのは変わることを拒むんです。 変わりたくないんですね。
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「よう子、知っている? 幸せを感じる脳内物質のセロトニンは腸からの指令で分泌されるん だそうよ。腸は第二の脳と言われてきたけれど、 本当は第一の脳かもしれないわね」
「初耳だわ、どういう時に腸は指令を出すのかしら」
「腸は自分の調子が良い時に指令を出すのよ。しかも、腸はね、 あったかいものが好きなの。だから、便秘も下痢もしていなくて、 ぽかぽかしてあったかい時ね。つまり、 おいしいものをほどよく食べて健康でぽかぽかしていれば、 あんがいと人間は幸せだってことだわね」
「じゃあ、いま私たちは幸せなのね」
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「風が思考なら、 感情は風で舞い上がる砂ぼこりのようなものです。それらはみな、 かりそめのものです。現実ではありません。 あなたの頭のなかにだけ起きていることです。 考えや感情に実体はないのです。考えも、感情も、 あるがままに観察しましょう。そうすることで、 しだいにおさまっていきます。でも、 そうなるためには時間が必要です。あなた方は、 簡単に自分の心を安定させようと思っているでしょうけれど、 それはね、無理なの。そう簡単に心は思い通りにはならないの」
時間が必要って、それはいったいどのくらいの時間なのだろうか。
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SWON