建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

山留 (3)

2009-06-17 09:13:45 | Weblog
……………………………(山  留 3)……………

最近の失敗話もある。

建物から敷地境界線まで20㍍の空き地がある現場で5㍍の掘削工事の時、
「なんとでもなるさ」
と思って山留工事を計画して、危機一髪だった事もある。

掘削底面から45度の範囲、つまり今回は建物から5㍍迄が掘削工事の影響ラインである。
 まだ境界まで15㍍残っているし、山留が多少傾いても影響は少ないと簡単に考えてしま
った。
 自立方式を採用して、水平切梁は架設しないのであるが、地上で3㌢は山留が内側に傾くとしても、地面にヒビの発生は10㍍附近までだろうと想定した。 
         
掘削開始した時点から山留の垂直度を計測するのが普通であるが、
「別に被害は出ないだろう」                 
と安気に監督をしていたら突如、垣田部長から、       
「山留は何㍉動いてるんだ?」                
「そんなに動いていると思いませんが…」           
「測っていないのか!測ってなくて何を監理してるンだ!」   
そう言われても最初に測っていないので、1ヶ月経過していても答えられない。
「今更計測記録を作製しても、面倒なだけである」
とは答えられるものでもない。

 渋々であるが、部長の指示に従って実測をしてみると、計算よりも山留がかなり傾いて
いる事が判明した。
 毎日毎日山留壁を見て廻っていても、徐々に傾いている事に肉眼では気がつかなかっただけであり、傾き数字をみて背中の冷や汗も凍るほどゾッとした。

(ここで大雨でも降って地盤が緩むと大変な事になるかも知れないし、小雨が3日間降り
続けばどうなるだろうか…)
と悪い予感が当たるかも知れない。

 掘削終了時から傾き実測値を毎日記録していれば、少しは手を打っていて、傾くのを少
しは遅らせただろうが、既に傾く想定限界値になっていて、もうこれ以上の傾きはさせた
くない。
 地下を創ってGL(地上路面)まで埋め戻すには、まだ40日は必要だ。
天候も計算に入れて山留自立の負荷を削減し、傾きを止める方法を至急講じる事になった。

「そんなにあったか……。ではこうして・・・」
垣田部長から色々と対策を電話で教えてもらいながら、叱られる事を覚悟していた私は、
自分自身の情けなさを痛感した。
(山留工事は失敗ばかりで成功だった事はあっただろうか……)

いまだに、私の現場に山留工事があれば、垣田部長は規模の大小に関係なく、
「今度はどうするンだ?」
と手を差し伸べて頂けるのは有り難く思っているし、甘えさせて頂いてもいる。

    《続く》…コメント待ってるからね~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする