弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

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唾液PCRやっと解禁

2020-06-03 00:15:52 | 歴史・社会
唾液でPCR検査可能に 新型コロナ 厚労省きょう通知、都が本格導入へ 2020/6/2付日本経済新聞 朝刊
『厚生労働省は新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査の検体に唾液を使えるようにすることを決めた。2日に自治体向けに通知する。鼻の粘液を採る従来の方法よりも医療従事者の感染リスクが低く、効率的な検査が可能になる。
・・・
国立感染症研究所が作成する検体採取マニュアルを改定し、今後は唾液を使った検査も可能にする。・・・
日本医師会は5月7日、唾液を検体に用いたPCR検査の実用化を政府に申し入れていた。』

以前から、国立感染症研究所のマニュアルを改定すれば可能、と聞いていたので、とっくに改訂されたものと思っていました。その割に動き出していないなと不審に感じていましたが。実は、本日になってやっと実現したのですね。

厚労省の自治体・医療機関向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症)を見に行ったら、ありました。
「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」の改訂についてで、
『このたび、マニュアルを別添(新旧対照表)のとおり改訂したとの連絡が国立感染症研究所からありましたので、お知らせします。改訂の概要については下記のとおりです。
   記
1.発症から 9 日間までの唾液での PCR 検査が可能であること。
2.検体の採取については遠沈管等の滅菌容器を用いること。』
とされています。

新旧対照表には以下のように記載されています。
『おおよそ発症から 9 日間程度は、唾液でのウイルス検出率も比較的高いことが報告されています(鼻咽頭ぬぐい液陽性の患者の唾液検体 85~93%前後で陽性)。加えて、発症後 10 日目以降の唾液については、ウイルス量が低下することが知られており推奨されません。
(Iwasaki S et al., medRxiv 2020.05.13.20100206; doi:https://doi.org/10.1101/2020.05.13.20100206,
令和2年度厚生労働行政推進調査事業補助金/新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業 自衛隊中央病院 感染症内科 今井一男(研究代表者 国際医療福祉大学成田病院 加藤康幸),
Williams E et al., 2020 J Clin Microbiol DOI: 10.1128/JCM.00776-20)』
てっきりデータを提示してくれているのかと思ったら、そうではなく、参照文献を探して読まなければならないのですね。不親切です。
最初の文献について、「https://doi.org/10.1101/2020.05.13.20100206」をダブルクリックすると、Comparison of SARS-CoV-2 detection in nasopharyngeal swab and salivaに案内されました。その中のpdfをクリックしたところ、
文献(Comparison of SARS-CoV-2 detection in nasopharyngeal swab and saliva)が表示されました。
患者76人について、鼻腔と唾液でPCR検査を行っています。うち、8人は両方とも陽性、1人は鼻腔のみ陽性、1人は唾液のみ陽性、66人は両方とも陰性です。
Figure 1 Aには、横軸を発症後の日数、縦軸をウイルスの量として、10人分のデータが載っています。△が鼻腔、●が唾液です。上記いずれかまたは両方が陽性であった10人のようです。発症後3日では鼻腔が陰性、19日では唾液が陰性、それ以外の8人(発症後7~13日)は両方とも陽性です。
文献本文では、「回復期には、唾液の方が鼻腔に比較して早くにウイルスが減少している。」「最近の文献では、鼻腔には死んだウイルスが溜まり、“擬陽性”となる。興味あることに、われわれの結果では、鼻腔に比較して唾液の方が迅速に陰性になる。口の中では死んだウイルスが唾液によって効果的に清掃されるようだ。コロナ感染症患者の回復確認には唾液の方が好ましい。」と記載されています。
即ち、北大の文献では、「発症後10日以降は唾液の精度が落ちる」のではなく、「発症後10日以降は唾液の方が正しく回復状況を示している」と述べているのです。

2番目の文献について検索したところ、唾液を用いたPCR検査に係る厚生労働科学研究の結果についてにたどり着きました。
こちらは、鼻腔PCRで陽性だった88人のみを対象とし、唾液のPCR評価を行っています。鼻腔で陰性だった人は含まれないので、唾液陽性/鼻腔陽性の比率において、必ず100%以下となります。
発症から1~9日は上記比率がほぼ100%であるのに対し、10~14日は30~60%に低下します。この点についてこの文献では、『発症から9日以内の症例では、鼻咽頭ぬぐい液と唾液との結果に高い一致率が認められた。』とのみ評価しています。

3番目の文献について検索したところ、Saliva as a non-invasive specimen for detection of SARS-CoV-2 Eloise Williams, et.al. DOI: 10.1128/JCM.00776-20にたどり着きましたが、全文を閲覧することはできません。

以上総合すると、第1と第2の文献で、発症後9日ぐらいまでは鼻腔と唾液で同じ結果となり、それ以降は唾液の方が早くウイルスが減少する点で、両文献は一致しています。そして、発症後10日以降で鼻腔と唾液に差が生じ、唾液の方が迅速に低下する点に関し、第1の文献では「むしろ唾液の結果の方が正しい評価結果だ」との分析であり、第2の文献では沈黙しています。
それにもかかわらず、国立感染症研究所マニュアルの新旧対照表では、『発症後 10 日目以降の唾液については、ウイルス量が低下することが知られており推奨されません。』とし、唾液検査結果に否定的です。なぜこのように、結論の逆転が生じるのでしょうか。
この点は、専門家の間でよく議論してほしいです。
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黒川氏賭け麻雀事件

2020-06-02 10:47:59 | 歴史・社会
黒川氏賭け麻雀事件には、いくつかの論点があります。
「新聞記者が高級官僚と仲良くなるのは問題だ」
「賭け麻雀は犯罪だ」
「緊急事態宣言下で3密の会合を行ってはならない」
「処分が甘すぎる」

