Digital photo's diary

自称「暇人」によるデジタル写真日記。

エピソード11   毒をもって毒を制す

2023年11月16日 | デジタル写真
大変な思いをしてN君を卒業させたと言うのにK君と言う再た新たなのが入ってきました。
喫煙、シンナー万引きなど殆どは小学校で経験済みと言う、とんでもない経歴の子を担任した時の話しです。
ツッパリと言っても色んなタイプが居ます。
N君の様に剃り込みを入れて眉を全部剃って、長ラン等を着てオラオラ言ってる様な、格好で強がりを主張する連中は大した事ないです。
本当に危ないのは裏番長と言う輩で、格好はごく普通の中学生ですが、実は影の実力者で、表には出ないでツッパリ連中を裏から操っています。
他校とのトラブルや警察沙汰なんかを平気で起こすので実に厄介です。
そのK君にこんなのが居たんだよ・・・・と、卒業させたN君の話をしたら「あー、N先輩にバイクの乗り方を教えたのは僕です」なんてとんでもない事を。
その彼が2年生の時に職員室で大勢の先生に囲まれて「3年になったら担任は誰が良い?」と聞いたら、「受け持ってくれるだけで有難いです。我儘は言いませんが、あえて言うならばS先生(私)が良いです・・・。」とあろう事か第一指名を受けてしまいました。
周りの先生方は「もう決まりだな!!」なんて人の気も知らないで面白がっています。
当時の私は年齢的にも中学校の経験年数からしても、そういった子供を受け持たざるを得ない立場だったので正直覚悟はしていましたけどね。
「じゃ、担任になったら俺の言う事は聞くのか!!」みたいな話のやり取りもあって結局担任を受けることになりました。
卒業させたN君とは違って180cmの体格にはそれなりの風格も威圧感もあり、裏番長の素質は十分でしたが、N君と違うのはオラオラ感は全然無くて,聞く所はちゃんと人の話が聞けたし、何よりも腰が低く何人もの先生方を前にしても物怖じもせず堂々とこれだけの事を言える器でしたから並みの不良では無いのは分かります。
運が良かったと言うか、たまたま私と同じく釣りが好きな子だったので休みの日に一緒に釣りをしたりしました。(私的には楽しみながら生徒指導をしていた訳です。)
それが功を奏したのか、先生方に対しては従順で、歯向かってきたりする事も口答えした事も無く前歴さえ知らなければ普通の中学生でした。
ただ、他の不良たちが何かを仕出かした時、調べて行くと最終的にはKくんの影が必ず見られました。
一時、「缶ペン落とし」と言うのが流行りました。
缶ペンとはアルミで出きたペンケースで、気にいらない先生の授業時間にクラスの半分位の生徒が意図的に缶ペンを落すわけです。
静かな教室に突然カシャーンと鳴り響くわけですから授業が中断してしまいます。
落した子が普通の子で「済みません」なんて言われると先生側も、「気をつけろよ」位の注意しか出来ません。
それを良い事に、次から次へと落されてはとても授業を続けるわけにはいきません。
ツッパリ連中は気に食わない先生に対しては罵声を浴びせたり食ってかかったりで鬱憤を晴らしますが普通の子達はせいぜいその程度で抗議してくる訳です。(こういう事をやるのは大抵は女の子が多いですね)
其の話を聞いて、早速例のK君に事情を話し、「〇〇先生困ってるみたいだよー」と言っただけでしたが次の日からは缶ペン落しが無くなりました。
つまり、"毒をもって毒を制す"です。
こういった連中の方がある意味扱いやすいです。
強く注意すれば文句を言って反抗してくるし、滅多にありませんがちょっとほめたりすると一日中ペットみたいにくっ付いてくるし・・・・。分かり易いですからね。
逆に成績もよく品行方正で今まで何の苦労も嫌な思いもしていない子の方が扱い辛い時もあります。
そんな従順な彼も目立ちはしませんでしたが陰ではそれなりの悪さもしていました。
ただ、誰かをケガさせたとか、物を盗んだとかじゃなければ私も気にはしませんでしたけど・・・。
取り合えずは毎日学校に来て顔を見せてくれればOKでしたね。
一言でいうと「他人に迷惑を掛けない事」だけに的を絞って接しました。
例えば喫煙してる現場を見つければ当然注意しますけど、してるらしいよ位のタレコミがあっても、呼んで根堀り葉堀り聞く事はしませんでした。
警察の取り調べでも無いし。細かい事でいちいち怒っていたら何かしらで毎日説教しなければなりません。
こういった子供に対しては飴と鞭をうまく使い分けるのがコツです。
成績もそんなに悪くなかったし、人当たりが良い子だったので、頼み込んで某私立の高校に入れて貰いました。
風の噂では、2年生の頃、同級生の喫煙の冤罪を被って退学になったとか・・・・。
所が5年位前に同窓会に呼ばれて行ったらその子がなんと介護施設の経営者になっていて「先生、その時が来たら僕の所に来て下さい」なんて名刺を渡されました。
出来すぎた話だと思いませんか?
確かにただ物じゃなかったようです。
一昨日、車検の為に車をもって行った所の店長が当時のツッパリの一人でした。
幾つになった?と聞いたら、もう51ですよ・・・なんて当時の面影はみじんも無くその辺に居る普通のおじさんになってましたね。
「出来るだけ安くやってくれよ」と言ってきましたが、パワハラでも何でもなく当時私に無駄な時間を使わせたのをお金に換算して返してくれと言う意味です。
先生の言う事を100%聞いて、無難な日々を淡々と過ごしていた子より少し位は反骨精神のある子の方が将来的には出世している様です。
まあ、終わり良ければ全て良しですが、色んな経験をさせて貰いました。
何年か後には今までに経験した事の無いような新たな苦難が待っていました。