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郵便不正事件の謎(9)論告求刑・郷原氏の論評

2010-06-24 21:30:41 | 歴史・社会
郵便不正 村木被告に1年6月求刑 検察論告
6月22日21時24分配信 毎日新聞
『郵便料金割引制度を悪用した郵便不正事件で、障害者団体と認める偽証明書の作成を部下に指示したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)に対する論告求刑公判が22日、大阪地裁(横田信之裁判長)であった。検察側は懲役1年6月を求刑した。』

郵便不正事件の謎(8)供述調書証拠不採用でも報告したとおり、村木さんを被告とする裁判において、5月26日の第20回公判で、裁判長は検察が提出した捜査段階での供述調書の相当部分を証拠不採用としました。検察側論理のキーとなる、上村被告(事件当時の厚労省係長)と倉沢被告(凛の会元会長)の調書21通はすべて却下です。上村氏も倉沢氏も、捜査段階での供述調書のほとんどについて公判では「事実と異なる」と証言しており、これらの供述調書が証拠不採用ということは、検察の論理のほとんどが破綻してしまいます。
検察はどのような論告求刑を行ったのでしょうか。

公判段階での証言のうち、検察に有利な証言としては、倉沢氏が「証明書は厚労省の村木被告の席で村木被告から受け取った」としている証言のみです。なお、村木氏は「渡していない」と否定し、上村氏は「私が厚労省外の喫茶店で河村氏に手渡した」と証言しています。
検察は倉沢氏のこの証言のみを証拠としているようです。
そして、あとは推論の積み重ねです。
「元係長が虚偽の証明書を作成する必要性は全くなく、元局長の指示があったことは合理的に推認できる」
「証明書が元局長の指示なしに発行されたとは考えられない」

村木厚子さんの裁判を見守り支援する部屋では、まだ論告求刑の傍聴記がアップされていません。こちらがアップされてから、さらに詳細に検討してみようと思います。

ところで、現代ビジネスの「郷原信郎・弁護士インタビュー vol.2「東京、大阪両特捜部の杜撰な捜査はなぜ起きたのか」」において、この事件が話題になっています。11ページです。
『―― 読者からの意見で、「これだけ東京も大阪も失敗しているのに、特捜部は必要なんでしょうか? 事業仕分けの対象にしたらどうでしょうか」という声が来ています。

郷原 その問題に関して、先日、大阪の村木公判で検察からの調書の証拠請求が大部分却下されましたよ。私はこれはものすごい大きな話だと思っているんです。

例えば、調書を取る時に、全部主任検事に上げて了承を取ってから調書を作成するということとか、「他の人間がこう言っているんだからそれで間違いないだろう」と言って、他の人間の供述で誘導するとか、いったん調書を取ると絶対訂正しないとか、それから取調のメモがあったはずなのに全部なくなっていると。
こういうことが「信用できない」という事情として裁判所の判断の根拠にされたんです。
ところが、これらの要素、こういう取調の方法というのは、今まで特捜検察が当たり前にやってきたことなんです。全てそういう調べのやり方こそが特捜部の調べそのものなんです。
 ・・・・・
ところが今回の大阪地裁の決定というのは、まったく逆で、「こういうやり方をしているのは信用できない」と言ったわけです。これは非常に大きな話だと思うんです。ある意味じゃ当たり前のことなんですけど、当たり前のことを裁判所が言うようになった。

田原 すごい話ですよ。

郷原 これまで特捜の魔力みたいに思われていたものが、魔力でも何でもなくなり、普通の力すらなくなってきたんじゃないかと。

郷原 全部が全部、そうじゃないかも知れませんが、裁判官のかなりの部分が、「ちょっと待てよ、これ、違うんじゃないか」と思い始めたんじゃないかと思うんです。

田原 これはすごい話だ。』

地検特捜部の取り調べの様子について、私は佐藤優氏の「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)」で知っている状況です。それによるとたしかに、郷原氏がいうように、特捜部の取り調べと調書の取り方は、今回大阪地裁が否定した取り調べ方法そのものでした。
特捜部が当たり前のように採用した調書の取り方、今までは裁判所が完璧にサポートしていたわけですが、この郵便不正事件を契機として、裁判所が考え直し始めたのかもしれない、ということですね。

もちろん検察は控訴するでしょうから、控訴審で高裁がどんな判断をするのかはまったくわかりません。地裁判断を覆して特捜検察に有利な判断をしないとも限りません。
しかし、時代は変わるのかもしれませんね。
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