ここでは、「新聞記者が高級官僚と仲良くなるのは問題だ」について取り上げます。

このブログの「官僚と報道機関の関係 2018-04-29」で以下のように論じました。
日本の報道・ジャーナリズムが「権力の監視」機能を発揮していない理由は、大きく次の2点に集約されると言います。
○ 記者クラブ制度
○ 特ダネ至上主義
ここでいう特ダネとは、
①その報道がなければ世の中に知られることがなかったような特ダネ
②明日公表されるニュースを今日独占して報道するような特ダネ
の2種類がありますが、数量的には②が多数を占めます。

日本のジャーナリズムのこのような問題点を記載した書籍として、このブログでは、過去に以下のような記事を書いてきました。
上杉隆「ジャーナリズム崩壊」2008-11-18
長谷川幸洋「日本国の正体」2010-01-05
牧野洋「官報複合体」2012-08-14

この中で、長谷川幸洋「日本国の正体」2010-01-05 について振り返ります。
日本国の正体 政治家・官僚・メディア――本当の権力者は誰か
長谷川 幸洋
講談社

このアイテムの詳細を見る

---ブログ記事抜粋--------------
大新聞をはじめとする日本のジャーナリズムは、「他紙よりも一刻も早く報道すること」を至上命題としています。そして、取材源を官僚に依存する記者は、官僚から特ダネ情報を他紙記者よりも早く受け取ることにより、特ダネをモノにします。実は情報を提供した官僚は、その報道によって自分の推し進める政策を後押しさせたいのであって、官僚自身の代弁者として好適な記者に特ダネ情報を漏らしているのです。このとき記者は役人から、政策を記したペーパー(紙)を併せて受け取ります。
官僚は、自分たちが推し進める政策を自分たちが思うとおりにうまく報道してくれる記者を選択し、情報を渡します。従って、官僚の政策を批判的に記事にする記者は情報が流れません。記者のうち、官僚から紙をもらえる記者は10人中1、2名しかいないということです。特ダネ記者になりたくて官僚に取り入っていくうちに、知らず知らず、記者は官僚の代弁者=ポチに成り下がっていきます。
記者は、「自分が官僚から信頼された結果として情報をもらえるのだ」と思い込んでいるそうで、「自分は官僚の代弁者に成り下がっている」とは気付かないのだそうです。

なぜ日本の新聞報道はそんなことになってしまったのか。以下の3点が挙げられます。
(1) 日本の新聞は、「他紙よりも一刻も早く報道すること」を至上命令とする。
(2) 情報を持っているのは官僚であり、官僚と記者との間に圧倒的な情報格差が存在する。
(3) 記者は「官僚は、自分たち記者と同様に中立の立場」と思い込んでいるところがある。
---ブログ記事抜粋終了--------------

さて、ここからは今回の黒川賭け麻雀問題についてです。
上記長谷川幸洋著「日本国の正体」でも明らかなとおり、日本の報道機関は、主なニュースソースを官僚に頼っており、特ダネをものにするには、高級官僚から「特別に懇意な記者」として扱われることが最重要です。相手が検察であっても同様です。東京高検の検事長という高級官僚に取り入って、公式発表の一日前に情報をリークしてもらい、それを報道することで「日本式特ダネ」をゲットできる記者が、「優秀な記者」と評価されます。その意味では、今回の麻雀の相手3人の記者・元記者は、新聞社から見れば「最も優秀な記者」です。
一方、検察側から見ると、自分のポチ記者に捜査情報をリークして記事を書かせることにより、世論を「推定有罪」に導き、捜査及び訴訟を検察有利に進めようとします。

現在の日本のジャーナリズムの病理の中で、今回の賭け麻雀は必然として生じた、ということができます。

さて、黒川賭け麻雀事件の論点のうち、「処分が甘すぎる」についてですが・・・
安倍総理は「法務省と検事総長が決定した処分について、内閣は受け入れただけ」と言い逃れしています。しかし、官邸が「この処分は甘すぎる。懲戒処分が適当。」と判断したのであれば、突き返せば良いだけです。検事長に対する懲戒処分の決定権は内閣が握っているのですから。「人事案の突き返し」は安倍政権の得意技ではないですか。
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検察を官邸忖度型に

2020-06-01 08:34:54 | 歴史・社会
安倍政権が内閣人事局を使って、日本の行政機構を「官邸忖度内閣制」にねじ曲げてしまった点について、前回記事にしました。
最近の検察騒動は、まさに、安倍政権が検察に関しても、「官邸忖度検察」を作ろうとしていたように見受けられます。
“定年延長”黒川弘務検事長に直撃取材 検察庁法改正で「安倍政権ベッタリ」の検事総長が誕生する
広がり続ける「#検察庁法改正案に抗議します」「週刊文春」編集部2020/05/10
『法務検察は、黒川氏と同期の林氏を将来の検事総長候補と位置付け、黒川氏を地方の検事正として転出させ、林氏を事務次官とする人事案を作成。ところが官邸側はこれを蹴り、露骨に人事に介入してきたのだ。
「官邸は過去3度廃案になっている『共謀罪』の成立を見越して、黒川氏の調整能力が欠かせないと判断し、彼の次官昇格を求めたのです。翌年の共謀罪の国会審議では答弁が心許ない金田勝年法相に代わり、刑事局長だった林氏が矢面に立ち、法案成立のために粉骨砕身した。ところが、17年夏の人事では再び官邸が介入。裏で汗をかいた黒川氏の留任が決まるのです」(同前(法務省関係者))
そして18年1月。林氏は三たび、官邸に法務事務次官就任を阻まれ、名古屋高検検事長に転出することになったのである。』

官邸は、黒川氏を次の検事総長にしようとしていました。現総長の稲田氏は、官邸の意を受けた辻裕教法務次官から黒川氏の63歳の誕生日までに退官するよう暗に迫られましたが、それを拒否しました。そこで官邸が考え出した裏技が、「東京高検検事長の定年延長」閣議決定です。これで、現稲田検事総長が、慣例に従って任期2年で退官すれば、官邸の思惑通り、黒田氏を検事総長に押し上げることが可能になる、はずでした。
官邸は、検察庁法の改正案の中に、検事総長などの幹部について定年延長の特例規定を潜り込ませました。1月末の閣議決定の前後だと言います。内閣法制局の審議も終了した改正法案について、そのあと、さらに閣議決定後に条文を潜り込ませるなど、私には信じられませんが・・・。

しかしその結果として、「#検察庁法改正案に抗議します」運動が激しく盛り上がり、今国会での成立が見送られました。そしてそのあとの「黒川氏賭け麻雀報道」です。

以上の検察に関する安倍官邸の対応を見ていると、内閣人事局を通しての官僚支配に味を占め、検察についても同じことをしようとしていた、としか思えません。

私は、現在の検察が、正しい方向に向かっているとは思っていません。検察、特に地検特捜部の独走に関しては、いくつもの記事を書いてきました。

八田隆著「勝率ゼロへの挑戦」 2014-09-07、(2)
陸山会捜査報告書虚偽記載事件 2012-07-18
検察vs小沢陣営バトルの行方 2009-03-19
大阪地検特捜部のFD改竄犯人隠避事件 2011-09-16
佐藤栄佐久著「知事抹殺」 2011-08-21、(2)
佐藤優氏の有罪が確定 2009-07-02
堀江貴文「徹底抗戦」 2009-05-19
最近では、籠池夫妻が長期拘留された事件がありました。

なかでも、陸山会事件における東京地検特捜部の罪は大きいです。当時、次の衆議院総選挙で民主党が勝利するのはほぼ確実でした。しかしその民主党、政権運営の力を有しているのは、代表である小沢一郎氏ただ一人でした。その小沢一郎氏を東京地検特捜部が狙い撃ちしたため、小沢氏は代表を降りざるを得ませんでした。その後の民主党政権で、鳩山総理、菅総理の下、どのような政治がなされたかは記憶にあるとおりです。もしも小沢氏が代表に座っていたら、小沢総理のもと、別の民主党政権が生まれていたでしょう。
一方の陸山怪事件では、結局小沢氏を立件することができませんでした。
このように考えると、民主党政権時代の悪夢を生んだ張本人は、東京地検特捜部の暴走が原因であった、という結論になります。

以上述べたように、現在の日本の検察、特に地検特捜部は、ほっておくと暴走する傾向を明らかに有しています。この暴走は防がなければなりません。霞ヶ関の官僚について、過去には「官僚内閣制」が支配していたのと同じ弊害です。
一方で、官邸が力を持ちすぎると、内閣人事局支配による「官邸忖度内閣制」に成り下がってしまいます。検察も同じです。今回の「検察幹部の定年を内閣が延長できる特例」の法制化を阻止したことは、その点で意味があります。
官僚機構について「官僚内閣制」と「官邸忖度内閣制」のいずれでもない良好な体制を実現すること、及び検察について、「検察の暴走」と「官邸忖度検察」のいずれでもない良好な体制を実現することは、どちらも重要な課題です。
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内閣人事局の功罪

2020-05-31 11:14:16 | 歴史・社会
日本の政治機構は、教科書的には「議院内閣制」と呼ばれています。内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名されます。内閣総理大臣が国務大臣を指名し、内閣総理大臣と国務大臣の合議制で内閣が運営されます。各省庁の官僚は、それぞれの長である国務大臣の指揮命令により、内閣の政策を実行していくというものです。

ところが日本では長い間、議院内閣制ではなく、「官僚内閣制」である、といわれてきました。各省庁の官僚は、自分の省益を第一に考え、省益と衝突する政策については、内閣から指示されてもそっぽを向く、というものです。
官僚が省庁単位で自分勝手に動く理由は、官僚の人事権を各省庁の事務方トップ(事務次官)が握っていたためです。
このブログの『高橋洋一「霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」(4) 2009-08-24』では以下のように論じました。
『・大臣には人事権がない
現状では大臣の人事権はすごく弱くて、事務次官がつくった人事リストをただ承認するだけ。
竹中さんが総務大臣になったときも、事務次官がもってくる人事リストを何度つきかえしても、同じ幹部候補のメンバーを担当だけ入れ替えてもってくるから、なかなか手こずった。
内閣人事庁ができると、こういったバカげたことがなくなる。
大臣が幹部を決めるときには、今までの事務次官がつくったリストに加えて、内閣人事庁が推薦するリストも参照できるようにする。
官僚にとっては、痛いところを突かれたと言ったところでしょう。自分たちが一手に握っていた人事権が弱まり、外部から人材が流入してくれば、営々と築き上げた昇進ピラミッドがぶっ壊れるに決まっている。既得権を失いたくない幹部や幹部昇進が近い上の世代ほど、なにがなんでも大反対するわけだ。』

日本特有の「官僚内閣制」を改め、何とか本来の「議院内閣制」を構築しよう、ということで、紆余曲折を経て、「内閣人事局」が誕生しました。
ところが、内閣人事局ができあがってみると、その結果、ちょうど良い「議院内閣制」が生じるのではなく、逆に振れた「官邸忖度内閣制」が生まれてしまったようです。
2年前のブログ記事『内閣人事局はどうなる? 2018-03-25』で論じました。
その当時、「内閣人事局」の評判が悪くなっていました。高級官僚が安倍総理と総理夫人に「忖度」しているのは、内閣人事局に人事を握られているからだと。
上に述べたように、内閣人事局は本来、それまでは官僚に牛耳られていた政治の主導権を、本来の議院内閣制に戻すための政策の筈でした。
それなのになぜ、最近のように、目の敵にされる事態となったのでしょうか。原因が2つ考えられます。

第1
お役人はそもそも、自らの人事権を持っている人事権者には頭が上がらない、上ばかりを見るいわゆる「ヒラメ役人」が大勢を占めているかもしれません。内閣人事局ができるままでは、省内の事務方トップ(次官)が人事権を握っていたため、省内の事務方トップ(次官)の意向を常に忖度して政策が立案されていました。
内閣人事局ができた結果、人事権者が省内事務方トップ(次官)から官邸に移行しました。ヒラメ役人たちは従来通り、人事権者に忖度する態度をとり続けた結果、今度は官邸に忖度することになってしまった、ということではないかと。

第2
第2代の内閣人事局長は萩生田光一氏です。安倍総理のお友達で、保守志向の強い政治家であることが記憶されます。
安倍総理は、内閣人事局で官僚の人事権を行使するにあたり、もっと穏やかに事を進めるべきだったでしょう。「官僚とは人事権者に忖度する人種である」ということに気づいていれば、今日のような状況に至ることなく内閣を運営できていたかもしれません。

いずれにしろ、内閣人事局という制度そのものが悪者視され、また公務員制度改革が逆行することだけが懸念されます。

さて、以上のように、安倍政権は内閣人事局を過度に自政権に都合の良いように運営し、日本の行政機構を「官邸忖度内閣制」にねじ曲げてしまいました。
そして同じ愚行を、検察に対しても行おうとした、というのが最近の検察騒動の根っこであるように思います。詳細は次回に
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感染者数増減の推移 専門家会議議事録

2020-05-30 10:38:07 | 歴史・社会
感染ピーク、緊急事態宣言の前だった 専門家会議が評価 5/29(金) 朝日新聞
『国内の新型コロナウイルスの感染拡大について、政府の専門家会議は29日、これまでの国の対策への評価を公表した。緊急事態宣言は感染の抑制に貢献したとする一方、感染のピークは4月1日ごろで、宣言前だったことも明らかにした。
専門家会議はこの日まとめた提言で、クラスター(感染者集団)の発生を防ぐ対策は、クラスターの連鎖による感染拡大を防ぐなどの点で効果的だったと分析。3密(密閉、密集、密接)の条件がそろうと感染者が多く発生していることを指摘し、対策を市民に訴えることができたとした。
4月7日に最初に出され、その後対象が全国に広がった緊急事態宣言については、人々の接触頻度が低いまま保たれ、移動も抑えられたため、地方への感染拡大に歯止めがかけられた、とした。
実際にいつ感染したのかその時点では把握できない。新規感染者の報告から逆算して時期を推定したところ、ピークは4月1日ごろで、緊急事態宣言の前に流行は収まり始めていた。休業要請や営業自粛が都市部で早くから行われていた効果や、3密対策を含めた市民の行動の変化がある程度起きていた、と理由を推察した。
ただ会議のメンバーからは「結果的に宣言のタイミングは遅かった」との声もある。』
全国の感染者の推移

朝日新聞(紙)では、5/30朝刊の一面トップで伝えています。しかしこのデータ、すでに5/1に公表済みのデータではないですか。

私が5/7に、「専門家会議の「状況分析・提言」」で述べたように、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」が5月初めに公表されました。
2020年5月1日版
2020年5月4日版
私は5/7ブログ記事の中で、
『5月1日版には、全国と東京都の例が示され、東京都については、縦軸を陽性者数とし、横軸を「確定日」としたもの(図2の左図)、横軸を「発症日」としたもの(図2の右図)、さらには横軸を「推定感染時刻」としたもの(図4)が掲載されています。
・・・
図4は、非常にきれいな図であり、感染時が3/10から3/25にかけて急速に陽性者数が増大し、(そこで下降に転じ)それ以降4/12に至るまで、急速に陽性者数が減少しています。・・・
3月25日の東京都知事による外出自粛の呼びかけで即座に感染が低減しているかのようです。4月7日の緊急事態宣言発出の時点では、感染者数はピーク時(3月25日頃)の半分以下となっています。・・・』
と論じました。
今回報道されている全国のデータは、同じ2020年5月1日版の3ページに掲載された図3そのもの(4/14以降のデータを追加したもの)です。
2020年5月1日版図3ですでに、
「3月中旬から3月いっぱい、全国で新規感染者数が急拡大した」
「3月末に拡大が減少に転じ、それ以降、全国で新規感染者数が急減少した」
点が明らかです。
5月も末になって、何を今更、といった感想を持ちます。

ところで専門家会議の今回評価において、
「クラスター(感染者集団)の発生を防ぐ対策は、クラスターの連鎖による感染拡大を防ぐなどの点で効果的だったと分析。」
と評価しています。ちょっと待ってください。2月以降、クラスター対策は必死に行っていたはずです。それにもかかわらず、3月中旬から下旬にかけて新規感染者数が急増した、という事実がデータで示されているではないですか。

3月末に、新規感染者数はなぜ急拡大から急減少へと転換したのでしょうか。私には、「国民が生活を変化させたからだ」しか思い当たりません。3月3連休の後、小池都知事が態度を豹変させて危機を煽り、志村けんさんの死亡が報じられました。日々の新規陽性者確認数は、2020年5月1日版の2ページに掲載された図1にあるように、3月下旬から急拡大を示し始めました。「今はニューヨークの2週間前だ」と叫ばれたのもこの時期でしょう。人々はこれら情報に基づき、自発的に外出自粛に本格的に取り組み始めた、その効果が新規感染者数の急減速につながりました。
横軸の日付を「確定日」とした図1の急拡大開始時期が、横軸の日付を「感染日」とした図3の急減速開始時期と一致している、というのは、興味深い発見です。

私は、緊急事態宣言を解除した現時点は、3月初めの時期と同じ状況であると理解しています。抗体保持者比率が増えているわけではなく、対策を取らなかったら、すぐに3月中旬から下旬にかけての新規感染者数急増が起こるでしょう。すでに起きているかもしれません。新規陽性者確認数が上昇に転じていますから。

専門家会議の議事録なぜ作らない? メンバーからも異論 5/29(金) 朝日新聞
『新型コロナウイルス感染症への対応を検討する政府の専門家会議の議事録が残されていないことに、批判が集まっている。
・・・
菅義偉官房長官は29日の閣議後会見で、専門家会議は、公文書管理のガイドラインが定める「政策の決定または了解を行わない会議等」に該当すると主張。発言者が特定されない「議事要旨」を作成、公表していることから「ガイドラインに沿って適切に記録を作成している」とし、議事録は残さなくても問題はないとの認識を示した。』

しかし同じ記事の中で、
『加藤勝信厚生労働相も3月2日の参院予算委員会で、専門家会議について「1~3回目は議事概要になるが、4回目以降は速記を入れて、一言一句残す。専門家の了解の範囲で、当面は公表させて頂く」と答弁していた。』
と紹介されています。この答弁がある限り、管長官の言い訳は全く意味を持たないではないですか。「加藤厚労大臣は、3/2に発言した約束に基づいて、4回目以降の議事録を示しなさい」というだけで十分です。
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検事総長の定年延長特例

2020-05-17 14:46:16 | 歴史・社会
国家公務員法等の一部を改正する法律に束ねられた法律のうち、検察庁法の改正に関して議論になっています。
特に、検事総長、次長検事又は検事長の定年が、内閣の定める事由によって最大3年、延長できる旨の改正が問題になっています。

取り敢えずここでは、改正法案の問題となっている部分を、検事総長に限定して抽出してみました。次長検事、検事長に関する部分を省略します。
(1)検察庁法22条2項で「国家公務員法81条の7の規定の適用」とすることにより、検察官の定年に関して国家公務員法が適用されることを明示しています。
(2)検事総長の定年を延長するためには、国家公務員法81条の7第1項に掲げる事由が必要です。同項では、『(検事総長)の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由』とあります。
国家公務員法等の一部を改正する法律案
[検察庁法]
第二十二条 検察官は、年齢が六十五年に達した時に退官する。
② 検事総長、次長検事又は検事長に対する国家公務員法第八十一条の七の規定の適用について(以下の通り)
[国家公務員法](太字は検察庁法で読み替えた部分)
(定年による退職の特例)
第八十一条の七 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、次に掲げる事由があると認めるときは、同項の規定にかかわらず、当該職員にが定年に達した日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、当該職員を当該職員が定年に達した日において従事している職務に従事させるため、引き続き勤務させることができる。ただし、(次長検事又は検事長の特例・略)
一 前条第一項の規定により退職すべきこととなる職員の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該職二前条第一項の規定により退職すべきこととなる職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由
二 (適用しない)
② 任命権者は、前項本文の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項第一号に掲げる事由が引き続きあると認めるときは、内閣の定めるところにより、これらの期限の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、当該期限は、当該職員が定年に達した日(同項ただし書に規定する職員にあつては、年齢が六十三歳に達した日)の翌日から起算して三年を超えることができない。
③ 前二項に定めるもののほか、これらの規定による勤務に関し必要な事項は、内閣が定める。
------------------------------

(A)本年1月に黒川検事長の定年延長を閣議決定した際、「国家公務員法を適用した」と説明しました。これは、従来の法解釈を変更するものであり、大問題となりました。今回の法改正で、検察官の定年に関して国家公務員法を適用することを、検察庁法の中で明示して、黒川問題の正当性を後付けしたようですね。

(B)検事総長の定年を延長することについて、国家公務員法81条の7第1項では、『(検事総長)の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由』としました。同法の「人事院規則で」を「内閣が」と読み替えたものです。即ち、(検事総長)の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由については、内閣が定めるものです。人事院規則の制定を待つ必要はありません。森法務大臣は、人事院規則を隠れ蓑にしてはなりません。

(C)今回の改正法案は、昨年の段階ではできあがっていました。そしてその時点では、検事総長等の定年延長の特例に関しては規定されていなかったようです。本年1月末の閣議決定の前後に、この特例が急遽挿入されたとのことです。
法律改正については、審議会などで詳細に審議された結果として定まります。上記のいきさつから考えると、検事総長等の定年延長の特例については、何ら公の議論無しに超短期間で挿入されたことが明らかです。むしろ森法務大臣には、法律案が修正されたいきさつについて、詳細に説明してもらう必要があります。「いつ」「誰が」「どのような理由によって」検事総長等の定年延長の特例を挿入したのか。
挿入した時期が黒川問題の時期とまさに重なっています。
国会の委員会での質疑を見ても、どうもこの点について森法務大臣に対して明確に質問していないようですね。その点が物足りないです。
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篠田節子「夏の災厄」

2020-05-12 17:28:12 | 趣味・読書
小説家の篠田節子さんが、勲章を受章しました。私は篠田節子さんの小説を読んでいた時期があって、今回の新型コロナに接したとき、真っ先に篠田節子さんの小説「夏の災厄」が思い浮かびました。従って、篠田節子さんが勲章を受けたときの報道でも、「夏の災厄」が紹介されるだろうと予想していたのですが、私の知る限り、その本は紹介されませんでした。
篠田節子さんは、ウィキに以下のように紹介されています。
『東京都生まれ。八王子の典型的な商業地区で育つ。
東京都立富士森高等学校、東京学芸大学教育学部卒業後、八王子市役所に勤務する。市役所の勤務年数は10年以上にもおよび、福祉、教育、保健(健康管理)など様々な部署に異動、配属された。市立図書館の立ち上げにも携わり、・・・。
趣味はチェロの演奏。
2020年 - 紫綬褒章受章。』
篠田さんの小説は、上記履歴と関連するものが多いです。その中で、「夏の災厄」は市役所における保健(健康管理)職務経験が生きているようです。

夏の災厄 (角川文庫)
単行本 1995年3月 毎日新聞社刊
『東京郊外のニュータウンに突如発生した奇病は、日本脳炎と診断された。撲滅されたはずの伝染病が今頃なぜ? 感染防止と原因究明に奔走する市の保健センター職員たちを悩ます硬直した行政システム、露呈する現代生活の脆さ。その間も、ウイルスは町を蝕み続ける。世紀末の危機管理を問うパニック小説の傑作。  解説 瀬名秀明』(裏表紙)

舞台は、埼玉県昭川市(架空の地名)です。その窪山地区で、日本脳炎に似た病気の罹患者が急増します。ウイルス検査では日本脳炎と出ます。感染すると脳炎を起こすのですが、病状の進行が急速であること、死亡率が極めて高いこと、その他、日本脳炎とは異なっています。
昭川市には富士大学付属病院があります。ここでのウイルス研究、培養したウイルスの紛失(誤って廃棄した模様)、廃棄物処理業者による不法投棄(窪山地区)、などが複雑に絡み合って進行します。現在進行中の新型コロナと酷似した内容です。
新型日本脳炎 - 新型肺炎
富士大学病院 - 武漢の研究所
高い感染率、病状の早い進行、高い致死率など、両者はそっくりです。

冒頭、富士大学病院の奇妙な老医師が、予言じみた発言をします。
『「病院が一杯になって、みんな家で息を引き取る。感染を嫌う家族から追い出された年寄りたちは、路上で死ぬ。知っておるか、ウイルスを叩く薬なんかありゃせんのだ。対症療法か、さもなければあらかじめ免疫をつけておくしかない。たまたまここ七十年ほど、疫病らしい疫病がなかっただけだ。愚か者の頭上に、まもなく災いが降りかかる・・・。半年か、一年か、あるいは三年先か。そう遠くない未来だ。そのときになって慌てたって遅い。』(29ページ)
これも、現在の新型コロナを予言するかのような発言です。

新型日本脳炎に立ち向かう日本の中枢について、
『日本の防疫体制は、そんなに遅れたものではない。厚生省を頂点とした完璧なシステムも、大学病院や企業の研究所の研究者の能力も、薬剤や医療技術の質も、世界のトップレベルにあるはずだ。しかしなぜか、今、このとき機能しない。なぜなのか、だれにもわからない。』(562ページ)
現在の新型コロナに立ち向かう厚労省の体たらくが、この書籍の中で予言されていました。

舞台の主役は、昭川市保健センターの職員たちです。保健センターに夜間診療所が設置されており、新型日本脳炎流行の初期に、複数の患者が夜間診療所に搬送されたことから、職員たちが異変に気づきました。夜間診療所の医師は交代で派遣されますが、看護婦(当時)は2組が交互に勤務します。そのため、看護婦(房代、和子)がまず、複数の患者に共通する異変に気づきました。それと、保健センターの職員(市の公務員)(中西)、町のクリニック医師である鵜川が中心となって、問題の究明が進んでいきます。

感染防止と原因究明の仕事は、市(市役所)、県(保健所)、地元の医師などが錯綜して行っています。保健センターが市の管轄、保健所が県の管轄、ということで、仕事がやりづらそうです。
『疫学調査は県の保健所の仕事ですよ』(71ページ)
『統計については、県の保健所で答えるって決められてるんですよ。』(84ページ)
『保健所と市の保健センターは仕事上のつながりがあり、職員同士は顔見知りだったりする。』(127ページ)

保健師(小説の中の保健婦)の仕事は、私はよく知りません。
『結局のところ一番活躍しているのが、県と市の保健婦たちだ。・・多くの患者は障害を負っている。その家に出かけて、病人の面倒をみたり、家族の相談相手になったりする。』(215ページ)

最近、以下の記事を読みました。
保健所は激減、保健師は激増…コロナで露呈した「保健所劣化」の本質
感染症対応の経験がない人材が多数
 井上 久男
『厚生労働省が発表する「衛生行政報告例(就業医療関係者)概況」などの統計によると、1996年に保健所の設置数は845か所だったのが現時点では469か所に減少したものの、保健師総数は3万1581人から5万2955人に増えている。』
『保健師総数の就業場所別の内訳をみていくと、保健所内勤務は1996年の8703人から2018年は8100人に減少したのに対し、市町村勤務が1万5641人から2万9666人に増加している。この理由は、1990年に高齢化率が12・1%に達したことなどにより、介護や母子の健康管理など身近な公的福祉厚生サービスを、都道府県から住民により近い市町村に移管していく地方分権の流れができたことによるものだ。』

小説執筆時期(1995)は、県(保健所)の保健婦(当時)がまだ多く存在した時期ですね。県の保健婦と市の保健婦が、それぞれの職分のもと、活躍したのでしょう。

さて、国の対応はどうだったのでしょうか。
『厚生省では疫学調査と病理調査の二つの緊急対策委員会の発足に向けて動き出した。・・・担当者はまず、各大学、研究室、病院の医師の名簿を集めた。・・それぞれについて、委員七名、専門部会委員十三名ずつ計四十名がこの中から選出される。
---学界での不仲、派閥、世話になっている先生の処遇などが配慮されます---
「そうすると本当に日本脳炎ウイルスを専門に研究している先生方の枠がなくなりますが」
「それもそうだが、兼ね合いの問題だからな・・・」
・・・議論は果てしなく続いた。そして二日後、門外漢ばかりだが、人事的にはまずまず無難な顔触れが揃った。』(406ページ)
新型コロナでの専門家会議が、上記のような人選でなされたものでなければよろしいのですが。

『住民を対象都市で臨床試験を行い、いくつかの検体を持ち帰った。』(425ページ)「検体」という単語で、新型コロナのPCR検査の「検体」を想起してしまいました。

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「新しい生活様式」とは

2020-05-10 13:01:54 | 歴史・社会
専門家会議の「状況分析・提言」で述べたように、
新型コロナウイルス感染症対策本部のホームページにアップされた、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」
2020年5月1日版
2020年5月4日版
では、以下の提言がされています。

《今後の国民生活》
【地域別に、新規感染者数が「一定水準」まで低減したら、「感染拡大を予防する」「新しい生活様式」に移行する。】
私の予想では、「ワクチンが開発され、国民の多数に接種され、免疫を獲得するまで」は、「新しい生活様式」を継続し、「実効再生産数=1となる程度」を維持することが必要と思われます。

新聞やテレビでは、「新しい生活様式」という言葉は出てきますが、具体的にどのような規制がなされた生活様式なのか、という点には踏み込んでいません。また、「緊急事態宣言を解除する・しない」という議論ばかりで、「たとえ5月末に緊急事態宣言を解除したとしても、「新しい生活様式」は年単位で継続する、という点については言及を避けています。そもそも、専門家会議の提言には、「緊急事態宣言の解除」に関しては一言も記述されていません。

安倍総理にしろマスコミにしろ、「緊急事態宣言の解除」=「生活規制の撤廃」のようなイメージが持たれています。しかしそれが誤解であることは、上記専門家会議の提言から明らかです。ワクチンが開発されて行き渡るまで(1年あるいはそれ以上)は、生活規制は撤廃されず、「実効再生産数=1となる程度」(6割の接触削減のレベル)の「新しい生活様式」維持が必要とされるのです。
行政がよっぼどうまく設計しない限り、外食産業などはほとんど生き残りが不可能になってしまいます。

実効再生産数については、以前「実効再生産数とは」で取り上げ、
「推定実効再生産数Re」
「実績実効再生産数Rr」
を導入しました。
推定実効再生産数Reは、Ro:基本再生産数、p:接触削減率(-)を用いて、
Re=(1-p)Ro     (B)’
で算出されます。西浦教授はRo=2.5を採用しています。
実績実効再生産数Rrは、対数成長速度Kを用いて、
Rr=63・K²+16・K+1    (E)
K=(LOG(過去5日間の感染確認者数計)ーLOG(さらにその前の5日間の感染確認者数計))/5日間     (F)
のように計算されます。

推定、実績ともに、実効再生産数が1より大きいと新規感染者数は増え続け、値が大きいほど増加速度が高くなります。また1より小さいと新規感染者数は減り続け、値が小さいほど減少速度が高くなります。実効再生産数が1であれば、新規感染者数は横ばいとなります。
そして、(B)’式から明らかなように、推定実効再生産数Reは接触削減率pが大きいほど値が小さくなります。ここで、「(実績)実効再生産数が低い値だった」ということは、直近数十日の接触削減努力の結果を表すだけであって、過去数カ月の努力の蓄積ではありません。また、たとえ新規感染者数が大幅に低減した時点であろうと、接触削減率が低下したら、あっという間に実効再生産数が急増してしまいます。
例えば、接触削減努力によって、東京都の新規感染者数が10人/日に到達したとしても、その翌日に従来の生活に戻ってp=0となり、Reが2.5に戻ってしまったら、その日から、「新規感染者数が4日ごとに倍増」となり、解除から4日後に20人/日、16日後には160人/日に増加してしまう、という計算結果となります。

さて、以上のような準備の元、「新しい生活様式」について検討します。
(1)緊急事態宣言が継続となりました。今のままの行動指針を継続すれば、新規感染者数はさらに低減するでしょう。人工呼吸器の使用数が最近減少に転じましたが、さらに減少するでしょう。
(2)「ここまで減少したら、今後は横ばいで良い」というレベル(一定水準)に到達したら、接触削減率を0.8から0.6まで緩和できることになります。しかし、0.6よりさらに緩和してはなりません。また新規感染者数が増加に転じてしまいます。これが厳しいところで、「有効なワクチンが開発されて国民の大多数が接種するまで、接触削減率を0.6に維持しなければならない」という長期戦が続くのです。
(3)「接触削減率pを0.6に維持するためにはどのようにしたらいいか」を今から明確にしておく必要があります。

話の都合上、接触率q(-)を導入します。
 q=1-p     (L)
 Re=q・Ro     (M)
もともと、基本再生産数Ro=2.5というのは、どうもドイツのデータらしいですね。日本ではそもそも、何の対策も打たなくても、2.5よりも低い値だろうと考えます。「BCG効果、土足で家に入らない効果、きれい好き効果」などが影響します。そこで、日本係数J(0~1)を導入します。
新しい習慣として、「手洗いの励行、マスク着用、2m距離」などの行動様式で低減する効果を、行動様式効果Y(0~1)としましょう。
「休校、在宅勤務、外出自粛、会合自粛、自主休業」などで接触が低下する効果を、行動自粛効果G(0~1)としましょう。
国民の抗体保持比率が高くなると、それによる効果もあります。しかし抗体保持効果Cは、現時点ではまだ0.97~0.99程度でしょう(大阪、神戸での評価結果)。
最後に、「検査・隔離効果D」です。新規感染者が発生しても、発生するそばからPCR検査で把握して隔離することができれば、発生はするものの再生産に寄与しません。これをどのようにカウントするかですが、接触率qの一因、とする考えもできます。
 q=J×Y×G×C×D     (N1)
とおきます。
 q=0.4           (N2)
が、新規感染者(のうちの野放し部分)を横ばいとするための条件です。
J(日本効果)、C(抗体保持効果)は現時点では固定の値です。Y(手洗いの励行、マスク着用、2m距離)については、生活習慣にしてしまえば、大きな犠牲なく、現在の値を維持することが可能でしょう。
問題はG(行動自粛効果)(休校、在宅勤務、外出自粛、会合自粛、自主休業)とD(検査・隔離効果)です。

現在の東京は、新規感染者数が減少傾向です。しかし、わずかな減少傾向であり、新たな対策を打たない限り、G(行動自粛効果)を緩和できる緩和しろはわずかでしょう。緩めすぎると、新規感染者数が増加傾向に転じてしまうことになります。即ち、経済活動の急速な再開は不可能です。
では、どのような新たな対策が取り得るのか。
ここで、D(検査・隔離効果)が登場します。
G(行動自粛効果)を現状より緩和して新規感染者数が増加に転じても、その増加分を、PCR検査でキャッチして隔離することができれば、(見かけ上は隔離分として新規感染者数が増加しますが、)再生産に寄与する感染者数は横ばいのままとできます。

D(検査・隔離効果)については、現状ではD≒1でしょう。これを有意な値まで下げることができれば、結果としてGを緩和して1に近づけても、新規感染者数の増大を抑えることが可能です。
以上、まとめると、
(1)日本は、J「BCG効果、土足で家に入らない効果、きれい好き効果」をもともと有している点で諸外国よりも有利です。
(2)Y「手洗いの励行、マスク着用、2m距離」は、今後の努力で生活習慣にすることができるでしょう。
(3)さらに、PCR検査を拡充してD「検査と隔離」を徹底すれば、それによって市中感染率を低減できます。
(4)D「検査・隔離効果」の助力を得て、G「休校、在宅勤務、外出自粛、会合自粛、自主休業」などの真に痛みを伴う対策を緩和しても、q=0.4を実現して新規感染者数横ばいとすることができるでしょう。

政府は、現状のJ、Y、G、C、Dの値を数値化し、q=0.4を実現するために必要なGとDの目標値を定め、Dを目標値とするためにはどれだけのPCR検査が必要であるかを数値化します。
そして、Gを目標値とするためには、どのような行動の緩和まで許されるのか(「新しい生活様式」のうちの行動自粛部分)、それを具体的に示してもらうことが必要です。

ところで、スペイン風邪の記録によると、セントルイスとフィラデルフィアでの感染拡大-収束の時系列グラフを見ることができます。どちらの都市も、感染者数が増大し、その後減少に転じています。減少に転じた理由は、おそらく隔離政策でしょう。それでは、収束後に、なぜ隔離政策を解除できたのでしょうか。上記の理論によると、たとえ新規感染者数が大幅に減少しても、隔離政策を解除したら元の木阿弥になる、との結論です。
いろいろ考えたのですが、スペイン風邪においては、「抗体保持者が急速に増大し、抗体保持比率の増大に伴い、「集団免疫」が成立し、行動自粛度を緩和することができた」としか考えられませんでした。
新型コロナについては、現状でも抗体保持比率はせいぜい1%(大阪)、3%(神戸)との評価結果がある程度であり、とてもではありませんが、「抗体保持比率の増大に伴い、行動自粛度を緩和することが可能」との域には達していません。
D「検査・隔離効果」の助力を得て、G「休校、在宅勤務、外出自粛、会合自粛、自主休業」などの真に痛みを伴う対策を可能な範囲内で緩和し、あとはワクチンの登場を待つ、との対策しかなさそうです。
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PCR相談基準緩和

2020-05-09 13:28:05 | 歴史・社会
新型コロナ、相談の新目安を公表 5/9(土) TBS
『新型コロナウイルスに感染したかどうか相談センターなどへ相談する際の新たな目安を、厚生労働省が公表しました。
厚生労働省は、これまで相談センターなどへ相談する目安を「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」などとしていました。新しい目安では「37.5度以上」といった文言を削除し、「息苦しさや強いだるさ、高熱などの強い症状のいずれかがある場合」や、「高齢者などの重症化しやすい人で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合」は、すぐに相談するよう呼び掛けています。
また、「発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状が続く場合」でも、すぐ相談することを示した上で、4日以上続く場合は必ず相談するよう求めています。さらに、「これらの症状に該当しない場合でも相談は可能」とし、全国の都道府県などに住民らへ情報発信するよう通知しました。』

厚生労働省「自治体・医療機関向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症)」に、以下の文書が掲載されていました。
新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安(別添)
『2.帰国者・接触者相談センター等に御相談いただく目安
○ 少なくとも以下のいずれかに該当する場合には、すぐに御相談ください。(これらに該当しない場合の相談も可能です。)
☆ 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
☆ 重症化しやすい方で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
☆ 上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
(症状が4日以上続く場合は必ずご相談ください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合にはすぐに相談してください。解熱剤などを飲み続けなければならない方も同様です。)
○ 相談は、帰国者・接触者相談センター(地域により名称が異なることがあります。)の他、地域によっては、医師会や診療所等で相談を受け付けている場合もあるので、ご活用ください。
※なお、この目安は、国民のみなさまが、相談・受診する目安です。これまで通り、検査については医師が個別に判断します。』

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(第 13 回)」の配布資料2「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」からさらに緩和されています。
専門家会議の配布資料2の2ページ目には2月17日版が残っています。今回の目安は、従来とは様変わりの基準となっています。ほぼ私が必要と考えていた内容と一致しています。

ただし、公表されたのは「相談の目安」です。相談を受けた帰国者・接触者相談センター(保健所が管轄)は、PCR検査要否の判断はしないようです。相談センターは、受診機関(帰国者・接触者外来、地域外来・検査センター等)を紹介するだけで、PCR要否は帰国者・接触者外来の医師が判断するのでしょうか。また、相談センターではなくかかりつけ医を最初に受診した場合は、かかりつけ医が今回の「相談の目安」に沿ってPCR検査要否を決定し、地域外来・検査センターに送り込んでくれるのかどうか。
また、「検査決定の目安」が公表されていないということは、「相談の目安」=「検査決定の目安」と考えてよろしいのでしょうね(念押し)。
そうとすると、相談センターの業務は大幅に軽減されます。相談の目安で連絡してきた人を自動的に受診の待ち行列に入れれば良いだけです。連絡先を確認し、受診の順番が到来したらその旨を連絡すれば良いだけです。相談した人は、受診して医師の判断を受けない限りPCRを受けられるか未定のままです。

次の問題は、検査能力です。相談=検査の目安が大幅緩和されたので、検査を受ける人数は大幅に増大するでしょう。
しかし、専門家会議の資料にも、報道発表にも、以下の話は出てきません。
○ 目安変更で、検査を受ける人数はどの程度まで増大すると想定されるのか。
○ そのために必要な検査能力をどのように想定しているのか。
○ もし、現在の検査能力が、想定される必要検査能力よりも劣っているとしたら、必要検査能力を満たすためにどうのような方策が計画・実施されているのか。

これらが立案されていない限り、相談の目安は大幅緩和されたものの、これからは検査待ちで待たされる期間が大幅に延びるだけ、ということになりそうです。

そもそも、今回の配布資料では、相談する先、相談の目安は示されたものの、相談後の流れが何も記載されていません。一方、2月17日版には、
『3.相談後、医療機関にかかるときのお願い
○ 帰国者・接触者相談センターから受診を勧められた医療機関を受診してください。』
との記載があります。この記載が削除され、代わりの記載がなされていないことは謎です。何かを隠しているのではないでしょうか。

また、今回の発表では、病院や介護施設での院内感染の防止を図るための施策が記載されていません。病院の入院患者全員、施設利用者の全員の感染検査を必須とし、医療従事者と施設従事者については頻繁な感染検査を必須とすべきと考えます。その点を早く決めてほしいです。院内感染防止のための感染検査は、PCRではなく、それよりも精度は落ちるといわれていますが、抗原検査でもよろしいと思います。
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