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1日1冊108円・・・・・・最近そうでもない。

[会社を休みましょう]殺人事件 吉村達也 1993年9月20日 光文社

2015-09-21 06:59:32 | ミステリー
 他人に仕事を任せず、何でも一人で抱え込み、「忙しい、忙しい」の連発で、いつもパニック状態のエリート社員・森川晶。その彼の身辺に事件発生! 猛烈部長が殺され、死に至る断末魔の表情がコピーにとられ、社内にばらまかれた。この会社騒然の異常犯罪で疑われたのが森川である・・・。しかし、最後の最後で、読者のあなたが思わず泣けてしまう感動のミステリー!
裏表紙より。
「老人週間」ヒャッハーな今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
①若人だから関係無い
②老人だけど関係無い
③関係無い関係無い
好きなのを選んでね!



一 会社を休みたい!

 ダイワビールの営業部に、森川晶というサラリーマンがおりました。
 年は二十九歳で、地位は主任営業の中でもバリバリのやり手――いわゆる『若きエース』という存在です。
その『若きエース』が日々思うことは・・・・・・

(休みたいなあ)
 主任に昇進してからというもの、ことあるたびに、森川はそう思いました。
(会社を休めたら、どんなにいいだろう)
ふーむ。
体力面より精神面だいね。


友人の東海林に電話で愚痴る森川。
「とにかく急に休みたくなった」
「だったら休めばいいじゃないか。病休とか、有給休暇とか、いくらでも方法はあるんだろ」
「そうじゃないんだ。前もって休暇届けを出して休みたいというんじゃなくて、いきなり、ある日突然、会社を休んでしまいたい――そんな欲求にかられてしかたないんだよ」
お、おう・・・・・・


「おまえの言い分を聞いてると、休みたいというよりも、むしろ、蒸発したい、って気分になっているんじゃないのか」
うん・・・・・・『危ない兆候』だよね。


「おまえ、奥さんに相談したか」
終了
嫁といちゃついてればいいと思います。

学生結婚した嫁の悦子は『マイペースな女』。
 ほんとうに自分が精神的に追い込まれてSOSを発したときに、悦子は妻として親身になって助けてくれるのだろうか。
 正直いって、それが心配でならなかった。だから、会社での悩みとか不平不満グチなどは、悦子には洩らさないようにしていました。彼女に心配をかけたくないからではなく、プロポーズのあのときと同じように、自分本位の冷たい反応が返ってくるのが恐かったからです。
確かにプロポーズへのリアクションとしてはドライな感じだったけど・・・・・・
こんな状態で本当に大丈夫なのか、森川。


 しかし――
 猛烈サラリーマンとしての森川を不安に陥れるような出来事が、九月の終わりに起こりました。さすがに、妻の悦子にも話さざるをえないような事件が・・・・・・。
そんなどこにでもいる(?)サラリーマンが、ある事件に巻き込まれるのであります。



二 係長? それがどうしたの

 会社中が引っくり返るような殺人事件が起きる前々日の金曜日、ダイワビールでは、突然の人事異動が発表されました。
しかも『全社員の三分の一』が該当するという『大型人事』でー


 適度な人事異動は会社に活性化をもたらす、というのが事実であるということを実証するような好例――それが、きょうの森川晶でした。
【祝】森川、係長に昇進
ついでに無能で嫌味な上司だった蜂谷課長は左遷。

『会社を休みたい』なんて気持ちはどこへいったのやら。
でもいいことあったんだからいいよね!
 吊り革につかまりながら、ひとりでニヤニヤしはじめるから、ほとんど変態です。
いいことあったんだからいいこと想像してもいいよね!
・・・・・・ほ、ほとんどだから!


 ボタンを押す。
 ――一件です。
 機械がいう。
 再生ボタンを押す。
 テープが巻き戻され、森川自身の声が聞こえてきました。
 ――えー、私です。きょう、係長に昇進するという内示がありました・・・・・・。
(聞いてないんだ)
(´・ω・`)


 ようするに、森川は妻に喜んでもらいたかった。いっしょに、昇進をうれしがってほしかった。
この辺、正直その・・・・・・女子かと思った
嫁がいるとそういうもんなのかしら。


「どうしてよ」
「なにが」
(´・ω・`)




三 部長が殺された
森川がふてくされて土曜、日曜と過ごしていると、
森川が世話になっていた秦野部長が殺されたとの報せが!

「つまりだな、森川。秦野部長は、殺されるときにコピー機に顔を押しつけられ、死ぬまでの苦しみの表情を、そのままコピーに写しとられたらしいんだよ」
しかもこりゃあ猟奇殺人的な雰囲気・・・・・・!




六 辞めたいけれど辞められない

「ばかやろー、こんな会社、辞めてやる」
あろうことか、会社内で事件の犯人と疑われ出した森川。
もちろん面白いはずがない。

悦子に愚痴は洩らさないようにしていた森川だけど、
流石に今回ばかりは会社への怒りをぶちまけた・・・・・・ら・・・・・・
「甘いんじゃない? アキラ」
「あま・・・・・・い?」
「そうよ」
以下悦子の「仕事観」・・・・・・
いや、「晶の人物評」というべきかな。


 まさか、そういった概念が全否定されるとは思ってもみなかった。
第三者として森川の言い分を見ると、やっぱりその、女子か。
・・・・・・「仕事人間」は耳が痛くなるかもしれません。



七 別離の予感

(あんな理由で秦野部長が殺されるとは・・・・・・。それじゃあサラリーマンて、なんのために会社で頑張っているんだ)
事件の「目撃者」が知った犯人の動機とは・・・・・・?




八 やっぱり会社を休みたい

「もう、おれはなんのために働いているのか、ぜんぜんわからなくなったよ」
東海林と飲みながら愚痴る森川。


「一輪車に乗ったサーカスの熊かよ」
「そうだ。観客からは上手じょうずとほめられ、調教師からはアメとムチでおだてられたり叱られたり・・・・・・」
 そう言われれば、森川はまさに自分がそんな立場のような気がしてきました。
ここで「皆そうなんじゃよ」なんてことを言っていると手遅れるらしいよ。


「だけどさ、たまには熊さんも反抗することがあると、知らしめておいたほうがいいんじゃないのか」
「うーん・・・・・・」
「それとも、ずっといい子のままで、くたびれ果てるまで走りつづけるかい」
嫁とギクシャクしているあたり、すでにおかしくなり始めているのです。

その時・・・・! 圧倒的 閃きっ・・・・・・・!!
「すごく夢があるアイデアを、いま思いついたんだよ。この方法だったら、おれみたいな性格の人間が、ある日突然に会社を休んでも叱られない。そういう最高の方法を見つけたんだ」
「どんな方法だよ」
「まだ秘密だ」
 そう言って、森川はにっこり笑いました。
ミステリーで『にっこり』という表現が出るとは思わなかったよ。
きっと幸せハッピーな終わり方をするんだね!
『思わず泣けてしまう』って喜びの涙のことだったんだね!ね!



買え!そして読め!
「[会社を休みましょう]殺人事件」・・・・・・リーマンを斬る剣なり!
目次で驚いたミステリーは初めてだよ。


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